7話 始まりの日
今回は結構長めに書いてしまいました。多分2話分ぐらい詰まってるんじゃないかな。、詰まってないかw
「うーん…」
ハースハイトの王都パラソル東側。
そこには、イレブンノートの本拠地が存在する。
11個ある支部は全体的に散らばりを見せているが、多くは本拠地の周りに配置されている。
彼女が支部長を務める第11支部も東側にあるのだが、そこはかなり東側に置かれており、敵襲があった場合一番最初の関門となる危険な場所だ。
その支部の長を務める少女はため息をついていた。
高級そうな広間の一室でブカブカの帽子とローブを身につけ、先がクルッとした杖で床をコツコツたたいている。
帽子の隙間からは金髪の癖毛がぴょこんと顔を出し、床を叩く動きにあわせて動いている。
「シルビア様、いかがなさいましたか?」
そういって少し不安そうな顔をするのはイレブンノート支部長補佐兼、シルビアの側近のリズ。
身長は160後半はあり、女性の中では長身だろう。
キリッとした目つきに、髪は後ろでしばりポニーテールを作っている。
帽子やローブは身につけておらず、黒いパンツに、上はシャツと黒のベスト着用している。
腰には剣を携えて、パッと見、腰に剣を差しているバーテンダーにしか見えない。イレブンノートも支部で服装などが自由なところときっちりローブを着てるところとあるが、シルビアは自由な服装の方がよく、自由にしている。
「え?あ、なんでもないよー…続けて?」
「かしこまりました。続けさせていただきます。」
「先日、王国騎士団の小隊が何者かの魔獣によって全滅させられたことにより、外壁にイレブンノートが見張りをつけることになりました。」
「うちの支部から5人を選抜していただきたいのです。」
「5人かー。うーん…」
「ここで優秀な成績を残せば本部からの礼金に加え、11支部の価値を知らしめることの出来るチャンスなのです。」
「…そうだよねー。」
そう言いながら頭を搔くシルビア。七星剣と上層部以外は小隊を全滅させたのがS級モンスターとは思ってもいない。それは、シルビアにでも言えることだった。
しかし、彼女が悩んでいるのは先日、リサードに酷いことをしてしまったことをどう謝ればいいのかということだった。あの日はあのまますぐ帰ってしまった。落ち着いて考えれば自分も悪いところがあった。食事を奢ったりしたらいいだろうか。
でも、…と考え治す。きっとリサードの事だ、食べ物や道具で釣るような行為は嫌うだろう。誠心誠意謝ろう…と頭をひねりながらも考えるのをあとにする。悩んで仕事をおろそかにするのはリサードならしない。
「シルビア様。そこまで私たちのことを思って…」
側近のリズはクッと涙を抑える。
「ねぇ……」
「何でしょうか?」
「私がいこっか。」
「はい?!」
「だから、その見張りの件。私を入れて5人で行こうってことっ!」
「ですが、その間11支部の方は誰が…」
そう言うと、シルビアはリズの肩に、ぽんっと手を乗せ
「あなたに任せるわリズ。」
「で、ですが…」
「大丈夫よ。私ちょっと暴れたい気分なの。B級ぐらいなら11支部の小隊だけでも討伐して見せちゃうんだから。」
そう言っておどけてみせるシルビア。
「意気込みは素晴らしいですが…心配です…」
それに、B級はイレブンノート小隊では適うはずもない。勝てたとしても、全員無事帰還などは到底ありえないだろう。それぐらいは知ってらっしゃると思うが…と考えているとシルビアが口を開く。
「この前宮殿の廊下の破損の報告書だって書かせちゃってるし。今回はゆっくり休んで?」
「…そうですか。…わかりました。
確かに見張りですから必ず敵と対峙する訳ではありませんしね。 それに、B級などそもそも滅多に出ません……」
