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41話 魔は風に、風は氷に、

次回からの続きです。 どうぞ!!

41


日が落ちてきて、辺りは薄暗い。

結界の中でその事に気づけたのは恐らく彼だけだろう。



「やっぱり強いねぇ。 神器クラスになると、大変だよ。」



緑色の髪が揺れる。 男は、そう言うとまた刀を構える。



『ハァ……ハァ……』



デミウルゴスの燃え上がるような真っ赤な体躯は、切り傷と汚れでボロボロになっていた。 息は切れており、腕が力なく垂れている。



「もしかしてだけどさぁ……?」



『………………………………………』



「弱くなったよねぇ? デミウルゴスさん♪?」



『………………………………………。』



そう言ってクスクスと笑う。



「それとも、僕が強くなったのかな……?」



そう口にしながらジリジリと近寄るジュード。



今の僕は強い……。 これからも強くなる。



まだまだまだまだ……



そして、今ふんぞり返っている英雄クラスのクソを……



『ハハハハハッッッ!!!』



「………………………………?」



デミウルゴスが不意に笑い出す。



「気でも狂ったのかい?」



ジュードがそう言うと、デミウルゴスは顔を上げる。



『いや……そうじゃねぇよ。 ただ、面白くてな……。 お前の冗談が……』



「……………………………………」



ジュードの足が止まる。 俯き刀を自然体に持ち、目は髪に隠れる。

デミウルゴスは返答を待たず、続ける。



『強くなった……って本気で言ってんのかお前……? お前はいつまでたっても雑魚のまま……俺が大陸から出してやった時のままだ。 いや? それ以下かな……?』



「へぇ……挑発のつもりかい……?」



ジュードがボソリとそう口にする。



「君が僕を挑発して利点があるとは思えないな。 冷静を崩して、一発逆転なんて考えてるならやめた方がいいよ。 君の死期を早めるだけだからね……」



だが、デミウルゴスはヘラヘラとした口調を崩さない。



『挑発……? 本当のことだぜ?』



「……………………………………」



再び口を閉じるジュード。



『お前のさっき使った技。 見覚えがあると思ったんだよなぁ。 あれ……ジンのにそっくりなんだよ……』



デミウルゴスはさらに続ける。



『途中使った斬撃……あれは、風ではなく高圧の水。 それも特殊な泉で生成される精の水……。

これを、風で斬撃のように飛ばす……。 種はジンの風にウンディーネの水だ……』



デミウルゴスは前のめりになった体を起こし、ジュードを見つめる。



『……俺は魔獣だからわかるのさ。 コイツらはお前に従ってねぇ。 お前が無理やり力を絞り出している……。 こんなやり方は知らねぇ。どんな方法を使ったのかは知らねぇけどなぁ……』



デミウルゴスの眉間にシワが集まる。



『魔獣を無理やり我がものにしたところで、すべて引き出すことは出来ねぇ。 お前がやってるのは他人の作った弾を俺に打って、強いと喜んでるガキと同じなんだよ……。 お前の力……? いいや? それは、精霊たちの力だ。いつか魔獣と心を通わした本物が現れた時、お前やられるぜ……?』



デミウルゴスはそう言ってニヤリと笑った。

ジュードは固まったまま特に動く様子はなかった。

しかし、不意に刀を鳴らしたと思いきや、デミウルゴスを睨みつけた。



「何を言うと思えば……。 くだらないな。 魔獣と心を通わす? 魔獣と人間が仲良くなれるわけがないのにか? アハハハハッッッ!!! 」



デミウルゴスは確信を持った笑みでジュードに視線を送る。



『わからねぇだろうな……。 リサードだったな……アイツと戦えばわかるぜ……?』



そうデミウルゴスが口にした瞬間だった────────



ゾクッ。


────────────────


場が凍りつくような空気が襲う。



「……リサード……?」



『ああ……。』



ビリビリッッ。



ジュードの視線がまるで針のように体を指す。






「お前もか……」






ジュードの体がわなわなと震える。








「みんなァリサード!リサード!リサードリサードリサードリサードリサードリサードリサードリサードリサードリサードリサードリサードリサードリサードリサードリサードリサードリサードリサードリサードリサードリサードリサードリサードリサードリサードリサードリサードリサードリサードリサードリサードリサードリサードリサードリサードリサードリサードリサードリサードリサードリサードォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ……!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」






