美酒と、美女との出会い
爽真は、兜ノ宮に来て初めて神社以外での外食を堪能した。
だが、後味に違和感を持った。
「ん?」
なんと、体力と気力が2ポイントずつ減っていた。
爽真は落ち込んだ。
その横でお寺の和尚さん達は、美味しそうに食べていた。
「いつもより飯がうまいなぁ。」
「まだ苦みや雑味があるが、食える食える。」
そうか。普段、和尚さんや寺下の子達はこれより不味い飯を食べていたのか。
腹は満たされるが、体力と気力が減って怠い。
ただでさえ日中の重労働やお供召喚、命令札のスキルの使いすぎで、体力の残りはごくわずか。気力の残りはなく、空っぽだ。
体力の数値が0になる前に食事を止めた。
「飯の後は日本酒よ。っくぅー!回復するぜ。おい、爽真も飲んでみな。」
和尚さんに勧められて日本酒を分けていただく。
鼻に近づけて香りを堪能し、陶器に口を当て一口ずつゆっくり飲んだ。
「美味しい。」
体力と気力が2ポイントずつ増えていた。
飲むと回復するのはありがたい。
和尚さんは酒を全員に配り終える。
先ほどまで怠そうにしていた人達も幸せそうな顔になった。
体力と気力が全回復した!
酒の樽には『和尚ノ酒』と書いてあった。
「このお酒はどこで作っているのか。」
「これは俺の上司達が住む北西にある寺で作っている酒でな。ここに管轄になる前はそこに勤めてたのさ。美味いだろう。坊主や僧侶にも大好評の一品さ。ささ、もう一杯。」
和尚さんにもう一杯注いでもらう。
「このお酒はまた飲みたくなる。」
「だろ?この寺に遊びに来れば、いつでも俺が用意してやろう。金は払ってもらうがな。
なんせ、この寺周辺の修繕代を稼がなきゃならん。」
「そうだな。」
寺の和尚さんから回復薬を買えるようになった!
「幾らで買えるのか。」
「一樽50両頂戴しよう。」
〈チャリン〉
爽真は50両を支払い、回復薬を購入した!
「ありがとうございました。」
和尚さんは、お金を受け取って数えた後、袋にしまった。
筋虎が話題を変える。
「さっきは聞きそびれたが、あのお面はどこで作ってるんだ。」
「俺のねーちゃんが作ってるんだ。だけど一週間前から、恋人と寝泊まりしてるんだってよ。」
顔が真っ赤な寺下の子が話し出す。
「へぇ。」
「自分達でたぬき顔に化粧するんだ。
この化粧道具を使うんだよ。」
木箱に入った化粧道具を取り出した。
中身は綺麗に管理されていた。
「この中で一番のお薦めは、あの可愛いたぬき達の毛で作った特製の筆!毛は、春と秋の2回換毛期があってね。自然に抜け落ちた毛で作られているんだ。毛先がまとまりやすくって弾力性に優れた毛質で描きやすさも抜群でさ。これはねーちゃんが作ったんだけど、何でも作ってくれてすげーんだ。で、これを顔料につけるんだけど。っと、この顔料はな、そこら辺の木に傷をつけて樹液を出すんだ。んで、互いに顔を見合わせてこーんな感じで筆を使って描き合うんだ。綺麗に描く秘訣は、この筆使いを見よ!そして目に注意な。目に顔料を入らないようにするのだ。」
話が止まらない。饒舌になっているようだ。
最後まで聞いた和尚さんは、思わず突っ込む。
「興味深い話だなおい。それも今回の沼が黒くなった要因の一つじゃあないかい?」
「あ。」
「まぁ、まぁ。時間はゆっくりある。明日以降にまた沼地を見てまわろうか。」
筋虎が落ち着かせる。
「サブストーリー:西区、其の四。寺下の化粧の秘訣」が追加された。
こうしてゆっくりお寺で雑談を楽しんでいる最中。
「ぎゃーーーーーー。化け物ぉ!」
寺の門の近くで叫び声が聞こえた。
爽真と和尚さんが門を開けた。
声が聞こえた方向に走ると、竿が地面に置いてある。
寺下の子数人と爽真の護衛隊も同行し、さらに走る。
お堀の近くで、のっぺらぼうが1体現れた!
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『サブストーリー:西区、其の五。のっぺらぼうと追いかけっこ』が発生しました。
のっぺらぼうを3体捕らえよ。
特別ルール
成功すると、のっぺらぼうの情報を得る事が出来ます。
タイムリミット:一時間
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のっぺらぼうは、誰かを襲っているようだ。
「お助けぇ。」
また悲鳴が聞こえた。
爽真は、『神のお供召喚』を押した!
カグツチが召喚された!
「カグツチよ、炎を纏え。」
と言葉に出す。
基本スキル『命令札』が発動した。
カグツチの耳が炎を纏った。
これで周辺に灯りがつき、見やすくなった!