ただ、シルビアには言わないが、イレブンノート内でも不穏な動きが起きているのも事実ですが、と思うリズ。
「では、私たちの支部が最後です。もう他の支部は見張りについているそうなので…くれぐれも注意を…」
そう言うとペコリとお辞儀をするリズ。それを見て、任せてっ、と言うようにガッツポーズを見せ、4人の団員をひょいひょいっと選び外に出ていくシルビア。無理に元気を作っているように見え、痛々(いたいた)しくも見える。
おそらく、先日の宮殿の一角を破損させた事件のことで、なにか思うことがあるのだろう。
そして、それにはリサードとか言う、女たらしの戦いバカが関係しているのだろうなと推測する。ここだけの話リズは昔からリサードがいけ好かない。シルビア様のお心を弄びやがって…
あの男めぇ…と思いながらも報告書を書かなくては…と自室に戻るリズであった。
✕ ✕ ✕
旅立ちの当日、朝。
いつも起きてくる時間にはホテルのチェックインを済ましホテルを出る。今日は少し天気が悪くて、出発の晴れ晴れしい感じとは程遠かった。少し小雨の中をリサードは歩きながら昨日のことを思い出していた。
ウォマーさんと別れたあのあとも、結構いっぱいいっぱいだった。バーバラさんの酒場に挨拶にいき、離してもらうまでにはもう夜になっていた。
一応シルビアの支部にも寄ったのだが、どうやらシルビアは大事な任務らしい。
リズが残っており、睨んでくるのはいつもの事だが今回はより一層怖かった。
逃げるように帰ってきたのは言うまでもない。笑ったら可愛い人なんだがなぁ。…とそんなことを思いつつ、シルビアに言わないまま旅立つ事を少し後悔に思う。
まあ、リズさんに伝言は伝えて置いたしな…このぐらいの長さの任務はそう珍しくない。
そして、リサードはギュッと赤い液体の入った首飾りを握りしめる。戻ってくる頃にはこの血液を使った最高の防具が出来上がりを見ることが出来る。そう思うと少し楽しみになり、首飾りを首へ通す。
「よしっ。」
リサードは気を取り直し、前を見るともう工房が見えてきていたので少し小走りになる。すると、工房の前にウォマーさんともう1人、ほっそりとした青年が立っており何かを話していた。
「時間ぴったりじゃ。ほらな、言った通りじゃろ?」
「あ、本当ですねー。」
そうして小走りをやめ、一息をつくリサード。それを見て、フッと笑うウォマー。しかし、それも束の間キッと真剣な目つきになる。
「準備は万端かね。」
「はい。」
そう返事をするリサード。シルビアの顔がパッと出てくるがすぐに頭を振って打ち消す。それを見て、ん?、と顔を覗いてくるウォマーの目線をあわてて逸らす。
「…まあ、いいわい。じゃあ、後は若いもんで頼むぞ。」
そう言うと工房の中に消えていくウォマー。
青年とリサードの静かな間ができる。っておい俺、結構人見知りなんだよな…
それを察してくれたのか、ほっそりとした青年が口を開く。
「あ、話はウォマー先生から聞いています。僕は隣町で鍛冶屋をしているテイラーと申します。」
そう言うとペコリと頭を下げるテイラー。全体的にほっそりとしている。髪は黒の短髪で、優しそうな顔をしており、身長はリサードより少し高いので、178位はあるだろうか。王国騎士団の装備に似た鉄の装備をしており、頭は何もかぶっていない。鉄の胸当てや鉄のすね当てなど防具の至る所から緑の布地が見える。
「俺はリサード。これからよろしく。」
そう言って手を出すと握手を交わす。いい人だ、少し安心する。
「こちらこそ宜しくお願いしますね。」
