王都編〜2〜
自分のペース見つけて、長く書いていけたらなと思います
ハースハイト国、王都パラソル。その中心に位置する宮殿に彼らはいた。つい先日まで脳内を占拠していた七星剣脱退の話は、呆気なくエドワードの一言によって掻き消されていた。
「…………………………………」
「危険度S…………」
愕然とした空気の中、リサードはそう呟いていた。ハースハイトでは魔獣に危険度が設けられている。危険度にはCからSがあり、またこれらは安全指数という目安が設けられている。Cは王国騎士団対処程度、Bは王国騎士団とイレブンノートの合併軍対処程度、Aは王国騎士団とイレブンノートの援護の元で七星剣の内、相性がいいと判断された1人を選抜し対処する程度。七星剣のメンバーになるための重要な要素にAを単独討伐するという偉業があるが、やはり安全指数となると援護が必要になる。本来はこのAが最高ランクとなっており、C以下は何も付けず魔獣と分類される。
しかし、上位の者にしか伝えられない危険度Sが存在する。
Sを付けられる魔獣には様々な特異体質があるが、中でも代表的なものがある。その特性をシャーベットが口にした。
「圧倒的な力に加え、人の言葉を理解できる知能を持つ…」
「………………………」
全身に悪寒が走る。シャーベット本人も愕然としたままだった。すると、ガタッという音ともにアリエッタが立ち上がり、部屋から出ていこうとした。エドワードがそれを制止する。
「アリエッタ…どこへ行くんだ?」
「エドワード、今まであなた何をしてたの?」
振り返らず話すアリエッタの表情はわからない。しかし、声は確かに震えていた。冷静なエドワードの声が響く。
「まだ話は終わっていない。」
「質問に答えて、エドワード。あなたはそんな情報を知っていて座って何してるの?みんなもそうよ。今だって誰かが殺されてるかもしれないって考えないの?あなた達、普通じゃないわ。」
「言い分は最もだが座れ。まだ、話は終わって…「もう話すことはないわ…」」
そう言ってアリエッタがドアを開けようとする。しかし、ドアに触れた途端、ドアが黒い粒子のように散り、消えた。
「ブラッド…どういうつもり?」
「…………………行かせない…………」
アリエッタの額に青筋が浮かぶ。
「アタシに喧嘩売ってるわけ?」
「……………1人でいっても死ぬだけ………」
「……そう。」
そう言うとアリエッタの表情が一変した。それを悟り、ブラッドも逆毛が立つ。その時だった。
「アリエッタ、座って」
シャーベットが口にする。
「あんたまで何言って…」
「聞いてアンリ。」
「っ……………」
「あんたわかってるんでしょ?こんなこと聞いたらエドワードが一番躍起になることぐらい。それに何も情報ないままで行くのは愚かよ。まず、話を聞きましょう?」
「……………………」
「ブラッド……そして、リサードも落ちついて?あなたが最初にたったのかと思ったわ。」
「え?何のことだ?」
「……………殺気がダダ漏れ……」
突然話を振られ、何を言っているのかわからなかったがブラッドの一言で理解した。自分に驚きを隠せない。拳を見ると握りすぎて血が滲んでいた。
「ごめん。2人ともありがと…」
そう言うと、フーっと息を吐き知らず知らずに強張っていた体から力を抜き、やるべきことを再確認する。
「アリエッタ……」
リサードが呼びかけるも、アリエッタは俯いたままで、何も返事はない。しかし、それでも良かった。
「飛び出したいのはみんな一緒だ。今はきちんと聞こう。」
「……………………はぁ……」
「…………ほんとバカね…」
フンと鼻を鳴らすとアリエッタは俯いたまま席につき、やれやれと言った表情を作った。
「ここで出てってもアホみたいだしね。手短に話して。」
全員がエドワードを見ると、エドワードがすまないとアリエッタに頭を下げ、話し始めた。
「ちょうど三日前のことだ。とある魔獣が王都付近の森で何かをしていると報告を受けたのだが。討伐に向かった王国騎士団の小隊が全滅した。」
「王都の近くにC並の魔獣が出るなんて珍しいと思った私は、直々(じきじき)に迎え撃とうと考え現場に向かったのだが、、その魔獣を見た時背筋が凍った。奴は私の因縁深い魔獣だった。」
「奴の名はパンプキン・ロード。本体は人型で、顔がカボチャ、身体はスーツを着こなしている。体長は2m程だ。」
だが、リサードには当然疑問が湧く。
「え?……でも…なんかおかしくないか?危険度Sの要塞級だって…」
「ああ、それはやつの特異体質からきている。」
「まさか……支配型…なの?」
シャーベットがそう言ったところでエドワードは頷く。
