40話 あなたは一体何者ですか?
前回の続きですので、一旦全話を少し確認してから読んでもらった方がいいかもです! では、続きをどーぞ!
「ッッ………………!!」
「ふふ……ごめん。 イタズラしたくなっただけ。」
そう言って、女は立ち上がると結界を見る。
「ムカつく……?」
「いや……驚いただけだ……」
リサードは唇に手を当てられたことに少しびっくりしたことを素直に伝える。
この人に早く何処か消えて欲しい反面、どこか見ていたいような気持ちだった。
「嘘だね。」
場に静寂が走る。
「は……?」
彼女の顔は見えない。
「君さっきからずっとイライラしてるよ。 私の態度かな……それとも……」
「…………………………………。」
すると、振り返りしゃがみこみ、リサードを覗く形になり、笑みを浮かべる。
「……弱い自分にかな?」
「はぁ……? 」
ギシギシ痛む体を無理矢理に動かし立ち上がる。
「アンタ……挑発してんなら買うぜ?」
「え……?」
リサードがそう言って、睨みつけると、キョトンとした顔を見せる女。
あれ…………………………?
「あ、ごめん。 怒らせるつもりは無かったの……」
そう言ってシュンとする彼女。
「あ……あぁ。 そうか……。」
わざとじゃないことが伝わり、まあ、何とか心を沈めるリサード。
俺が心小さい……のか……?
「わざとじゃなかったのか……。ごめんな……。 正直俺も子供だった。申し訳ないです。」
「いやいや。 私こういう風に誤解されること良くあるんです。 昔から相手を怒らせてしまってね……」
「そ、そうなんだ……」
すまん……正直だろうなとは思う。
「そのせいで怪我人を出したりして、よくお姉ちゃんに叱られるんですよね……。 よかった。 あなたを怪我させなくて……。 」
「へーー…………よかったね。」
怪我させなくてって何だよ。 どんだけ舐められてるんだ俺は……
やっぱり俺って心狭いのか? てか素で言われてんのがここまで辛いとは……
「なんか怒ってます?」
「怒ってないです。」
ギシギシと悲鳴をあげる体を抑え、ゆっくりと腰を下ろす。
そして、目が合うがプイっとそっぽを向くリサード。
「やっぱり怒ってますよね……?!」
その時だった────────
「────封魔の儀を行え!!!」
女と瓜二つの声。
だが、その声は天真爛漫な彼女とは違い、厳しく身震いさせるような声。
その声に伴い、沢山の詠唱が響き渡る。
「お姉ちゃんはやっぱりすごい……」
「今何してるんだ?」
「封魔の儀ってと言って、SS級の魔獣を扉に戻すための儀式よ。」
「へぇ……。 SS級……か……。」
リサードは結界を通して、中を確認する。
膨大な魔力をつぎ込まれ出来上がっている結界は反対側が見えないほど大きい。
だが、遠くの方で爆発が起きていたりしているのは確認できるため、恐らくデミウルゴスは反対側で暴れているのではないかと予想がつく。
それに、彼女は普通にSS級魔獣と言った。 リサードは正直S級が精一杯だ。 淡々とSS級と言う辺り、対峙したことがあるのか……?
「反対側の結界ばかり攻撃されているようだけど、破れたりしないのか? あの、デミウルゴスだぞ?」
「心配いらないですよ。 なんて言ってもあのジュード様が相手です。デミウルゴスが相手と言えど、そう簡単に破らせないし負けません。」
え……? SS級が……?
