↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/24

シャイニングスレイヴ

「おい!素直に教えろよ!」


 トレスは、その黒い刀身に映し出された、自分自身に向かって怒鳴った。



(人から教わった答えに、何の価値があると言うのだろうか。お前は、人形か?)



「むっ。お前は、剣じゃないか!」



 頬を膨らませたトレスに、ヘムべロスは、楽しそうに笑う。


(はっはっは。これは、一本取られたな。しかし、ここに居られる時間は、そう長くない。そろそろ、人体の崩壊が始まってしまうだろう……そうだな。お前は、何故、龍脈が生け贄を選ぶのかを、考えた事はあるか?)



「穢れの浄化の為だろ?」


(それなら、誰でも良いだろう。量より質だと言うのか?足りなければ、何人焚べても構わないはずだ。違うか?)



 その問いに、トレスは、目を丸くした。



「……確かに。何で俺は、そんな事すら疑問に思わなかったんだ?」



(一度、それが正しいと思い込めば、人間は、中々考えを変えられないものだ。さあ、そろそろ本当に時間がない。)


 ゆっくりと沈み行く中、トレスの体は、泡立ち始めていた。

 小さな気泡が、体中から発生している。



 しかし、そんな事も気にせず、トレスは質問を続ける。


「じゃあ、何故龍脈は、人を選ぶんだ?」



(あれは、体が分解されぬ様、龍脈を安全に通り抜ける為の印だ。さあ、掴まれ!手を離すんじゃないぞ。)




「通り抜ける!?って何処に!?っうお!」




 ヘムべロスが、切先を水面に向けて、物凄い速さで上昇を開始した。



 トレスは、両手で握り締めた柄に、体を引っ張り上げられる。


 トレスには、ヘムべロスにまだ聞きたい事が山程あったが、あまりの勢いに、柄にしがみ付くだけで精一杯だった。




(龍脈の根元を目指せ。答えは全て、そこにある。)




「――龍脈の根元!?」


 ヘムべロスは、水面から飛び上がっても尚、上昇を続ける。






「うわああああ!」






 トレスは、龍穴の大穴から飛び立ち、上空へと舞い上がった。




(わたしの名は、ドラゴンスレイヤー・ニコリエラ。)





 ヘムべロスは、自身の名を語ると、そこからは、一切何も喋らなくなった。



 上空に投げ出されたトレスは、ヘムべロスの刀身に乗り、崩壊した御社に向かって滑る様にして降下する。




 街は、燻った煙を上げている場所が多い。

 甚大な被害を被ったが、何とか復旧して行く事が出来るだろう。



 龍の死骸に集まる人々の中の一人が、トレスの存在に気づいて指を差した。


 すると、全員が、光を見上げる様に顔を上げた。


 その中には、ダラックの姿も見える。



 トレスは、満面の笑みで、彼らに手を振った。



 トレスの足が、ヘムべロスから跳び上がると、二又の切先が地面に突き刺さった。



 トレスの体は、黒い模様の入った変わり果てた姿だが、そんな事など気にせず、全員がトレスの無事を喜んだ。


 駆け寄り、抱きしめ、握手をする。



 こうして、ゲキリンに、平和が訪れた――。



     ◇ ◇ ◇ ◇



 数日後。


 トレスは、大自然の山道を、ヘムべロスを担いで元気に歩いていた。



「おい。そう急ぐなよ。」


 そう後ろから声を掛けたのは、ダラックだった。



「別について来なくたって良いんだぞ?」


 トレスは、ダラックに振り返って言った。


「馬鹿野郎。そんな馬鹿デカい剣を持った黒塗りの不審者が、一人で街に現れてみろ。騒ぎになるに決まってるだろ?俺()()みたいな保護者がいないと、困るのはお前だぞ。」



 二人の後をついて歩く、丸い眼鏡をした女性が言う。


「まあ、まあ。兄さん。トレスは、浮かれているだけよ。冒険が楽しみでねー。」


 そう笑って、籠手の着いた腕を上げ、空に向かって伸びをする。

 緑色のショートヘアーを揺らし、気持ち良さそうに陽の光を浴びる。



 トレスは、二人の様子を見て項垂れた。


「はあ……お前たち。俺は、別に遊びに行くわけじゃないんだぞ。」


「分かってるよ。だが、無理は禁物だぞ?俺たちが死んだら、誰が助けるんだ?」


 ダラックは、薙刀を持たない方の腕を、トレスの肩に回した。




 並び行く三人の背中は、楽しそうに弾んでいた――。




 【See you next time.】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。