そう言うと、馬車に乗り馬のたずなを握る。リサードも荷台に乗り適当なところに腰を下ろす。馬に少しの魔力を流すと馬のかかとに付いている、蹄鉄が光り、恐ろしい凄いスピードを出すが馬車の揺れはゴトゴトっとそんなもので、景色だけが目まぐるしく動く。
魔力の調整によりスピードを調節しながら移動するので毎度毎度器用なものだなと思う。
ただ乗っているだけだと不安に押しつぶされそうになる。そういえば、テイラーに聞きたいことがあった。
「そういえば、ウォマーさんとはどういう関係なんだ?」
そう尋ねると鼻息をフンッと鳴らし、少し自慢気な顔をする。
「僕はウォマー先生の弟子でして、この前やっと自分の工房と店を隣町にもてたんです。ウォマー先生の頼みとあらば聞かない訳ありません。」
「なるほど。でも、その間店はどうするんだ?」
「店には魔力で動くAIが、在庫のあるうちは対応してくれてますが…まあ、在庫がなくなったらそれまでですね。」
そう言って笑うテイラー。それってまずくないか?、と言うと、前を見たまま親指を立てて自信満々にいう。
「大丈夫です!ウォマー先生がリサードさんについて行けば珍しい鉱石や素材に出会えて、お前にも勉強になると言っていたので!こっちの方が価値があるんです!」
とだんだん興奮してくるテイラー。少しついていけなくなったリサードが話を変える。
「なるほど、わかったよ。それで一番最初はどこに向かうんだ?」
そう言うと、咳払いをし落ち着きを取り戻すテイラー。
「ここから北西にある森林に向かいます。ここはこのスピードなら2時間ぐらいで着きます。」
「もうハースハイトは出たのか?」
「ハースハイトどころか上の国のギュールの敷地に入っています。」
もうそんなに進んでるのか。どんだけ凄い馬車なんだろうか。値段など聞いてみたいとも思うが、テイラーが興奮しながら解説する姿が目に浮かび、長くなりそうだ…と聞くのをやめておく。
「そっか。じゃあ、悪いんだけど着いたら起こしてもらえるか?」
「了解です。」
そう言って目を瞑ると不思議とすぐに眠ることが出来た。
......................................................
「リサードさん。着きましたよ。」
ああ…、わかった。ありがとう。そう言って目を開けると体の感覚が戻ってくる。
しかし、よくすぐに寝れたな、と思う。いつも警戒して眠れないのだが、ウォマーさんの弟子ということもわかってからは安心しきっていたし、テイラーの人柄もあるだろうか、熟睡してしまった。
馬車はもう止まっており、荷台の中に森の深い匂いが漂っていた。森からは何の魔獣の声だか分からない遠吠えや、騒がしい声など様々な鳴き声が聞こえる。
「少しは休めましたか?」
そう言うといつの間にか緑のハットを被っているテイラーが荷台を開ける。荷台に木漏れ日が差し込み目が少しチカっとする。
「ああ、休めたよ。ところで俺はこれから何をすればいい?」
そう言うとテイラーは、メモを取り出して読むとすぐにインベントリに戻す。
「これからリサードさんには先ずこれを着てもらいます。」
そう言うと、空間収集術を使いインベントリから黒い装備を取り出し、リサードが受け取る。
だがコレはどうなんだろうか。
鉱石で出来ているが、軽い。
確かに強度は十分そうだが上は胸のあたりが隠れる程度までしか無く、下は膝までしかない。
腕も手から肘までにかけての篭手で、動きやすそうだがコレは露出大きいだろ。
靴は少し大きめだが、くるぶしが隠れる程度だ。腹はくびれまでモロだしになっているし、二の腕のあたりもかなり露出している。
こんなところ攻撃されたら致命傷だろう。と不満たらたらの顔をしているとテイラーが話し始める。
「この装備どうですか?