「ジュードはさっき逃走したんじゃ……?」
リサードがそう言うと、女はクスクスと笑う。
「ジュード様が逃げるわけありません。 なぜなら、今回ジュード様はデミウルゴス討伐のためにこの大陸に来たのですから。 私もお姉ちゃんも周辺地域のサポートとして来たんですよ?」
「……討伐。 てかこの大陸にって……」
リサードがそう聞くと、口を抑え驚き、思い出したように手を叩く。
「あぁー、ごめんね。 デインコイドの人たちは大陸出たことないんだもんね……。 」
「デインコイド……?」
「これって言っていいのかなぁ……。」
彼女はそうブツブツと独り言を言っていたが、決めたようで「よし!」と話し出す。
意外と話し始めると、元気な人のようだった。
「私は、マリン! 君の名前はー……リサード……君……だよね?」
「そうだ……けど、どこで名前を……?」
「ジュード様から聞いたの!! 僕はデインコイドにちょくちょく行くのさーって言ってて、私も行きたいなーって昔から思ってて……ってこの話はまたでいいや!」
そう言って、高揚した顔を叩き、話を元に戻す。
「リサード君が世界の全てだと思ってるこの大陸は、実は世界で見たら沢山ある大陸の1つなんだ。 私達はこの大陸から見て北にあるミューハーフェンってところから来たの。
この大陸の3倍以上あって、たくさんの種族に豊富な資源が沢山あっていい所なの。
凍える火山に、火を噴く氷山。 浮かぶ海に、沈む空! 」
「……ミュー? 3倍? 氷山?空?」
大きな仕草でキラキラと話す彼女には申し訳ないが、理解がまるで追いつかない。
「あ、ごめん。 ついつい熱くなっちゃった……。いきなりこんなこと言われても理解できないよね…… 」
「いや……」
テンションが下がるマリンに、リサードは答える。
「ビックリはしたけど……正直ここが世界の全てって言われても納得出来ていなかったから。 薄々そうなんじゃないかな、とは思ってた。海を渡ると絶壁で死ぬんじゃなく、繋がってるんじゃないかって……」
そう答えると、目を丸くするマリン。
「え……? もしかしてリサード君って以外に天才……?」
以外に天才って何だよ。 天才に以外付けるやつ初めて見たぞ……
「天才じゃない……あと、呼び捨てでいいから。」
「いやいやいや! リサード君は天才かも……。 だって、デインコイドの人ってここが全てだって本気で思っちゃってるから何言っても理解出来てないんだよね!」
コイツ一々人を馬鹿にしないと喋れないのか? とため息をつくが、悪気は無いので仕方ないか……と咳払いをする。
「とりあえず、話しを戻すぞ。 ジュードはまだ中で戦ってるんだな? そして、この結界は周りに被害ができないように張ってある。 ジュードやマリンはミュー何とかって大陸に居て、ここへ討伐しに来たんだな?」
「ミューハーフェンだよ! でも、それ以外は大体合ってるかな。」
「質問いいか……?」
「うん、いいよ?」
リサードは顎に手を当て、問いかける。
「ジュードは元々ここの大陸の人間のはずだ。 昔から俺は世話になっていたし。
でも、マリンの話じゃジュードはミューハーフェンの側の人間のように聞こえる。
いつから、ジュードはミューハーフェンに行くようになったんだ?
それと、どうやって海を移動していた? マリン達もそうだが、海は嵐と海洋魔獣にはばかれて……」
リサードがそういった所でマリンが口を開く。
「私がまだギルドに入る前から、名前は聞いてたよ。 20歳に初めてギルドに所属して、3年経つかな。
あ、でも出会ったのは14歳の頃! モンスターに襲われていたところを助けてもらって、それで私も戦闘職になろうって決めたの。
けど、最初は驚いたなぁ。
ジュード様って凄く若々しいじゃない? 肌ツヤも良いし、肉体もかっこいいでしょ?
それに、見た目も20代後半にしか見えないけど、40代って聞いた時は心臓止まるかと思った。
私お兄さん感覚だったんだもの……。」
話を聞く限り9年以上前から、大陸を出てたのか……。 てか、あの人俺も忘れてたけど、エドワードと歳一緒じゃなかったか?
