29話 絶対に許さない
前回の続きです!どうぞ!!
ハースハイト王国にはROR、通称ロアと呼ばれる医療機関が存在する。
パンプキンロードとの戦いで傷ついたキラを癒してくれたサラ。彼女は、ロアの構成員の中でも名高い名医でキラはよく世話になっていた。いつも、夜遅くまで医務室にいる彼女がいない事をキラはゼーノスを前にして考えていた。
アイツになんかされてねぇだろうな……。
「キラ、何をそんなに心配してるんだい?」
あたりを注意深く観察しているとゼーノスがふざけた態度で語りかけてくる。
「あぁ……?」
ギリッと剣を握り、構えを崩さないようゼーノスの目を見る。
キラがわかったことは目が蛇のようになった奴の目を見ると動けなくなること。
それ以外の時は目を見ても何も起こらないこと。
肉弾戦も強く、魔法を無効化にするリングを左手の中指につけて、戦闘に使ってくること。
この3つの情報がキラの持ちうる情報だ。
今キラは普通の状態のゼーノスと目を合わせて、特に何も無いことから2つ目はほぼ実証済みだ。それに、左中指に見たことのないリングをつけていることから3つ目も信頼できそうだ。今の状況から見てわかるのは、この情報はなかなかに信憑性が高いという事だ。
まあ、なかなかヤベーのがこの情報の提供者が……
「ククッ……サラならここにはいないさ……」
「あ????」
サラって事なんだよ……!!
「ククッ……」
「チッッ……」
舌打ちをして、飛び出すキラ。
9割、いやもう確実に……サラは俺にこの情報を流したことがバレてると考えた方がいい……
今朝聞いたばかりなのに、早すぎねぇか? このクソジジイィィ
聖剣を振り下ろし、三日月のような太刀筋が浮かびあがる。
しかし、それをゼーノスは避けもせず、笑った。
「いいフェイクだ! ただ、少し力の入れ方にわざとらしさが目立つな。」
聖剣がゼーノスの体に傷を作ることは無かった。聖剣はゼーノスの右手に掴まれ動かない。
その通り、この1振りはフェイク。だが、誤算だったのは本命の足先から伸びた毒針だ。伸びた毒針は左手で捕まえられており、またゼーノスが1振りを避けた時用のトラップは不発に終わっていた。
トラップまですべて不発かよ……。
確かに、情報通りこの筋力に加え、この洞察力……
「なるほどな……。」
そう言って、聖剣をゼーノスの右手から引き抜き後ろに下がるキラ。
「すぐそこの森へ行こう。 そこだったら君も本気を出せるんじゃないのかい?」
そう言って、後ろを向けるゼーノス。
何を企んでやがるかは知らないが、それは好都合だ。
「そうだな。 じゃあ、お前から降りろ。」
そう言って窓を指さすキラ。
「後ろから不意打ちなんかするように見えるかい?」
「そう言ったんだよ。」
「ヤレヤレ……」
そう言って、窓を開けるゼーノス。夜風がフワッと入り込み、ゼーノスの香水の匂いが鼻に届く。足を乗せるとそのまま宮殿の3階から飛び降りるゼーノス。
遠くで着地の音を確認する。
「……………………。」
不意に提案してきたことに対して、何か気にかかる。しかし、その考えを振り切り、キラも足をかけ勢いよく飛び降りる。そうして、着地の音がした場所を見る。
が────
あれは……? エドワー……?
「ガハッッッッ」
「オラァ!!」
飛び降りているキラの頭が激しく揺れる。脇腹に稲妻のような衝撃が走り、視界が反転する。
その最中、キラの目に映ったのは……
「ゼーノスゥゥゥゥッッッ!!!」
気をなぎ倒しながら森の奥へと飛ばされるキラ。
飛んだふりして2階にいやがったのか……
「不意打ちするってわかってるんだったらくらうなよキラァ???」
着地の音は、エドワードを下に投げつけた音かよ……
ていうかなんでエドワードが……この野郎ッッッ
「そーれ、もう1発くれてやるよォ!!」
ゼーノスは2階から飛び降りると着地せず、壁を蹴り弾丸のようなスピードでキラを追う。
地面を削り止まったキラの視界はブレブレで、肋骨は砕けているかのような、激しい痛みを訴えてくる。
────が
「ここに命を宿せ……」
何もせず2発目を待つキラではない。
「毒クジラダケ……」
キラがそう言うと、キラの地面の前からクジラのように大きなキノコが一瞬で顔を出す。毒々しい色をした巨大なキノコの鉄壁が完成した。
コイツは、その弾力性とその根を張る力は一級品だ。
「小賢しいなァ……」
そう言うと、蹴りの構えをとるゼーノス。
「破蹴……」
弾丸のようなスピードで毒クジラダケに真っ向から蹴りをいれる。グググッと蹴りを耐えるが、いともたやすく笠を破り、ゼーノスが姿を現す。
余裕顔で破りやがって……バケモノ野郎が!!