少し露出が多いとは思いますが、ウォマー先生の条件がこの装備を着用することらしいので。
あ、それと…」
そう言うとゴツゴツと溝のある骨剣を無理やり取り出した。
武器はコレ指定らしく、息を荒くさせ、両手でそれを差し出す。
……が重さで両手がプルプルと震えている。
それをしっかり受け取るリサード。
柄が短く、等身が大きい。
握ってみるとこれはかなりの重量だ。
片手で振れないこともないが、両手剣並の重量はある。
しかし、これじゃ一刀両断と言うより、叩くという感じだろう。
太い剣の面の部分にはゴツゴツとした大きな溝があり、溝の中は鋭い刃や、鋭い鉱石が埋まっている。使いようによってはヤスリのように魔獣の肉や骨をゴリゴリと削ぎ落とせそうだ。
しかし、この剣はなんの骨で出来ているのだろうか…と考えていると、テイラーが口を開いた。
「この装備に馬車の荷台で着替えてきてください。それから能力の説明をします。」
そう言って荷台を閉めるテイラー。七星剣の制服を脱ぎ、新たな防具に着替え、聖剣パージグリンも骨剣に変える。なんだか、どこかの民族みたいだな。それに少しスースーして肌寒いぞ。
などと思いつつ、脱いだものをインベントリにしまい、外に降りる。
降りると森の香りがさらに強まる。
周り一面、森に囲まれており、馬車の止まっているところはその中でも小さな新芽がたくさん生えている空間だった。
近くに透明な水が湧き出る池があり、新鮮な水で顔を洗い馬車に戻ると眠気はさっぱり消えていた。
空がいつの間にか日が差しており綺麗に葉や葉の露に反射して幻想的な景色を作り出している。
「こうして見ると、なかなか様になっていますよ。」
あたりを見回していると後ろにとテイラーが立っており、ニコニコと笑顔を向ける。
「そ、そうか?…ありがとう。…ところでこの防具は一体どんな効果があるんだ?」
民族のような衣装を似合ってると言われ喜ぶべきなんだろうか、と複雑な気持ちになるが、一応礼を言っておく。
いつもの防具とは違い、身震いがして、とても嫌な感じがする。なにか効果が付与されているのだろうか。リサードはいつも攻撃系のスキルと光系攻撃上昇、高速移動などで、あまり多くはつけない。
「その防具には二つの効果ステータスが付いています。一つ目は、言えばバッドステータスです。」
そう言うとメモを取り出し説明を続ける。
「腹減り上昇、防御力低下、そして痛覚浸透率上昇、精神妨害(恐怖)、餓死率増加、精神系防御力の低下…ですね。」
そう読みながら目を伏せるテイラー。
「はい………………………???」
おいおい、目を伏せたいのは俺だよ。
あの身震いは精神妨害のせいか。
しかも、なんだよ痛覚浸透率上昇って。
防具の中でも最悪な部類に属するスキルじゃないか。
切り傷でも激痛が走るようになったりととんでもない効果しかない。
腹減り上昇と餓死率増加のコンボも、無視できたものではない。
この先これでどう行動するかが決まってくるな。バッドステータスで行動が決まるとか悲しすぎるだろ、と落ち込む気持ちを抑え、できるだけ前向きに考える。
そうしていると、コホンと咳払いをし二つ目を読み上げる。
「こちらが本命です。二つ目は野生化というスキルです。」
野生化…?、聞きなれないスキル名に耳を傾ける。
「五感上昇、高速移動、隠密行動、自動回復(小)、スタミナ増加、背水の陣、そして、魔獣化です。」
五感上昇は、視覚や嗅覚など五感の働きが上昇するスキルと見て間違いないだろう。
背水の陣は、死にかけの状態に至ると攻撃力が跳ね上がるというものだ。
しかし、バッドステータスが補助スキルと同等なぐらいある防具なんて聞いたことないぞ。
せいぜい、バッドステータス1つに補助三つくらいつけろ、などとつい文句を言いたくなる。
そして、リサードも聞きなれないスキルを尋ねる。
「その魔獣化ってのはなんだ?」
「…どうやらその防具をつけている間は人間というより魔獣に近い状態になるらしくて…」
へぇーと少し興味がわく。
「なるほど。そう言われればバッドステータスの効果や、スキルの感じも魔獣に近いな。」