「そうだ。いつも奴は危険度Aの要塞級魔獣を従えているのだ。その魔獣の名前はタートルグランデ。山のようにでかい亀で背中に甲羅がついている。その頂上に奴はいるのだが、亀もなかなか厄介で、やつを倒さない限り亀は死なないのだ。それに奴が上でちょこまかと攻撃を仕掛けてきて思うように攻撃が通らない。」
「へー、詳しいんだね…まるで、一度対峙したことあるみたい。」
皮肉そうにアリエッタがそう言うと、エドワードの顔つきが変わった。
「…ああ…。昔、私は一度奴と対峙したことがある…」
「っ……………………」
全員が息を呑んだ。
「いや、正確には私達はそこに居たというのが正しかった…私とジュードが七星剣のメンバーになる前の頃だ。」
エドワードはそう言うと目を閉じる。
「七星剣の1人クレイドという人がいた。彼は私とジュードに剣技を教えてくれた人であり、当時の七星剣でも一目置かれる存在だった。弟子になりたいという田舎者だった私達をを快く受け入れてくれたのがクレイドさんだった…」
「しかし、30年前事件が起きた…」
30年前?まさかな…と思ったところでブラッドが呟く。
「………五刃の葬事件……」
「そう呼ばれているな。」
「っ………………………………」
五刃の葬事件。七星剣を目指すものなら誰でも知っている有名な話だ。30年前、七星剣が100を超える魔物と戦い、国を守りきったが、5人の七星剣が命を落とした忌まわしき事件である。まさか、そこにエドワードとジュードが参加していたのか。とすると生き残ったのは、当時七星剣の2人と、エドワードとジュードを合わせて4人のはずだ。当時の七星剣の話は知っているが2人の名前は出ていなかった。明記されているのは聖剣のトルネさんと、軍破クラムの2人だったはずだ。
「その事件の魔獣とエドワードがどう関係しているんだ?」
リサードが疑問を口にすると、エドワードが苦虫を噛み潰したような顔になる。少しの沈黙の後覚悟を決めたように顔を上げ話し始めた。
「…クレイドさんの仇だ……」
「…話せば長くなるため詳しくは話せないが、クレイドさんの忠告を無視し、戦場についていった私とジュードをかばってクレイドさんは死んだ。100体の魔獣の内、トドメを指したのが奴だった。」
「…その魔獣がクレイドさんのトドメを指した後は?」
その時を思い出すかのようにエドワードは天井見た。
「クラムさんに倒された…そう思っていた。その時は奴はかなり消耗しきっていたからな…」
「事件が終わったあとはクレイドさんの鎧を私が、剣をジュードが受け継いで2人で軍破クラムさんの元で武者修行に明け暮れた…クラムさんが引退し、気付けば2人とも七星剣の盾と矛などと呼ばれるようになっていた…」
「そして、二度とこのようなことが起きぬよう警戒し、跡地を調べ大勢の魔獣がなぜ結束し襲ってきたのかを調べていたのだが…」
いつもキリッと話すエドワードが力のない声で話すのは珍しいと思った。同時に彼の目に絶望の色が移り事態はかなり厳しいのが伝わった。すると、シャーベットが口を開いた。
「一ついいかしらエドワード。あなたはさっき危険度Sの要塞級魔獣が'新たに'現れたと言ったわよね?倒しきれていなかったとすると新たにでは無いんじゃないかしら?」
リサードも気になっていた疑問をシャーベットが口にする。なぜ、その魔獣を'新たに'と言ったのか。先ほどの説明では既存の魔獣生きていたというふうに捉えられる。
「見た目はそっくりだが中身が違うのだ。」
「…どういうこと?………………」
「口調、性格が全く異なっている。昔はいつもふざけていて掴みどころがないくせに頭の回る嫌なヤツだった…。」
「ところが今回私が王都付近の森で対峙したときは亀はおろか何もモンスターを連れていなかった。それに、はしゃぎ様はまるで初めて力を手にして喜んでいる子供のようだった。」
「戦い方も小ずるいというより、直線的で力任せであった。確かに力は強力だったが昔ほどの脅威は感じられなかった。しかし、乱暴な戦い方にも関わらず遅れをとってしまってな。にげられてしまった。」
単体でエドワードと互角かそれ以上の力を持っている上に従えているのは危険度Aときている。昔ほどの知恵は回らないらしいがそれでも、王都の近くに顔を出すには何らかの意図があるに違いないだろう。リサードは冷静に考えていた。
「昔のヤツと同じではないとは言え十分に危険だ。やつが行動を起こすまでにまだ時間はある。単独での行動は避けるようにしてくれ。ジュードとキラには私から伝えておく。」
そう言うとエドワードは一呼吸おいた。
「討伐の詳しい作戦は次回話そう。それと、リサード。お前は残ってくれ。」
「わかった…」
こうして、それぞれが色々な思いを胸に会議は幕を閉じた。
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最近。夜眠れないという悩みに悩まされてます。、




