表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Witches×WitchBot  作者: 三嶋トウカ
実践

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/25

第25話:マチルダの出撃_5


 時々振り返りながら、パスコは逃げ続けた。速度は落ちず、疲れた気配もない。


『そろそろ、二人目!』


 マチルダは前方へ高く跳び、パスコを追い抜かした。身長差も体格差も関係なく、ダスティの中のマチルダと、追い抜かれて次の一手を思案するパスコの視線がぶつかる。


『こういうのは――どうかな?』


 先に口を開いたのはマチルダだった。彼女はルリを掴んでいないほうの手に力を込めると、パスコの周りの地面が壁になるイメージを浮かべた。


 人間がウィッチボットに乗り込み、魔法を使うのに必要なもの。それは、想像力とシードの持つ魔力だった。マチルダはセンスだけでなく才能もあった。慣れないうちはイメージを言葉にして、シードの魔力と実際使いたい魔法を紐付ける必要がある。だが、彼女はそれが始めから必要なかった。何も口に出さずとも、頭の中で描いたイメージを、魔法として使うことができたのだ。

 目標の位置を捕らえ、魔法を出す場所と範囲を決める。使いたい魔法――今回であれば地面が盛り上がり、土や岩が壁となって幾重にもパスコの周りを囲む――をイメージし、威力を制御して必要な魔力をダスティへ供給する。


 その結果――


 ゴゴゴゴゴ――ズズズズズ――


「なっ……はぁ!?」

「パスコさん!」


 パスコの驚きに、ルリの叫びが重なる。マチルダが想像した通り、地面は槍の先端のように尖り、それぞれが重なるようにパスコの周囲に生えると、彼を取り囲んで閉じ込めた。幾重にもそびえる山のような壁は、どこから生えてくるかわからない。マチルダは理解しているが、理解していないパスコは動けないでいた。頭上は開いているため、出ようと思えば脱出できる。だが、その真上には、ダスティがパスコを捕まえようと陣取っていた。片手にルリを抱えて。


『さて。降参する?』

「ぐっ……」


 辺りを見回しても、パスコの周りには壁となる山のような地面しかない。諦めたように、その両手を力なく上まで上げた。


「降参、します」

『よし! じゃあ、ルリと一緒にアレフのところまで行こう』


 残っていた手でアレフを掴むと、マチルダはそのまま空を飛んできた道を戻る。


「つ、捕まっちゃいましたね……?」

「逃げられると思ったんだがなぁ。やっぱり、魔法を使えるか使えないかって、デカい要素なんだな」

『そういうこと。ウィッチボットよりも、ずっと魔女のほうが動作も早いし小回りもきくわ。ワタシたちパイロットが魔法を使おうとすると、どうしてもイメージの出来やウィッチボットに伝わって、そこから実際に魔法が出るまでのラグがあるの。魔女はもっとストレート。この鬼ごっこ、何も考えずに逃げたとしても、簡単に捕まるわよ?』

「肝に銘じておきます」

「私もです……」

「素直でいいわ。きっと誰かが助けに来てくれるから、それまではアレフと一緒に対応策でも考えていてちょうだい」


 ダスティが近づくと、大きく手を振っているアレフが視界に入った。手に抱えられたルリとパスコに気が付いて、苦笑いしているようにも見える。


『じゃ、よろしく』

「あぁ。……って、お前ら早かったなぁ」

「もっと素早く逃げられると思ったんですが、攻撃受けたらその考えもなくなっちゃいました」


 ルリが少しだけ泣きそうな声で言う。


「逃げられる出口は一つだけ……で、目の前にウィッチボットがいたら、もう詰んでますね、これ」

「ウィッチボットだからこれで済んだ。捕まった後に考えるのは、どうしたらその不利な状況下でもうまく立ち回れるかと、そうならないように善処するか、だな」


 大岩の上で三人は、次の候補生を捕まえに向かうダスティを見送った。


『――あー、ちょっと距離離れちゃったわね。今のちゃんと撮れてた?』

『はい、バッチリです!』

『後であの子たちに見せないとね。「ウィッチボットからは、アナタたちこう見えてたんだよ」って』

『そうですね、これも勉強になると思います』

『新人相手ってのも楽しいわね。どう動くかわかんないから。……そもそも、動かないかもしれないし?』

『予測はできないですね』

『そうなのよ。そこがまたいいんだけど』


 ピーピーピーピー――


 大きなアラート音が、通信で繋がったキャスの背後から聞こえる。マチルダだけでなく、通信機器を通してアレフや訓練生たちへも伝わる。


「これは……訓練生たち、全員聞こえるか? 様子を見る、一旦大岩まで戻れ。鬼ごっこの際に解散した場所だ」

「わかりました!」

「はいっ!」


 全員の声が流れる。前回に引き続き、訓練中の魔女の出現。一気に緊張が走った。


『――魔女が出現しました。魔女が出現しました。パイロットは至急格納庫へ向かってください――』

『大変です! みなさん! 魔女が出現しました!』


 キャスが叫んでいる。その背後では、冷静な声でアナウンスが流れていた。


『やだ、声が被っちゃう……背後の音を小さくします! でも、流れてきた内容は、私がそのまま……』

『キャス、ワタシが出る! 訓練中止! アレフは訓練生たちを連れて速やかに格納庫へ移動! キャス、どこ? 場所はどこなの?』

『出現場所は――ここ、天都のようです』

『なっ……そんなまさか!?』


 マチルダは目を見開いた。滅多に天都へ魔女はやってこない。ここへ来たということは、偵察か、それとも――


『場所は天都、魔女No.A-07――』


 そこまで言って、キャスの言葉が止まった。


『キャス? キャス? どうしたの? いったい何が……』

『う、嘘……そんな……』


 ようやく聞こえたのは、枯れたキャスの声だった。


『どうしたって言うのよ』

『ま、魔女が……三体、現れました……』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