五感上昇も腹減り上昇も魔獣に近くなっているためと言われれば、なんとなくわからなくもない。まあ、だからと言って納得できるかは別である。
「後は、魔獣化はまだどんな効果があるかは自分で確かめろ、だそうです。これだけですね。なにか質問とかありますか?」
何が確かめろだよ。と、つい頭の中でグチグチ言いたくなるが、早速バットステータスが出てきており、話を深追いするのはやめた。
「いや、大丈夫だ。それよりさっきから喉が渇いてしょうがないんだ。水を飲んでくる。」
そう言って、透明な水が絶え間なく湧き出る池に近づく。上体を下げ、水面に口を近ずけてゴクゴクと勢いよく飲む。
やばいすごい美味しいぞこれ…
すると、ちょっとだけ体が回復した。
どうやら食べ物を摂取すると自動回復が起こるらしい。いい効果の方が早速見られて少し新鮮な気持ちになる。
すると、彼もまた池の水をすくって飲む。美味しいですね、と破顔しこちらも少し嬉しい気持ちになる。
────チャプチャプチャプ──────
すると近くから、何者かが水を飲む音が聞こえ、水面に波紋が広がる。
バッとそこに、目を向けると魔獣の幼獣がいた。真っ白な子犬のような外見をしているが額から角が出ており、大きな牙が生えている。魔獣と見て間違いないだろう。
しかし、敵意はなくただ水を飲んでいるだけのようだった。リサードの様子に気づいたテイラーが幼獣を見つける。
「わぁー可愛い。幼獣ってこんな感じなんですか?でも、やっぱり少し怖いですね。」
噛まれて呪いが回ったりすると嫌ですしね、と少し後ろに下がる。魔獣には人間にはない属性が存在する。
呪属性と呼ばれるものだ。
コレは噛みつかれたり引っかかれたりすると魔力を吸い取られたり、様々なバッドステータスが伴う恐ろしいものだ。
特に魔力吸収は人間にはまだそこまで解明できていない。
同じ属性の人間同士でなんとか少し分け与えることが出来るくらいだろう。
「いや、幼獣と言えど普通だったら威嚇行為ぐらいはするはずなんだ。それに、親の魔獣がいない。」
五感を研ぎ澄ますが、幼獣以外の気配はない。すると、幼獣が水を飲み終え、こちらを凝視する。何を考えているんだコイツは…リサードも真意を汲み取ろうと幼獣を見つめる。
ウウウウウッウウウウッ
幼獣が威嚇を始める。
敵意が風に乗って、リサードに肌に触れる。
怖い。
幼獣なのに、気を抜くと恐怖で腰が抜けそうになる。
テイラーが怖がらないでー、とか言っているのを見ると、この恐怖もバッドステータスかよ。とガックリ来てしまう。
が、しかし少し腑に落ちない。バッドステータスと言えど、池の反対側。しかも、幼獣の威嚇でここまでの悪寒が走るだろうか…
────ウウウウウウウウッ
────バフッバフッバフッ
威嚇方法が変わったのか?
いや違う、五感を研ぎ澄ませ口に意識を持っていく。
空気のたまのようなものが喉奥に溜まっている。攻撃?いや…
バフッ…ボハァ
空気の玉はリサードの頭を目がけ飛んでくる。
テイラーが慌ててかがむ。
リサードを見ると目を開いたまま動じない。
これは当たってしまう!…と目をつぶるテイラー。
しかし、リサードの鼻スレスレで気流が変わり軌道が変わる。
そして、後ろに流れていくと後ろでキュボッという音とともに小さな爆発を起こした。
「リサードさんっ!!大丈夫ですかっ?!」
すると、リサードは幼獣に背を向け何かを探す。あった。こいつだ。
「安心してくれ、テイラー。コイツを見てくれ。」
そう言うと、何かを地面から取り上げる。
10センチはあろうか。大きな針をもつ大きなスズメバチのような虫を持っていた。
「コイツは魔虫だ。操り蜂と言って脳に神経毒を流し込んで人を操る蜂だ。」
そう言うとまだピクピクと動く魔虫の頭を篭手で握りつぶす。そして、ニコッと笑うリサード。
「あの幼獣はこいつに気づいて助けてくれていたんだ。最初は気づかなかったけど、敵意が俺に向けたものじゃないと気づいた。
最初に俺を襲った悪寒はコイツがすぐ後ろで放っていたんだ。」
そう言って、幼獣を見る。尻尾をふり舌を出してヘッヘッとこちらを見ている。
「おいで。」
そう言うと、犬のような幼獣は池に飛び込み犬かきのようにこちらへ向かってくる。抱き上げるとクゥぅんと甘い声を出した。
