34話 大六感
前回からの続きです! どうぞ!
案内役の男はキラ、シルビア、クロエを回収する。
けが人を運ぶための魔法具〈エイド・ボックス〉を起動し安全な場所……ここからだとハースハイト王国が近いだろう。 そこに運ぶことにした。
そして……
「これは…………」
新しい遺体を一つ見つける。
白髪混じりと言ってもほぼ黒髪は無くなっているオールバックと執事の服を着た男を案内人の男は見下ろした。
この出血量じゃ明らかだが、一応生死を確認しておくか……
そう思い瞳孔や脈を測ってみるが、やはり……
男はそっと死体の目を閉じさせた。
「……いつみても人の死というのは残酷だ……。」
今回は死人がいくら出てもおかしくない。
むしろゼーノスと戦い、この人数で1人と言うのが奇跡だ。
私も死ぬ覚悟はできている……
だが、やはり慣れるものでは無いな……
男はそう感慨にふけっていると、ふとポケットに違和感を感じる。
「……白い……弔い刀…………?」
白い弔い刀が入っていた。 弔い刀とは小さな短刀で恩人、友人などが功績のある死を残した時などに贈るものだ。
横に小さくイニシャルが書かれているのに気づき確認する。
アール……ビー……
そういう事か……
その二文字を見て察する。 そして、リサードに剣を向けられた時のことを思い出す。
あの時に入れられたのか……
案内人の男は白髪の執事の手に、その''白い''弔い刀を握らせた。
戦士よ……しばしの休暇を……
そうして、手を合わせ戻ろうとする。
すると、その光景をいつから見ていたのだろうか。 ある女がこちらに接近した。
そして、いつの間にか現れたその美しい女に声をかけられる。
「あなたここで何をしてるの?」
「あなたは……ッッッ……」
案内人の男は、その女を見て凍てつくような空気に身を震わせた。
…………………………………………………………………………………………
森を駆け抜け、まだそう時間はたっていない。 決して狭いわけじゃないその森だが、あまりのスピードにその森は小さく感じた。
「これが私の限界です……。」
ローブを着た男はそう告げる。
「そうか……お前に合わせるさ。」
そう言って、2人は森の中をもの凄い勢いで走り抜けていた。
道中出会うモンスターはリサードが切り抜け、その後そのモンスターは姿を消す。
あたかも何かに吸収されるように……
モンスターの死体はどうなっているのだろう……
案内人役の男はそう思いながらも口にはしなかった。
心なしか黒剣がその度に鈍く光るように見える。
「あそこですね。」
「助かった。 ここまで教えてもらえば後は大丈夫だ。 悪いんだが、さっきの怪我人の手当てのところに戻って手伝ってくれると助かる……。」
「……承知しました。 リサード様、ご武運を……。」
「……ああ。」
そう言うと、リサードは恐ろしいスピードで追い越していく。
先程のスピードを更に更に越えていく。
そうしてグングンとスピードをあげると、前方に盛り上がった丘が、顔を出した。
ここまで来れば……
両足に思いきり力を込め、地面を蹴りあげ飛び上がる。
ミサイルのように飛び出し、上空から見下ろすと何人か案内人黒いローブを着た人がチラホラといる。
そうして、ほぼ一瞬で盛り上がった丘の所までたどり着く。
優しく体を柔らかくするイメージで……
リサードはそうイメージし、着陸の威力を押し殺し、素早くかつ静かに着陸する。
「………………………………。」
赤くひび割れた大地。 先程まで青々と生え茂っていた木々もここまで来ると枯れ木になっている。
あたりを見回していると、ローブの女が近づいてくる。
フードを深くまでかぶっており、顔は見えないがモジモジとしているのが伝わる。
「お、お待ちしておりましたリサードさん。 バズとドロア……、、あ、お1人でここまで……?」
そう言いかけて、質問を変える女。
多分……あの案内役をしてくれたあの2人だろう……
「あの2人は後で追いつくと思う。途中まで案内してもらって、俺は先に来ただけだ。 今は怪我人の手当ての方をしてもらってる……」
リサードがそう言うとホッとため息をつく。
「それより、ここの状況を教えてくれ。 どうなってる?」
「は、はい……。 先程からかなり地鳴りの頻度が多くなっています。 ……魔獣デミウルゴスが出現する場所は大方予想できていますので、そこに結界の準備を……」
そう言って、ある場所を見つめる。
リサードもそこを見てみると、
「……あの集まってる場所か?」
「はい……。」
人がある場所を囲んで、何かを唱えている。
囲まれた場所は想像していたのとは違い、扉や祭壇など''何も無い''。
言うなれば、ただの枯れた平野だ。
それにしても……
「……何か円が小さい気がするんだが、出てきた時踏み潰されたりとかしないのか……?」
ある場所を10数人で円を作り、囲っているのだが、いかんせん小さい気がする……一軒家程しか無いのでは……?という疑問を尋ねてみる。
リサードがそう言うと女は首を傾げた。
「……小さい……ですか……?」
「え……? ああ、だってこの大陸最強みたいなやつだろ? そりゃあ……」
リサードがそう言いかけるが、女はボソッと告げる。
「……デミウルゴスは私たちとそんなに変わらない、人型ですので……」
え…えぇぇ……?!
