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89話 姉貴と呼びなさい


前回の続きです!どうぞ!



オボロはそう言うとユースティティアに手を置く。



「……俺は奴の元で人殺しを手伝っていた罪人(ざいにん)だ。 俺にこの正義の剣を振るう資格などとうに無い……」



オボロの目に気迫が宿る。



「……だが。 いや、だからこそ俺がやらなければいけない。 神に嫌われし者達(タブーリスト)の中のタブー。 奴を殺せるとしたら恐らくこのユースティティア以外には無い。」



「……リリー・レイルってそんなにヤバイやつなの……?」



「……俺が知っていた頃ですら、奴の奪い取った魂の量は(まん)を越えていた。 普通に殺すだけでは無理だ。 だが、ユースティティアは罪を裁く剣。 罪が重ければ重いほど威力は増す……つまり、奴が魂を補填(ほてん)し罪を重ねれば重ねるほど、この剣はやつの命へと剣先を伸ばす。 ……唯一奴の恐れていた剣でもある。」



「……オボロ、。 」



マリンは心配そうにオボロを見つめる。 ゆっくりと近づき腕に手をかける。



「……もちろん情報を集めるのが先だ。 お前はある程度情報が集まったら森に向かってほしい。 比較的安全に迎えるはずだ。 ……俺はその間にやつを打つ。 だから、お前に危険は……」


すると、オボロの服にグッとシワが寄る。



「……そういう事じゃない。」



「……マリン。」



「なんにも分かってないよ……。」



マリンは目を閉じる。



「私は別に自分が可愛くて今までやってきたわけじゃない! 私だって仲間だ! リサードの目的もオボロの目的も私の目的なの! ……悲しいよ。 今回はオボロだけじゃ心配だよ。 みんなで力を合わせて……」



「……それはできない。」



「……なんで?」



「お前は関係ない。」



「私たち仲間じゃんか!」



「……………………………。」



「何その目……」



マリンはオボロに問いかける。 オボロの目にはもう光は宿っておらず、口を開く。

やだ……聞きたくない……



「じゃあ、仲間は…」



「……やだ! 絶対聞かないから! 」



マリンは(つい)を許さないよう、そう言い放ちオボロの肩を押す。



「……簡単にそういうことを言おうとしないで……よ……」



マリンは思い切りドアを押し開け、部屋を出ていく。 オボロは黙ったまま部屋に呆然(ぼうぜん)と立ち尽くすことしか出来なかった。


喉まで出かけていた言葉。


仲間はこれまで……


オボロの頭の中をマリンの言葉がグルグルと回っていた。


…………………………………………………………………………………………………………………




「……ハァ。」



マリンは人混みの中を、早歩きで通り過ぎていく。 少し息を切らすぐらいの速さを保ちながら、がむしゃらに歩いていた。


オボロの事情を聞いて、正直マリンもゾッとしたし、怖いと思った。

しかし、マリンは思い出す。 姉と仲直りできたのは誰のおかげなのか。 克服できたのは誰のおかげなのか。


マリンは覚悟を決める。


あの氷の女王と呼ばれた姉でさえも、3人で何とかできた。 オボロと行動を共にし、2人で冒険をした時も様々な困難をくぐり抜けてきたはず……。


マリンは足を早める。


覚悟を決めると同時に浮かび上がる感情。



「……ムカつく。」



その言葉は自分に対してだ。 危険だからここにいなくていいなんて、まるで私は荷物のようだ。 だけど、実際私はどうだ。

自分の不甲斐なさが頭にくる。



「……ムカつく。 ……ムカつく。」



すると、────────


ドンッ。



「……ムカつくだぁ? ……なんだぁ嬢ちゃん?」



マリンは上を見上げる。 すると、オールバックのチンピラのような男が前に立っていた。



「……よそ見していました。すいませんでした。 」



「よそ見ぃ? すいませんじゃねえだろうがぁ?」



「……ハァ。」



マリンは話が通じないやつだと認識すると、ニコッと笑い中指を立てた。


「……どいて?」



「……ああ??!!」



オールバックの男は(あお)りに大声をあげる。 すると、奥から筋肉隆々(きんにくりゅうりゅう)の派手な頭をした男がクネクネと歩いてくる。



「……うるさいわねぇ。 ウフ。」



筋肉隆々の男はそう言うと、唇に舌を()わせる。



「兄貴!!! コイツが……ッッッ!!!」



ゴキッ────────────


「────────────?!」


オールバックの男がそう呼ぶと、突然鈍い音が響く。



「……姉貴って呼べって言ったろうがコラァ。」



オールバックの男が地面に埋まる勢いで、地中に叩きつけられる。 そのいかにもオカマな男はマリンの前に来るとじっと顔を見つめた。



「……で? 私の可愛い後輩ちゃんにアンタなんか文句でもあるわけ?」



「……いや、あの人が絡んできたというか……。」



「口答えするな、泥棒猫!!!」



腕を思いきり振り上げる。


水系魔法



「スプラッシュ・ガード!!」



「……へぇ? 」



マリンはとっさに防御魔法を発動する。 しかし、────────


素手でこの威力なの?!


水が思い切り押され、回避行動をとる。



「……少しは楽しめそうね?」



コイツ只者じゃない!


マリンは1度であったが、舐めてかかってはいけないことを理解した。



────────────────────────────────────



案の定、朝ですね。

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