明らか年くってないの怖いし、40であの喋り方はやばいだろ……
「あ、あの……ジュードのことはとりあえず分かったから……。 ここまでの移動は何で?」
「あ……、長かったね……ごめん。 移動は大体ギルド船だよ。 海洋魔獣はみんなで倒して進むの。 嵐とかは揺れるけど魔法壁とか張って進むかな……」
「ギルド船か……」
まあ、大体そうだろう。 大陸の周りを移動する時船に乗ったりする。 だが、こちらじゃあの嵐や海洋魔獣を凌ぐことは出来ない。 恐らく、技術的にも魔法的にも遅れがあるんだろうな……。
しかし、それでもやはり疑問は残る。 ジュードは帰るたびにギルド船に乗っていたのだろうか。 わざわざそのためだけに、大勢で帰るのはコスト的にも……
そう考えていた時、マリンは思い出し多様に口を開く。
「……んー。 あ!あとは、時々お姉ちゃんかな。」
リサードの目が丸くなる。
「お姉ちゃん?! お姉ちゃんって、お姉ちゃん???」
「うん??? そうだよ?」
「すまん。 やっぱり俺は天才じゃない。 全く意味がわからないんだが……。 背中に乗ってるわけじゃないよな?」
「え? 背中?!」
彼女はそう言うと、吹き出して笑った。
「あはははは! ごめんごめん。 そうだよね、説明不足だった。 お姉ちゃんの使い魔に海洋魔獣が居てね? その子に運んでもらうんだよ。」
やっぱり、この人最初は不思議な人に見えたけど、子供っぽいよな……。と笑った顔をみる。
そうかいそうかい。 ここは1つ俺が大人になって温かい目で見てやるか。
海洋魔獣をねぇ。 そうかそう……
え?!
「海洋魔獣を使い魔に?!……お姉さん何者だよ……」
海洋魔獣を使い魔って、どんだけ強いんだよ……。 お姉様と呼ばせてほしい……。
「背中って……ぷふっ。」
そう言って、身体を震わせながら笑いをこらえるマリン。
「まだ、笑ってんのかよ……」
リサードがそう悪態をつくが、「だって、……ぷふふ。」と完全にツボに入っており、止まらない。
だいぶ最初の印象よりは、柔らかく天真爛漫な感じが更に元気に見せた。
当のマリンは笑いが収まった。 まだ少しおかしいのだろうか、ちょいちょい口を抑えるが落ち着きを取り戻し質問に答える。
「お姉ちゃんは凄いんだよ! 何せ世界に6人しかいない英雄クラスだからね! 」
「へぇ……。凄いなそれは……。」
「ジュード様だって、まだマスタークラスなんだよ? まあ、マスタークラスの中でも上位だからあんまり強さ的には遜色無いのかも……」
そう彼女が言いかけた時だった。
結界が大きな音を立て、動き始めた。
「「────────────?!」」
「え?! お姉ちゃん!?」
マリンの様子が急変する。
「おい、マリンどうした?!!……いつつっ。」
結界に奇怪な模様が浮かび上がり、少しづつ空間を狭めていく。
「お姉ちゃん! 待って!! まだ中にジュード様が!!!」
そう言って、走り出すマリン。
追いかけようと、両足で立つ。 すると、体は多少痛むが何とか動けるくらいには回復していた。
「回復魔法をかけられた覚えは無いんだがな……ってとりあえず状況を把握しなくちゃな。」
走ることはまだ出来ないため、追いかけられないと判断すると、結界を通じて中を確認する。
だが、いかんせん爆発は起こっており、戦っているのだろうと外から見てもわかるはず。
なぜ、閉じ込めるようなマネを……
マスタークラス……
ギルド……
大陸……
ジュードには聞きたいことがたくさんある。
そのためにも、生き残ってもらう必要がある。
リサードは結界に立ち寄り、爆発を眺め、言葉を漏らした。
「ジュード……。 アンタ……一体何者なんだ……」
────────────────────────────────────────────
英語勉強しなきゃ……涙