「チッ……だったら!!」
キラはそう言うと、手をゼーノスに向ける。
威力は幾分か落ちたはず……
無系魔法────
「学習しろよキラ? ロスト・アビリティ!!!!」
魔法が消えるんだろ? 知ってるぜ?
だが、、、
お前の体を強化してる魔法も消えるは……
────ズドンッ
「ゴプッッッ」
キラの視界がまたもや反転する。
そんな………この威力は………
ゼーノスのふざけた声が耳に伝う。
「残念♪ これ魔法じゃないんだなぁ?」
く……そ……
吐血し、その場に膝をつくキラ。
しかし、以外にもゼーノスはその姿を見て笑いはせず、呆れた顔を浮かべた。
「はぁ、飽きたよ……。 エドワードの方が幾分かマシさ。」
「………………………………。」
何が、エドワードの方がマシだ…だよ。 早くエドワードを治療しねぇと……。
キラはそんなことを考えていた。
それを上から見下ろす。
「おい聞いてるか? キラくん?」
「………………………………。」
「おい……」
そう言って、頭を足で踏みにじる。
だが、ふとキラの反応があたかも死人のように動かなくなる。
「なにか最後に言いたいことあるかい?」
「…………………………………。」
ゼーノスがそう問うが、キラは独り言のようにブツブツとうなだれているだけだ。
もう壊れてしまったのか……。 コイツはつまらんし、いられると詮索が面倒だし、殺しておいてもいいだろう。
めんどくさいのは、後で死因を考えなくてはならない事くらいかな?
「……ばいばい♪」
ゼーノスの右足が高く挙げられる。
そして、振り下ろされる瞬間────
ゼーノスの耳に独り言が入ってきた。キラの口から零れたフレーズ。ゼーノスはそれを聞き逃さなかった。
「呪いよ。 奴を暗黒の世界に誘い給え……」
詠唱だと?! この雑魚がァ!!まだ諦めてなかったのか!!
この状況ならロスト・アビリティを使うより、蹴りの方が早いわ!!
「破蹴!!!!!」
「インビジブル……」
ゼーノスの蹴りがキラの体にめり込む、キシキシッと唸りをあげる感触が脚から伝わる。
ククッ……こりゃ発動する前に、決まっ……
「ウグッッッッッッ!!!」
ゼーノスの蹴りが振り切る前に止まる。
ゼーノスの途中まで放たれた蹴りの余波で、キラの体が反動で木にぶつかり体を強く打つ。
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッッッッ!!!」
両目を抑え、そう叫ぶゼーノス。両目から血が流れだし、視界を暗黒に染める。
「キラァァァァァ!!!!」
「……は……ざまぁ……みや……がれ……」
キラが詠唱したのは半径1m内の毒を操作するという魔法だ。
不意打ちの蹴りを食らったとき、お前の足に打っといたんだよ……
呪い草のトゲをな……
痛みを感じさせず、肉眼では見えないほどの針で、ピンポイントにしか毒性を与えられない。
だけど、使い方によっては……
目だけ潰すみたいなのには最適だと思わねぇか?
ゼーノスは憤怒し、声を荒らげる。
「クソッタレがァァァァ!!!!!」
蹴りを適当に振り上げるゼーノス。しかし、 運悪くその適当に振り上げた蹴りの先にキラはいた。
恐らくもう一度喰らえば俺は死ぬ……
けど、目が使えないお前は死んだも同然だ。
はは……ざまあみやがれクソ野郎
…………。
だが、キラには心残りしかない。
ゴメン。シルビア……。
後は頼んだ…………………………みんな。
そうして、目をつぶるキラの脳裏に声が聞こえた気がした。
「諦めてんじゃねーーーっっ!!!このバカーーーーっっ!!」
目をつぶったまま頭の中でつぶやく。
ははっ……幻聴でもうるせー女だな……
だが、徐々に声は大きくなる。
あれ……? 幻聴じゃ……ない……?
「ふっざけるなぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
雷系魔法────
「アンゴル・モアァァァァ!!!」
空に紫色に変色した電気の玉……
おいおい、シルビア。コレは俺もまずくない???
すると、後ろから掴まれ抱き上げられる。
「………う……ぉ……。」
「喋らないでください。 かなり深刻です、すぐに手当しますので暴れないで。」
「…………………………。」
お前は……さっきの女……。
強化系の魔法を使っているのだろう。 軽々とキラを持ち上げたと思えば、すぐに移動し、テキパキと回復魔法で傷を癒す。
耳や口、目などの重要な機関が少しだけ使えるようになるキラ。
そうしていると、少し離れた所でゼーノスとシルビアの声が聞こえる。
「おい!どこだクソがァ!!ぶっ殺してやる!!」
「アンタの相手はあたしだっつってんだろーーっっ!!!」
紫色の電気の塊から雨のように、雷撃が降り注ぎ、ゼーノスの体を撃ち抜く。
「邪魔しやがって……おい女、必ず探し出して殺してやるからな……?」
「やってみろーーっっだっっ!!!!」
「ロスト・アビリティ……」
「あれ……?」
電撃を蓄えた玉が消える。
「気配でも、大体の位置はつかめるぞ、このクズが」
「あわわわわわっっ!!!」
完全に青ざめるシルビア。
そして、そのやり取りを遠くで聞き、焦るキラ。
「……は……やく……。」
「そんなことわかってます!!!でも、」
回復魔法を全力で使っているにも関わらず、ロスト・アビリティの余波が回復魔法を弱めていて、うまく作動していない。
すると、ゼーノスの声が飛び込んでくる。
「いるんだろォォ!! クロエェェェェッッッ!!!!」
「────?!」
その声に反応し、クロエの体がビクッと揺れる。
「俺の目を治せぇぇ!! いるんだろうがァ?! 早くしろォォ!! また、拷問されてぇのかァ!!!」
「うるせーーっっ!!クロエッッ無視だよ無視ーーーっっ!!」
「………………………。」
シルビア……擁護してるのは伝わるんだが……
それじゃクロエがいるって言ってるようなもんだろうが……
そう思いながらも、クロエを気にかけるキラ。
僅かな目の隙間から、クロエの顔をのぞき込む。
すると、────
ガチガチと歯を鳴らすほど震えており、回復魔法が止まりかけている。
一体どんなことされりゃ、ここまで恐怖を植え付けられんだよ!!
「私……は……。」
「…………………………。」
目が遠くのゼーノスに釘付けになり、とうとう回復魔法が完全に止まる。
「行きたく……ない……のに……」
震えたままゆっくりと立ちあがるクロエ。
そして、追い打ちのようにゼーノスの罵倒がひびきわたる。
「クロエェェェェェ!!! 早く来ないと殺してやるぞォォ!!! 貴様の大事なもの全てグチャグチャにして、叩き潰してやんぞォォォォォ!!」
「黙れ!!クソジジイーーっっ!!」
それを聞いて、カッとなり口を出すシルビア。
それに、ピクッとゼーノスの眉間にシワがよる。
「小娘がァァァァァ!! 生意気な口を利いてんじゃねぇぞ!!! 」
メキメキと木を持ち上げたかと思いきや、シルビアに投擲する。
「…………………………!!?!」
当たりはしなかったものの、横をかすめる。
お返しに、シルビアが魔法を絶え間なく放つが、ゼーノスのロスト・アビリティでかき消される。
「あわわわわわ………!!!」
「…………………………。」
それを見て、いち早く助っ人に行きたいキラだったが、クロエの反応を気にかけていた。
先ほどの光景を見て更に、ガチガチと震えが強くなっていくクロエ。足がゆっくりとゼーノスの方へ向かっていく。
コイツは………。
だけど……
「おい……」
「────?!」
キラが不意に足を掴む。
迷ってる暇はねぇ……
一か八か……お前の心にかける。
足を掴む手に力を込める。
「お前はまた……あそこに戻るのか……?」