『────────?!』








はっきりと言おう。



デミウルゴスは確信する。



コイツはあの小僧の師匠とは名ばかりだ……と。



「……どいつもこいつもそうだ……。 あの野郎……。 俺があれほど血を吐き励んだ道を、軽軽と越えていく。 人を魅了していく……」



ジュードは頭を抱え、体からは汗が吹き出だすほど震えていた。



「クククッッッ……」



『……何笑ってやがる。』



ジュードは顔を上げた。



もはやそこに美青年と言った顔は無く、悪魔のような顔が映し出されていた。



「……殺しておくべきだった。」



────────ゾクッ



『助けておいてか……?』



「デインコイドじゃあ、たかが知れてる。 とっくに奴など振り切ったつもりになっていた……。 だが、どうだ! こんな辺境の大陸でもやはり、リサードばかりだ……」



ジュードは刀を構える。



「……予定変更だ。 」



刀が怪しく光る。



沈んだ太陽に初めて気づくほど周りを闇に染める。



「……お前の力はいらない。 ここで殺す。」



「………………………………………………。」



ブチッ────────



お前の力はいらない……?



どこ目線で喋ってやがんだァ?



デミウルゴスの頭には血が上っていた。



『……急激にきれたぜ……』



驚くほど低気圧。 それを感じさせるのは、ジュードだけでは無い。

デミウルゴスもまた我慢の限界だった。



『吐いた唾飲むんじゃねぇぞォォォ……!!!』



「フンッ……」


────────────────。


閃光。



二人の姿は消え、ぶつかり合う音と衝撃が目に見えるように大気を揺らす。

すると、距離をあけ手をかざすジュード。



「……もう隠す必要ないよね。」



────アタッチメントソウル



「インパルス・シャワー……」



『それが本性かァ?!』



電撃の様な火花が散ったかと思うと、まるで針のように電撃を纏った水が無数に飛んでいく。



死炎(シエン)ンン……!!!』



雨のように降り注ぐ粒を、燃やし尽くす紫色の炎。



「相変わらず単細胞が……」



粒を飲み込み、それを放つジュードまでをも巻き込もうとする紫色の炎。

ジュードもそれを察し、体に風を纏う。



『逃げんなよクソッタレッ!!!』



だが、それを待たず風のように消える。



そして、────────



「……誰が逃げたってぇ……?」



────インパルス・シャワー



『グッッッ!!!』



背中に高圧電流の雨が降り注ぐ。



ウンディーネの水にこの雷はよくわからねぇが……



この感じはおそらく中級の魔獣のものだろう。 警戒すべきなのは、ある属性……



「ツイン……」



上級魔獣、ジンの風属性ッッ!!



「……テンペスト。」



『グゥゥゥオオオオオ!!!』



次元をもねじ切るような2つの大嵐が地面、草、生き物。 そして、結界をも破壊せんばかりの威力で更に増しながらデミウルゴスを狙う。



この技を受けきるのはダメだ、少なくとも相打ち……



デミウルゴスは電撃を含んだ雨を受けつつも、死炎を打とうと腕を上げる。

燃やしつくせ……黄泉の……



その時だった────────



────────ズキズキッッッ!!!



『カハッッッ!!!』



ここに来て、魔力が底を突く。



そんな馬鹿な俺の魔力が尽きるなんて事はねぇ!



