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生贄姫

自分はなかなか、ブラッドが好きなので早く出番が来て欲しいです。




月明かりに明るく照らされた草原の中、剣戟の音が響く。


「ぐっッ………」


『ヒャハハハハッ!』


しばらくの剣技の打ち合いの後、大きな衝突とともに距離を取り合う。


『オイオイ、どうしたよォ?威勢がイイのは最初だけかァ?』


そう言ってヘラヘラと笑ってみせる。


「お前こそ振り回してるだけだぜ?」


『オッホホ、言うねぇ?』


そう言うと距離を詰め、死神の様な鎌を振り下ろすパンプキンロード。

チッ…スピードは大したことねぇが、一撃一撃が重すぎるッ…


『防いでるだけじゃあツマンねェぜー?!』


この野郎、好き勝手いいやがって…


『俺様はこんな所で足止めくってられねぇんだよォ。だから、さっさと死ねッ!』


そう言って青い軌跡を描きさらに重い一撃を振り下ろす。

コレを食らったらさすがのキラも無事ではいられない。


だけどなぁ…


昼間に感じたあの恐ろしい覇気。

とてつもなく邪悪で、

それでいてとてつもなく暖かいエネルギー。


俺は一瞬で気づいたぜリサード。

俺の唯一無二のライバル、そして愛する女の惚れた男…


────────だから、


「俺もこんな所で負けてられねぇんだよッ!」


鎌を剣で受け止める。

ここは意地でも捌くッッ!

僅かに、ズレた軌跡がキラの髪を切り、紙一重で避ける。

間髪入れずに後ろに飛ぶように距離をとるキラ。

コイツにはトラップに使った毒は聞いていないと見た。

なら、また違う毒を試すだけだ。


「思い出せ。屍の丘に生えていたあのバラを。」


『あぁ?何言ってんだァ?…』


そう言って鎌を上に構え、走り出そうとするパンプキンロード。

しかし、足に大きな棘バラがまとわりついて動けない。

戦闘中にかけたトラップはうまく発動してくれたみたいだ。


『テメェ小賢しいんだよボケがァッッ!!!』


しかし、キラは冷静さを崩さない。


「危険植物デビルローズ。自らの毒を散らし、その生命を耕せ…」


キラの左手に毒素が構築され膨らんでいく。


────────弾けろッ!


「ベノムシャワーー。」



人ひとりの見込めるほど膨らんだ毒素が大きなバラを咲かせ、マシンガンのように猛毒を飛ばす。


「さぁ、コイツはどうだよ。」


『ッハァ、イイねぇ!!!!』


その場で動けなくなっているパンプキンロードを何百という弾が貫く。

だが、コレで終わるのは2流だぜ?


…ここだな。


「ドレインショットッ!」


パァンッという音ともに手から種を打ち込む。

種はパンプキンロードの腹に命中し恐ろしい勢いで根を生やし緑の蕾を実らせた。


『グぁッ…コイツはァァァァッ!』


「お?知ってるのか?優秀だぜ?」


そう言ってパチンッと指を鳴らす。


「そいつはニードルプラント。大量の血を取り込んだ後、毒を取り込み、寄生体に血の代わりに毒を流し込む。

また、身を守るために小さな衝撃で大きな針を咲かせ、猛毒の染み込んだ針を外部へ放出する。そして、そいつの最もエグいのが……」


そう言うと、バク転を繰り返し距離を素早くとるキラ。

その命への執念深さ…


「…寄生した生物が息絶えるまでそいつは咲き続けるのさ。」



毒バラが放つ弾がつぼみを刺激する。

その瞬間大きなつぼみがムグムグっと動く。

そして…


─────────ジャキンッッ!!


『ゴフッ!!…………』


つぼみから数え切れない針が生まれ球状の針玉となり、パンプキンロードの体中を貫く。

それだけでは終わらず、パパパパーンッと針を全方向に不規則に飛ばす。


「ヨッと…」


そう言って飛んできた針を一つ掴む。

ニードルプラントを撃ち込んだのはその凶暴性もあるがもう一つ理由がある。

それは、ニードルプラントが放つこの針だ。毒を外部に放出した際、寄生体の血液情報と抗体情報をも飛ばす。

もちろん、この針には毒が混ざっているのだが…


「俺に毒は効かねぇからな。」


そう呟くとガリッと針を噛み、毒を舌で転がし情報を摂取しようとする。

すると、


「んッ……コレは……?!」


───────────ブチブチッ


「なっっ……!」


ニードルプラントが寄生体から離脱したッ?!

パンプキンロードが息絶えたのか?

