第23話:マチルダの出撃_3
「こちらアレフ。聞こえてる」
『こちらマチルダ。バッチリだよ!』
「……ホラ、お前らもボーっとしてないで応えとけ」
「あっ……こ、こちらトウヤ! 聞こえてます!」
「エイナ。聞こえてるわ」
「こちらはシシィです。聞こえています」
その場にいた全員が、緊張しながらも順にキャスの声に応えた。
『ありがとうございます! きちんと動作しているようですね。マチルダさんから説明があったように、今回はこのマイクを通して指示が入ります。実際にそのボットスーツで表に出る時は、このマイクかヘルメットを装着して通信していただくことになるので、忘れないでください。それでは、マチルダさんお願いします』
『――はいよ! 今みんなが着ているボットスーツは、全体にシードの持つエネルギーが循環するようにできている。だから、ウィッチボットほどではないが多少魔法に耐えられるんだ。それに、それを着ている間は一時的に身体能力が向上し体力ももつようになってる。普段できないことも、そのスーツを着てたらできるってわけ』
「え、それって、ウィッチボットとこのスーツ、比べたらどっちが強いって話になるんだろ?」
『いい質問かもトリエッタ。魔法が使える分やっぱりウィッチボットのほうが強いよ。それに、力や強度もね』
「でも、こっちが大勢で向かっていったら?」
『相手が範囲攻撃魔法を使えたら終わりかな』
「うーん、そっかぁ……。小回りが効くぶん、いいかなって思ったんだけど。硬さには勝てないのか……」
トリエッタの言葉に、皆も同じようなことを考え始めた。
『実は、魔女の捕獲にこのスーツを使っているんだよ』
「えっ⁉︎ 魔女捕まえてるの⁉︎」
『あはは、そっちが気になるかぁ。集団で向かっていって、確保! って感じだね。魔法阻害の道具もあったりするし……貴重だから、滅多に使えないんだけどね。魔女の生態を知るために、必要なことなんだよ』
「捕まえた魔女……って、どこにいるんですか? あの施設で魔女を見かけたことはないし、どこかにいるって話も聞いたことはないんですけど……」
『それは企業秘密ってヤツだよ。危ないからね、魔女は。勝手に見にいって、攻撃されて死んだら困るだろ? だから、担当と上層部しか知らないのさ』
「……ちょっと、目の前で見てみたかったのに」
『言うと思った。心配しなくても、ウィッチボットに乗ったら、嫌でも対峙することになるんだから。存分に姿を見ておいで』
「そうなりますよね。はーい」
『さ、早速いくよ! アレフがスーツの性能を見せるから、みんなも同じことができるように練習ね!』
「よっしゃ、まずはその場で飛んでみる、いいか?」
アレフは軽くストレッチをして、その場でピョンピョンと跳ね始めた。その高さは少しずつ高くなり、身体を伸ばした状態でも一メートル弱の跳躍を見せた。
「これくらい飛べれば、一般的な跳躍に比べて十分高いほうだ。子どもや女性のほうが、飛べる幅は狭くなってるからそこは考慮してくれ。次は上じゃなくて前に跳んでみるぞ」
両腕を振り、勢いをつけてその場から前へ飛ぶ。その姿を目で追っていた一同は、その対空距離が普通よりも長いことにすぐ気が付いた。
「これも年齢性別によるが……今これでどうかな、三メートルくらいだと思う。まぁまぁかな。走って勢いをつければ、随分跳べるようになるから、魔女を追う時は有利になるぞ。そのままタックルして捕獲なんてこともできるからな」
なるほどと頷く者、自分が跳ぶ姿を想像する者、その姿が格好いいと目を輝かせる者、反応は様々だ。全員に共通していたのは、自分もアレができるというワクワク感だった。
「スーツが補助してくれるから、少しの力で普段の力と同じだけ出せる。だから、体力を温存できるんだ。長丁場になりそうな時は、様子を見ることも大切だし、スーツの力を存分に使ってくれ。じゃあ、みんなその場で軽く跳んでみろ」
言われた通りに、それぞれその場で跳び始めた。ピョンピョンと軽やかに高く跳んでいる。本当なのかとほんの少し懐疑的だった候補生も、自分にも跳べるとわかった瞬間、楽しそうな笑顔を見せた。
「イイ感じだな! 次は前に跳ぶんだ。普段の自分の動きを思い浮かべて見てくれ。その通りにやってみるんだ、そしたら、同じようにやったのに、全然違うことがわかるぞ」
自分の可動域を把握するために、基礎練習で色々な動作をとる。
「せっ、せーの!」
「せっ、せーの!」
声もタイミングを合わせて跳んだのは、双子のシシィとマイロだった。同じように身体を揺らし、勢いをつけて前へ。
「わっ!!」
「えっ!?」
ほぼ同じような位置に着地した。シシィは軽やかに弧を描いて二メートルほど、マイロも途中よろめきながら、少しばかり後ろへの着地。よろめきさえしなければ、真横に立っていただろう。
「流石双子、シンクロしてんな。二人はそれを持ち味にして、戦っても面白いんじゃないか?」
アレフは笑っている。シシィとマイロはお互いの顔を見合わせた後、手を取り合って一緒に跳んだ。
「いい動きじゃないか!」
「シシィ、怖くないの……?」
「全然! こんなに面白いなら、もっと早くやりたかったくらい!」
「着地の衝撃も和らぐから、自分の限界を知るのも一つの手だ。だが無理はするな。『あと少し』『もうちょっとくらい』が、命取りになることもある」
アレフはちらりとエイナを見た。一瞬目が合ったが、すぐにエイナは目を逸らし、知らないフリをした。