何が……



デミウルゴスがそう考えた時、腹に違和感を感じる。

その違和感は激しい痛みと魔力切れの理由をデミウルゴスに理解させた。



コレは……



腹に八岐大蛇(ヤマタノオロチ)の紋章。



あのガキ……………



この場所。 そして、戦いの最中見せた蛇での攻撃。



そして、何より……



魔獣の中でも忌み嫌われ、災厄と謳われたヒュドラの紋章……



やってくれた……ぜ……



「ハハハハハッッッ!!! 大魔獣様が魔力切れなんて、堕ちたよねぇぇぇぇ!!!」



『……誰かのお弟子さんで使い過ぎたなぁ……?』



大嵐の威力が最高潮に達し、遂に結界を歪め始める。



「……それはもういいよ、喋んな……死ね」



『……また会おうぜ……人間ッッ……』



高度に張り巡らせ、多量の魔力と最先端魔法を駆使した大結界を歪める大嵐は両方向からデミウルゴスを捉えた。






『……うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』






────────────。



轟音と爆発。



縮み始めていた結界は中から破壊されたものの、幸いにも大嵐の威力を殺していた。

大きな扉は消えており、抉れた地面とうねるように作られた風のあと。 爆風が周りには吹き荒れたものの、それ以上の被害はなかった。



タバコの煙の香りが舞う。 その光景を終始見ていた女は、吸っていたタバコを握りつぶした。



風が止み静まり返ると、丘の上に立つ黒い短髪の女はタバコを捨て、場を静かに見つめていた。

そして、凍てつくような女の声が美しく整った唇から漏れる。



「……約束はここまでじゃ……」



そして、────────



「全軍に告ぐ!!! これより、被害防衛の任務を完了し────」



結界を囲う、幾千の魔兵士は見上げた。 その声は例え届かなくても魂に訴えかけ、気づかせるような覇気を持っていた。



「……SSランク大罪人、ジュード・レイラの捕獲とする!!!」



ざわめく部下を気にもせず、女は口角を上げた。



「……尚、生死は問わない……」



ざわめきが消える。








【「お前達……狩りの時間だ!!! 気張れええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!!!!!!」】








「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」









その声を聞くや否や、女は指を鳴らし、ゲートを開く。




「……なんだよ、あれ……」




白髪の青年リサードはその光景を見ていた。 まさに神の偉業。




「……来い、バルカン。」



「キュオオオオオオオン!!!」



大地を揺るがすような恐ろしい咆哮が聞こえたかと思うと、荒々しい吹雪がゲートから放たれる。

そして、その吹雪は女の横で塊となり静止する。



「私より先に捉えたものには、功績を与えよう……」



「お姉ちゃ……!!!」






「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」






女の一言に大地は熱気に包まれ、魔兵士達は各々、あらゆる行動を取り出す。

走り出すもの、魔法を唱えるもの、魔獣を召喚し走り出すもの。

女に呼びかけようとしたマリンの声は届かず、女の横で静止した氷の結晶は馬のような形をとる。 馬の周りには氷晶が降り注ぎ、その馬の踏んだ八本足の後は大地を凍らせ、待機の熱気を一気に奪い去る。



氷晶を纏う白馬……



その氷晶を纏う八本足の白馬に女は跨ると、(たてがみ)を人撫で。

そして、────────



「行くぞ!!! バルカン!!!」



「待ってお姉ぇ……!!!」



「キュオオオオオオオオオオオオオオオオオンン!!!」



待機を揺るがすような馬の嘶きが半鐘すると、待機の水分が固まり始め吹雪を起こした。

すると、光のような速さで大地を駆け抜けた。



ヘタリと座り込むマリン。 そして、もう一人……



「……………………………………。」



リサード・ブルオスト。 彼もまたその後継に囚われていた。

地に足をつき、その光景を飲み込め無いまま、ただ女のいた場所から目をそらせなかった。



────────────────────────────────────────────────



バンド活動のモチベあがりました

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