「………ッッ!!」
「言ってやれ……」
キラが目をつぶりそう呟く。
………………………………。
やっぱりキツイか……とほんの少し目を開け、クロエを見る。
だが────
「…………………………。」
「────?!」
そこには涙を流し、ゼーノスを見るクロエの姿があった。そして、その涙は一瞬の出来事であったかのように拭われ、今まで見たことのない強い目をした女が立っていた。
「ありがとうございます。 キラさん。また、戻るところでした。」
そう言うと、もう震えは止まっていた。
なんだよ……俺なんかより全然強いじゃねぇか……。
「もう大丈夫みてぇだな。」
「はい。」
そして、女はきちんとした足取りで二人に近づく。
シルビアもクロエを見て何かを察知する。
それは、ゼーノスも例外ではなかった。
「ああ??」
女は立ち止まると息を吸いこみ、こう言った。
「ゼーノス!!!!!よく聞きなさい!!!!!!」
それはクロエの持てる一番大きな声と、心の声だった。
「私はあなたが怖い! 今までずっとあなたに虐げられ、皆からは腫れ物のように扱われ、私に関わった人たちはあなたのせいでみんな不幸になっていった! だから、私は誰とも関わらない……そう決めていた……」
女は顔をあげ、ゼーノスから目をそらさなかった。
「でも、それはもう終わりにします……」
あなたの言葉をお借りします……。
力を貸してください……リサード君……
────スゥッ
【「私は、他人の不幸笑うあなたを……絶対に許さない!!!」】
「っっ…………………!!」
「おお…………………!!」
シルビアの表情はにこやかになり、キラの顔もまた闘士が灯る。
だが、一人の男は二人とは反応が変わっていた。
「…………………………………………………………………………。」
長い沈黙が続き、ゼーノスの動きが止まる。
だが、その次の瞬間その男はゆっくりと口を開いた。
「俺は……かつて本気でキレたことは無い……。今までの……かつて1度もだ……」
男の身体の所作、声は妙に静かだった。
「だが……」
「こんなに人をグチャグチャにしても足りないと感じたのは生まれて初めてだァァァァァァァァァッッッッッッッッッッッッッ!!!!!」
血で塞がっていた目がギラっと開き、爬虫類のような目が現れる。
デミウルゴスに取っておく予定だったが、変更だ。 それに、出てきてしまっていては遅いか早いかの違いというものだ!!!
更に、体にビキビキと鱗のような硬い表皮が現れ、手の爪、そして牙のようなものが生えてきた。
«覚醒変化»
「「「……………………………。」」」
誰もその光景から目を離せない。
だが、クロエの目はまだ死んでいない。
『おおい、クロエェ??』
「はい……………………!」
ゼーノスの目とクロエの目がパタリと合う。しかし、目は話さずしっかりと返事を返すクロエ。
『役立たずが……死ね……。』
今の彼女は、覚醒したゼーノスを前にしても、揺らぐことはなかった。
「私は死にません。 リサード君を助けるまでは!!」
ゼーノスの頭の血管がさらに浮き出る。
言ってくれるじゃねぇかァァァァァ!
怒りが更に増すゼーノス。
『ガアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!』
ゼーノスの咆哮に応じるかのように、地響きが鳴りだし、空気が歪む。
そして、ゼーノスの口の先に全ての色をかき混ぜたような、球体と呼ぶにはイビツな形をしたものが現れる。
あれを……使わせちゃまずい……!!
それを、シルビアも察したのか魔法を放つ。
「アンゴル・モア!!!!!」
紫色の球体を丸ごと、ゼーノスに向け放ち、爆音と雷撃が散らばる。
「くらえ!!!!」
おい、こっちにまで来るぞ!!!
「バリアリーフ・ハイプロテクトォォォ!!!」
「キャッっ……」
二人を襲う雷撃の破片を、巨大なサンゴを具現させ受け止める。
危ねー……。けど、ナイスだシルビア!!