いや、それにしては早すぎるッ。


まさかッ…


『オォイ…よそ見すんなよォ?』


───────────ヒュンッ


立っていた場所から更に距離をとると、そこに大きな鎌がザクッと刺さる。

あそこまでやられてまだ動けんのかよッ…


「ハッ…腐ってもS級か…」


『次は俺様からのプレゼントだよォッ』


そう言うと右手を突き出し、手を広げる。

奴の攻撃はまともに受けたらマズイッ!

とりあえずここから──────


────────────グンッッ


「なっっ!?」


『クヒヒヒヒヒッ!』


足が鉛のように重てぇッ!?

重力系の魔法かッ!


『絶体絶命だなァ?しばらく動けねぇぜ?それはァ!』


俺としたことが油断しちまった…


『アバよ。新技で殺してやるぜェ…』


呪系魔法────────


俺だって…


『イービル・スパークゥ!』


俺だってこんなところで足止めされてたまっかよォォォォ!!!


「バリアリーフ・プロテクトォォォォ!!」


視界を覆うほどの雷撃が飛んでくる。

巨大なひらべったいサンゴ礁を無理やり具現し、受け止める。

しかし、このサンゴ礁は本来用途が違い、無理やりシールドをコーティングしたまでだ。


「ぐぅぅァァァッッ!!」


『いい気味だぜェオイ!!』


そう言って左手も前に突き出す。


『さっきはやってくれたからなァ!俺もマジでやってやるよォ!!』


呪系魔法───────────


『イービル・スパークゥゥ!』


両手で魔法を打ってきやがったァッ


「うがァァァァァァッッ!!!!」


『ヒャハハハハッ!必死こいていつまで耐えれるよォ?』


サンゴのヒビから雷撃が漏れてきやがるッッ!


手が焼け焦げ始め、ヒビはさらに広がり、雷撃が空間をも焼き尽くす。

袖はもう破け、そのまま雷撃を直で受け止める。


カッコわりいなぁ……俺は…


『悟った顔しやがって笑わせんなよォ!クッヒヒヒヒッ!』


更に雷撃をあげ、本格的にキツイ。もうサンゴがあるのか無いのかわかんねぇぞ…


ここで俺は……


『安心しろよォ!スグに全員お前のところに送ってやるからなァ?』


ここで…………


あ?…………………


「今なんつった……?」



俺はいっつもそうだよ……


クールに決まらねぇんだよ…



『あはァ?お前のお友達も死ぬから安心しろって言ったんだよォ?だから、早く…くたばれやァ!!』


俺が死んだ所で何も起こらねぇ。


俺がするべきことは…


どんなにカッコ悪くても…


生き延びてみせるコトだろッ


「泥臭く行こうぜぇぇ!!…」


『ああァァッ?』


最後の瞬間まで全力を絞り尽くす!!


うおおおおおおおおおっっ!!!


「プロテクト!プロテクト!プロテクト!プロテクト!プロテクト!プロテクト!プロテクト!プロテクト!プロテクト!プロテクト!プロテクトォ!…」


こんなのタダの気休めかもしれねぇ…


けどなぁ!!!!


「プロテクト!プロテクト!プロテクト!プロテクト!プロテクト!プロテクト!プロテクト!プロテクト!プロテクト!プロテクト!プロテクト!プロテクトォォォォォォッ!!!!!」


──────────ゴハッッッ


魔力切れで吐血が起きてきやがった…


でもッッ!!


「プロテク…ト、プロテクトぉ、プロテ……」


あと、少し…意識がぁ……


『悪あがきで死ぬなんて、カッコわりぃぃなァアアア??!!?』


言ってやがれ…クソや…ろ…



ああ、背中が焼けるほど熱い…

まるで、後ろからも焼かれてるみてぇ……


いや…コレは?!


────────魔力の感覚。


「いーや、カッコ悪くなんかないぞ!キラ。俺は感動したッ!!!」


『アアッ??』


エドワード…?!?なぜ?!