地面に釣竿が落ちていた。
「ひぇえ。」
声のする方へ向かう。
籠を背負った男性が爽真達のそばを横切った。
さらにその数秒後、のっぺらぼうも横切った。
男性とのっぺらぼうは、北の郡役所の方向に向かっていく。
それにしても足が速い。肉眼で見失わないようにするだけで精一杯だ。
男性とのっぺらぼうが明かりが灯っていた建物に逃げ込んだ。
後を追っての玄関を開ける。
そこにいた人に声をかける。
「すまない。先程入った人は何処にいるか。」
「はい?」
声をかけた人ものっぺらぼうだった!
和尚さんは、のっぺらぼうを捕らえた!
どうやらこの建物は、ご飯処の様だ。
店内を探すが、見つからない。
〈ガタッ〉
別の場所から出て行った音がした。
勝手口か裏口から逃げたようだ。
暫く探し回っていると、魚が地面に落ちている。
水滴の跡から、逃げた方角を割り出す。
その方角に居た、松明を持った通りがかりの人に聞いてみる。
「ああ、通ったよ。その道を左にぐっと進んで突き当たりを左に曲がっていったよ。確か、あの人が住む一軒家もその通りにあったな。」
とある一軒家に逃げ込んだとの情報を得た!
灯りがある一軒家の玄関の扉を、軽く叩く。
「すまない。悲鳴を上げた男を見なかったか。」
「中にいますよ。」
玄関から現れた女の顔は、のっぺらぼうだった。
吉作が、2体目ののっぺらぼうを捕らえた!
玄関の先にある障子から男の影が映る。
駆け寄ってみると、悲鳴を上げた男は気絶していた。
あともう1体は何処だ。
お堀近くで、のっぺらぼうを発見。
着物を着た女性の姿ののっぺらぼうだ。
また逃げていく。
爽真達は全力で追いかける。
寺付近で寺下の子が3体目ののっぺらぼうを捕らえた。
のっぺらぼうを時間内に3体捕まえることができた!
ミッション達成。
早速のっぺらぼうの情報を得ることにする。
爽真は、男が気絶している一軒家で1体目と2体目ののっぺらぼうから、話を聞いた。
「貴方達はなぜのっぺらぼうになったのか。」
「彼、浪費家なのよ。全財産を博打に明け暮れてねぇ。彼の友人の金さんからの依頼で、お堀で魚を釣ってこの家に帰って来れるか賭けてね。一芝居打っていたのよ。」
「なぜそんな回りくどいことをしたのか。」
障子からもう1人出てきた。
友人の金さんだ。
金さんは特に顔に仕込みがされていない。
「話に割り込ませてもらうよ。
理由を教えよう。彼を励ましたくて仕込んだんだ。」
「へぇ、金さんは友達思いだねえ。それにしても、あんな綺麗な女の人にまで頼むなんて手が込んでるねえ。」
「食事処のおやじと男の女房と一芝居を打ってもらったが、他には頼んでないぞ。」
「のっぺらぼうは3体いたのだが。」
「「え?」」
おやじと男の女房ふたりは青ざめた。
やはり、お堀には化け物がいたのだと震えた。
いつの間にか一軒家の玄関外に移動していた3体目ののっぺらぼうが笑う。
「驚きました?私が3体目ののっぺらぼうです。」
着物の羽織で口を隠しながらくすくすと笑い声を出す。寺下の子が捕まえたのっぺらぼうだ。
さっきまでのっぺらぼうだったのに、美人顔の女性に姿を変えていた。
「あら?貴方たちからたぬきの匂いがするわ?たぬき好きなのかしら?」
「先程たぬき好きの子達と会ったからだろう。」
「その声は、ねーちゃん?」
「あら?こんなところにいっちーがいるわ?」
先ほど自慢していたねーさんとはこの方だったか。
「貴方はなぜのっぺらぼうになったのか。」
「実はこの前、金さんにおしろいを商人として提供したのよ。驚かし甲斐のある話を小耳に挟んだものだから、つい参加したくなっちゃったのよ。」
「商人、何か販売でもしているのか。」
爽真は、疑問を投げかける。
「ええ、小道具を少々。気になります?日中に西側のお堀の近くで営業しているから、私に声掛けてね。」
距離が近い。急に耳元で話しかけられるのは、心臓に悪い。一瞬だけ耳や顔が赤くなった。
『サブストーリー:西区、其の六。お堀にいる小道具屋』が追加された!
「驚かす事が好きならば、場を設けてやろう。其方の弟も参加している夜行という出し物だ。」
「いいわよ?楽しそうね。」
爽真は、のっぺらぼうの商人を夜行に誘うことに成功した!
◎和尚ノ酒
日本酒の一種。一口で体力と気力が2ポイント回復する。西区のお寺に住む和尚さんから購入できる。
◎のっぺらぼう
のっぺらぼうは2種類確認されている。
顔全体におしろいを塗り、顔の部位をごまかす。
紐で耳に掛けるタイプの顔の部位がないお面を被る。