「ハァ……ハァ……」
力を使い切り、地に倒れ込むシルビア。
リングで魔法の無効化はされなかった。 あのゼーノスでもコレをまともにくらえばさすがに……
そうして、砂煙の奥をのぞき込むシルビア。
だが、そんな期待とは裏腹に冗談のような景色が広がっていた……
『…………………………。』
打つ前と変わったのは、ゼーノスの周りの地形と服に傷が付いているぐらいで、口の先に貯められたエネルギー弾もそのままに残っていた。
「そんな…………………。」
シルビアの目から光が失われていく。
そんな中、ゼーノスの目だけギョロッと動きシルビアを一瞥して、また目線をクロエに戻した。
まるで、飛んでいる蚊を気にしているだけのように……
ますます、自体の緊急性を再度確認するキラ。
「もっと早く出来ねぇのかクロエ??!」
「精一杯やっていますが、内部の損傷が強くて……」
「クソッッッ………………」
焦りと、その光景がさらに二人の精神を蝕む。
そこに、追い討ちをかけるように時は動き出す。
────ギュボッ
エネルギー弾の完成の音が、響きわたる。
は、早すぎるだろ!!!
「ッッッッッッアアアアアアア?!」
ちくしょう!! 何も出来ねぇ!!!
キラが雄叫びを上げると、ゼーノスはニヤッと笑った。
『死んでもなお、永遠に使ってやろう』
喰らえ。
呪系破唱────
『ブラックアウト……』
唱えた瞬間、時が止まったかとような錯覚に陥る。
全てを飲み込むような一撃が、キラとクロエの方向に放たれる。
「ダメぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!」
シルビアの声は虚しく宙を舞う。
「ちくしょうおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
キラはプロテクトにありったけの魔力を注ぎ込む。
そして、
「聖なる祈りよ。 彼女に捧げたまえ。」
クロエは全ての生命エネルギーを
シルビアに向けて発動しようとしていた。
手をシルビアに向ける。
ゴメンなさい……。リサード君……。
私……
クロエは祈った。
最後にあなたにもう一度だけ会いたかった……。
だが、そう思い発動しようとした魔法は、途中で消えることとなる。
それは、静かに。しかし、ハッキリとその場の全員の耳に、聞き覚えのある声が届いたからだ。
────呪系技唱
この声……は……
「一式ィ……」
気づくともう既に上がっていた太陽に重なるよう、一つの影が浮かび上がる。
まさか……本当に……?
「遅せぇんだよ馬鹿野郎……。」
キラはそう呟くと、一気に力が抜けた。 だが、その目に諦めは無かった。
待ってたぜ英雄
白髪の少年はニヤリと笑うと、剣を振り下ろした、
「大白霧«大城切り»!!!」
大きな城を容易く両断しそうな、斬撃はゼーノスのエネルギーをキラとクロエの前で両断する。
ゼーノスの放った一撃は、地形と森を飲み込み、力を失い収束した。
「………………………………………………………………………………ッッ!!!!」
その場にいる全員が息を呑む。それは、ゼーノスも例外ではなかった。
「フゥ…………間に合った…………。」
「大遅刻だよ。バカ野郎……。」
「え……?!」
「そうだよっ! かっこつけてーっ!!」
キラとシルビアがため息をつく少年にそう話しかける。
そして、
「リサード……君……?」
クロエはそう口にしていた。それに対し、白髪の青年も向かい合う。
「ゴメンな、クロエ。 ……遅くなった……。」
「……………………………。」
その言葉を聞いた瞬間、涙が溢れ出すクロエ。
『貴様ァ……』
ゼーノスがそう呟き、構えをとる。 しかし、先程までその場を飲み込んでいた絶望のオーラはもうそこには無かった。
そして、白髪の少年はその声を聞き、ゼーノスの真正面に立つ。
『今更、出てきたところでテメェみたいな役たたずが……?!』
そういった所で、ゼーノスは言葉を失った。
それは……
「なんだ? 」
先ほどの優しい雰囲気は消え、雰囲気は人間のそれで無かった。
コレは……魔獣……?
『……………………………ッッッ!』
ここに来て初めて、ゼーノスの顔に恐怖がちらつく。
そして、それはゼーノスにとって初めてでは無かった。
そんな馬鹿な……。
ありえない……。
そして、ゼーノスは気づいていなかった。
「俺は……」
【「……他人の不幸を笑うやつには、絶対に負けねぇ……。」】
白髪の青年の目が、いつの間にか赤に変わっていることに……。
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深夜三時ごろ言っと書き終えた、小説の内容をすべて消しバックアップをとりました。急いで、バックアップを取ろうとしたのですが、結構前のバックアップしか取れなくて泣きました。当日の夜、ほぼ書き直しはもうコリゴリだ。
今回、遅くなり申しわけありません。これが終わったら半泣きで1日くらい寝て、復活しようと思ってます