「助けてくれてありがとう。」
そう言うと、ペロッとリサードの頬を舐める幼獣。呪属性がかかってしまうかもしれないと少し焦る。するとリサードの頬で不思議な現象が起きる。舐めた時に付着した唾液が不可解な力で浄化された。
「これは…」
「魔獣化の恩恵でしょうね。」
隣でニコニコとしているテイラーがそう言った。
「その装備をつけている間は呪属性が効かないと言うことでよろしいでしょう。」
それは実にいい効果だ、と嬉しくなるリサード。
「ということは、ありったけモフモフしたっていいってことだな。」
我慢していた分モフモフすると、気持ちよさそうにする幼獣。
「名前はなんて言うんでしょうね。」
「そうだな。見た感じ、狼系に見えるが白は珍しい…」
「名前をつけてみては?」
テイラーが顔を覗かせながらそう口にする。
「愛着が湧きそうで嫌だろ。」
「そんなこと言ってもう湧いちゃってるじゃないですか?」
ずっと抱き上げているリサードを見てそう呟くテイラー。くっ、そ、そんなことないぞ。
ただ、もふもふして可愛いだけだし。
「でも、名前が無いと少し困るな。」
ヘッヘッと舌を出す幼獣見ていると人懐っこい顔をしていてさらにモフモフとしたくなる。
「白いからシロってのは…安直すぎるか…」
「いいじゃないですか?愛犬みたいで。」
そう言ってテイラーが幼獣を触ろうとするが威嚇をされ、ビクッとする。
「どうやら愛犬というより、番犬の方がお似合いですね…」
と言いながら手を引っ込め残念そうにするテイラーを見ていると少し笑ってしまう。
「よし、お前はシロだ。助けてくれたお礼もあるし少し付き合ってやる。」
そう言うとウォウッと返事をするシロ。ワンじゃないんだなとか思いつつ、犬じゃないんだからと自分にツッコミを入れる。
「それでは、私は馬車の方に結界を貼りますので。」
そう言って馬車に戻るテイラー。シロを足元に下ろし、少し歩くと付いてくるのが可愛い。
「じゃあ、俺はもう行くよ。ボスの詳細を教えてくれ。」
そう言うとテイラーは、そうでした、とメモを取り出す。
「今回の狩猟モンスターは阿修羅エイプというモンスターです。
6本の腕を持つ、クワトロエイプの親玉で、危険度はB程度だそうですが狩猟許可が降りてから1度も狩りの成功に達したものがいませんので、危険度Bというのはあくまで目安程度に聞いてください。」
「その、阿修羅エイプってのはどこにいるんだ?」
「周りにクワトロエイプの巣があるのでそれを辿っていけばつくと思います。」
「了解。そいつを倒して引きずってくればいいんだろ?」
「いえ、リサードさんが倒した後、解体部門のエキスパートが運んで解体するそうです。戦いが終わったらその周辺のモンスターを狩って安全な状態にしてほしいとの事です。」
なんか注文多くないか?まあ、いいけどさ。。自分のレベル上げのため、人民の平和のためだと不満を抑える。
「分かった。終わったらここに戻ってくるよ。」
そう言うと、いえその必要はありません、とインベントリからアイテムを取り出し、リサードに渡す。
「コレは?」
「これは魔力のこもった狼煙です。まだ試作品段階ですが、問題は無いと思います。倒し終えたらそれに魔力をそそいでください。」
へぇ〜と珍しそうに眺め、インベントリにしまう。
「では、ご健闘を。」
そう言うとペコリと頭を下げるテイラー。
「ああ、行ってくる。」
リサードが歩き出すとシロも後ろをてこてこと付いてくる。敵と遭遇したら隠れろよ、と言うとウォウッと返事をする。
ほんとに分かってるのかなぁ、と思いつつ少し微笑ましい。
フゥーと深呼吸をし覚悟を決め歩き出すリサード。幸先はいい感じかな、と少し楽しみになってきていた。
その先に待っているのが悲劇だとは知らずに。。
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次からリサードの戦闘シーンに入ります。戦闘シーンに持っていくために少し今回は内容を詰めました。忙しさもあり、次の更新は少し遅めになるかもしれません。申し訳ないです。