炎系剣技────────


「バーニング・ストライクォ!!」


大きな炎の塊がパンプキンロードに向かい焼き焦がしていく。


『邪魔すんなやァ!ゴルァ!!』


呪系魔─────────


『ガハァッッ………』


詠唱を唱えようとしていたパンプキンロードの後ろから氷の槍が放たれる。まるで鉄塔のような氷で串刺しになる。


「後ろには気をつけなさいね?」


氷系魔法────────


「ダイアモンドダスト・スピアー…」


『テメェら、ブチ殺……』


そう言いかけたところで目の前まで来ていた炎に包まれる。


───────フシュウゥゥ…


焼け焦げ、呆然と立つパンプキンロード。


『ブチ……殺…』


「してみなぁッ?!」


土系打撃─────────


「コメット・ブレイクゥ!!」


「カハァッッッ!!!」


彗星をも砕く、ハンマーの一撃をダメ出しで打ち込まれ、恐ろしい勢いで飛ばされる。


「シャーベット…アリエッタ…助かっ……」


「いやいや…」


そう言って手を横に降るアリエッタ。


「お礼ならあの子に言いなよ?彼女のおかげで私達はここに来れたんだから。」


そう言って指さす方を見るキラ。


ああ……


夢でもいいくらいだぜ………


こっちに走ってくる小さな影…


あれは………


「キラのバカーーーーッ!!」


シルビア……


ハハッ………本当お前ってやつはよ…


「…ありがと…な…………ドチビ…」


そう言うと気が抜けたのかドサッと気を失うキラ。


「キラッ!!しっかりしてキラッ!!」


「大丈夫だよ。安心して眠っただけさ。」


キラを揺さぶるシルビアに声をかけるアリエッタ。

それじゃあ…


「キラの功績。後は俺達が受け継ぐぞっ!!」


「ええ。」


「まっかせなさーい!」


エドワードの号令に返事をするシャーベットとアリエッタ。


「私もたたか…ッ!」


───────きゃっ!


シルビアがそう言おうとすると、長い黒髪の男にガシッと腰を掴まれ、持ち上げられる。


「ブラッド…2人は任せたぞ!」


「…………………………遂行する…………」


もう一方の手にはキラが抱えられており、恐ろしい勢いで森に戻っていく。

森の木々が恐ろしいスピードで通り過ぎ、弾丸になったようだ。


「待って、くださいブラッドさん!私が離れたら結界が…」


「…………………………問題ない。…」


「っでも!!…」


「………………俺が代わりに貼っておいた。それに…」


恐ろしいスピードで走っているのに息切れどころか、髪の乱れすらなく表情は依然見えないまま話す。


「…………………今の2人は足でまとい…………」


「っっ………。」


正論だ。

何も言い返せない。

キラはもちろんの事、シルビア自身も大きな結界で体力を消耗していた。


「……………それより、キラを頼む…」


ギュッと腕に力が入るのがわかった。

あの無口なブラッドさんもキラがやられて怒っている?


「分かりましたっ!キラのことは任せてください!」


みんなそれぞれの思いを持ってる。

私がワガママ言ってちゃだめだっ。


「……………………助かる……」


それだけいうと、さらにスピードをあげ森を駆け抜けて行った。




パンプキンロードは本気でキレていた。邪魔をされ続け、キラを逃し。

更にはここまで貯めた力をまた溜めなければならないことに。

それに、エドワードを見ていると無性にイライラする。


「俺と前あった時より断然強いな。それも魔獣の特性か?」


エドワードがそう呼びかけるが返事はない。


「話しても無駄だよ…。先手必勝だ!」


そう言ってアリエッタが走りだす!


「待ってッ!!」


走り出そうとしたアリエッタはシャーベットに止められる。


「何で止めるのさ!」


「私たちには聞くことがあるでしょ?」


そう言うと前に出る。


「あなたの目的を教えなさいッ!」


パンプキンロードはまるで中身が空っぽのように動かない。

もう朝が来るだろうか少し明るくなってきていた。


「やっぱりアイツ、なんも喋らないよ!やっぱりここは…」


『姫ェ……』


アリエッタを遮るようにパンプキンロードの声が重なる。


『ウウウウゥ………』


空気が固まる。

3人はその光景を戦闘態勢に入り、観察するように見た。


『生贄姫ェ…』


「生贄……姫…」



その単語を聞いた瞬間。

エドワードがハッとした表情になる。

まさか…


そして、絞り出すように続ける。



『俺の目的はァ………』



────クッヒヒヒヒッッ!



そうだゼェ……



不気味に笑うと揺らっと動いた。



『俺の目的はァ…そいつを食うことだァ…』


「はぁ?アンタ……ッッ?!?」


アリエッタがそう言いかけたところでまたシャーベットに止められる。

さっきから止めないでよっ!と文句を言おうとする。

しかし、シャーベットの顔を見て言葉を失う。


シャーベット……


「そう、、。」


シャーベットはそれだけ答える。

しかし、彼女の目にはもう迷いはなかった。


「交渉決裂よ。お引き取り願おうかしら?」


『ケヒヒッ…』


パンプキンロードは少しだけ笑う。

もはや言葉は要らなかった。大切なものを守るため、そして野望のため。

3人と1匹は合図も無く、だが、一斉にぶつかりあった。



夜明けが近くなり、朝がやってくる。

生贄姫。

彼女は今何を思っているのだろう。



運命の歯車に彼らもまた巻き込まれていく。




────────────────────────────────────















今回は相当長かったんじゃないでしょうか。

1話と半分くらいはあると思いますが、彼らも話したいことたくさんあるんでしょう。

では、感想やご意見などありましたらぜひ気軽にください。

ヤル気が出ますw

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