「え? マジか……。あ、そうなんだ。」
先言っといてくれよ!!?!?!
てか……あー……マジかとかそうなんだとか言っちゃった恥ずかしい。
そう思いつい顔を赤らめてしまう。
すると、女はそれを見て緊張が少し緩んだのか、我慢に耐えきれなくなったのかは知らないが、申し訳なさそうにリサードに話しかける。
「あ、あのー……失礼します……」
「はい……何でしょう……。」
深呼吸をする女。
「き、着替えた方がいいと思います!!!」
そう言ってバッと顔を隠す。
「……え? 俺何かー……」
そういった所で、リサードも気づく。
ボロボロに破けた服。タダでさえ、囚人に着せられる服なのだから至って簡素な仕上がりだ。 その服でゼーノスと戦っていたのだ。そりゃあ……
「す、すいません!!! き、着替えてきます!!!」
「い、いえ!こちらこそ!!!」
2人は顔を真っ赤にして、後ろを向き合い、そのままリサードは1度丘を降り影の方に隠れる。
よく見れば見るほど、今までよく気にならなかったものだ……と感じる。 最低限度のところは隠れているが、上半身は服として機能しているのかすら怪しい。
何か着替えなくては……
「……とは言ったものの……」
最後に確認した時の持ち合わせは七星剣の制服ぐらいだっただろうか。 作ってもらったバッドステータスてんこ盛りの民族衣装は戦いでボロボロ&糞まみれでテイラーに返してしまった。
七星剣の制服……
そう考え〈インベントリ〉を開き、〈リサードのBOX〉を選択する……
が、────
〈空のBOX〉と表示が出る。
「……ハァ………………………。」
やはりと言った様子でため息をつくリサード。そりゃそうだ。 俺はついこの間まで、デスペリア監獄に囚われ、武器や防具、その他アイテムは全て取られている……。
「……どうしろって言うんだよ……。」
ボソッそう呟き頭を抱えるリサード。調合で簡素な服でも作るしかないのか……?
そう考えていた時だった。
────ガサッ
「…………ん?」
……誰か来る?
黒剣の鞘に手を起き、警戒するリサード。
すると、黒のローブを着た男が現れる
だが、すぐにその正体は分かった。
「……リサードさん。 お久しぶりです。」
ローブのフードを下ろすと、爽やかに切りそろえられた黒の短髪が現れる。ほっそりとしており、優しそうな顔立ちを見せる青年。リサードは彼を知っていた。
「……ッッッテイラー?! 何でここに?! てか今まで……」
だが、再会を懐かしむ間もなく、ある予測が頭をよぎるリサード。 頭を一瞬で冷やし、戦闘態勢に切り替える。
「……何の用だ……?」
すると、両手を伸ばし「話を聞いてください!」と慌てるテイラー。
リサードは辺りを見回し、誰もいないことを確認すると黒剣を収める。
しかし、完全に気を許した訳では無い。
「……もちろんリサードさんがそうなるのは当然です。 リサードさんがデスペリア監獄に捕まり、クロエ王女様が囚われたあの日……。 その馬車を引いていたのは僕ですから……」
顔をうつ伏せる。
「ゼーノスの作戦に加担していたと思われても仕方ありません……」と申し訳なさそうに話すテイラー。
リサードはその様子を注意深く観察し、話を続けさせる前にある疑問をぶつける。
「続ける前に気になることがある。 今、クロエ王女……って言ったがあの時から既に、お前は知ってたのか?」
あの時テイラーは知らない素振りだった。 もし、その時から知っていたら何か隠していたことは事実になる。
だが、テイラーはすぐに否定した。
「い、いえ。 リサードさんが乗せた時はただの綺麗なお姉さんだと思っていました。 クロエ王女と知ったのはその後です……。 調べるまではわかりませんでした……」
そう話すテイラーの目をじっと見つめる。
嘘は言ってないだろう……
急に肩の荷が軽くなる。
「……はぁ、なんだ。 ただ、お前がヘマこいただけか……。 」
そう言って、ため息をつくリサード。リサードは人の失敗を責めるような事はしない。 むしろ、仕方ないと笑い飛ばすような男だった。
「……なっっ!!! 信じてもらえたのは嬉しいですが、納得いかないです!!! 絶対僕悪くないですから!!! リサードさんの日頃の行いでしょ!!!」
「……はぁ? 俺より日頃の行い、いい人いるのか?」
「……何言ってるんだか……。」
「ハハハハハっっ!!!」
呆れたように文句を言うテイラーに笑いをこぼすリサード。 それを見て、この人軽いなぁ……とついつい心配になるが、笑うリサードを見るとついテイラーも笑みを零し、笑い合う。
すると、途中でふと我に返り「あ、そうだそうだ……。」と思い出したように〈インベントリ〉を開くテイラー。
「……実はコレを……」
「……ん……? 」
そう言って取り出したのは、白の防具だった。
材質は硬いと言うより、服のような布生地のものだった。 上着は真ん中でボタンを占めるタイプで七星剣の制服に近い。 黒のボタンに、ボタンの横を黒のラインが駆け巡っているシンプルなデザインだ。 丈はヘソより少し下ぐらいで、短めになっている。
ズボンは白に黒いラインが入っているもので、至ってシンプル。 リサードにしては少しゆったりとした着心地になっている。
「これは……?」
「新しい防具です。 まあまあ、見てください!」
「お、おう。」
リサードがそう言うと、もう一つ装備品を取り出すテイラー。
「……靴……?」
「はい!」
こちらは先ほどとは逆に、黒をメインとしており、白のラインが入っている。
「……なんかスタイリッシュでカッコイイな。」
「そうでしょう!!!」
自慢げに鼻を鳴らすテイラー。
「……いいと思うぞ……じゃあ、返すわ。」
リサードがそう言うと驚いたような表情を見せるテイラー。
「……え?! いやいや、着てくださいよ! わからないでしょう?」
「え?! いいのか? 俺今、代金も何も持ってないぞ……?」
「自分が勝手に用意したんですからいいんですよ! いいから早く!」
「マジか! ありがとう! 早速着てくる!」
そう言って、森の中に入り木の影で服を着替えるリサード。そうしてパパパッと風のように着替えるリサード。
これぞ遠征討伐の地で身につけた早着替え……!!!
最後にボタンを閉め、靴紐をクイッとあげる。そのままガサゴソと出て、早速テイラーにお披露目しようと森から出ようとした。
すると、────
「ん……?」
何か既視感を感じる。 それに、なんだこの感じ……。 まるで、周り一帯の地形を把握できるような、感覚…… 。
とりあえず、テイラーのもとへ行ってみるか……
「……おい、テイラー……あれ?」
アイツどこいったんだ? さっきまでそこに居たはず……
「んん……?? まただ……」
何かが引っかかる。 目や耳や鼻ではない、何かの機関が俺に呼びかけているような……。
すると、ある空間が気になるリサード。
何だろうか……。 何も無い、なのに何故か誰かがいるような気がする……
頭のおかしい人と思われるかもしれないが、どうしても気になり声をかけてみる。
「……誰かそこにいるのか……?」
すると、────
「どうやら成功したみたいですね……」
その空間に突如姿を現すテイラー。
「……本当にいた…………。」
リサードはそうこぼしていた。確かに問いかけたのはリサード自身であるし、そこにいると感じ取ったのもリサード自身だった。
だが、裏切られたような感覚がリサードを襲う……
「はい。 今このハースハイトで最高技術のステルスを使ってここにいましたよ……。どうやってわかりましたか?」
何が起こったのかわからないと言った表情を見せるリサード。 どう伝えようか……。
「……何かこう……感覚……としか言いようがないんだが、その……」
「それですよ。」
テイラーははっきりとそう答えた。
「リサードさん、感覚と言いましたよね? それを待っていました。 僕達ははそれを〈大六感〉と呼んでいます。」
「大六感……?」
「はい、人間には本来習得できないものです。 犬や猫にはあるはずの無いものが見える、地震が起こるのを察知するなど、を能力として確立されたものです。」
「……………………………。」
リサードは、声を失う。
「その防具は、我がテイラーズ工房、最新作にして最高峰。 リサードさんが来ていた防具をベースに加工しリサードさんの専用に作り上げた一つだけのものです……。」
「……この防具に……あの……。」
リサードは防具にそっと触れる。 それはあたかも、防具に触れるというより、体の一部を触るかのような感触。
魔獣化と言う、新しい能力を持っていた防具をベースに……
と言うことは────
テイラーはフフンと鼻を鳴らし、自信を持った目で言った。
〖「その防具達の名はテイラーズ・ビースト。 その防具一式の効果は、新・魔獣化です。」〗
────────────────────────────────────
遅くなりましたが、宜しくお願いします。




