13話 覇王と英雄
エイプクイーンVSリサードの戦いはここまでとなります。
『あーん?アナタが私を殺すですって?』
そう言ってクスクス笑うエイプクイーンと呼ばれる魅惑の女王。ひとしきり笑うとペンダントをまた飲み込む。
『本気で言ってるんだったら笑えないわネ…♡』
そう言ってリサードを睨むが全く動じていないのかリサードは赤い目を開いたまま女王を見ている。
『不愉快だわ…』
そう言って不気味に立っているリサードを吹っ飛ばそうと突進を考える。
動こうとした瞬間、リサードが口を開く。
「さっきの阿修羅エイプはうまかったか…?」
それを聞きグッと突進を止める女王。
『そうネぇ♡最近はバブルス程の強さを持った個体を食べていなかったから、体に力がみなぎるわぁ♡』
「…魔獣は魔獣を食うことで力を蓄えるからな。」
リサードがボソッと呟く。
『別に魔獣だけじゃないのよ?♡むしろ魔獣同士は異質な変化が起きる可能性があるからあまりベターじゃないわぁ♡』
そう言うとニヤッとする女王。
『1番力が沸き上がるのは強い人間♡!魔獣は人間の魔力を食うことで力に変換できるのヨォ?』
『クヒヒッ…あなたを食べたら私はさらに強くなれるぅ!!!さらに、あの女も食べて力が蓄えられたら王都の人間まるごと食ってこの大陸の本当の女王になれるぅ!!!』
「魔獣は人間を食うと強くなれるのか…」
『そう!!!だから、私に大人しく…』
「…………………。」
興奮しきった女王。
そう言いかけた瞬間だった────────────
辺り一面の霧が晴れていく。女王の張った霧が何か巨大なオーラによって消えていく。
だが、女王はそのことに気づけていない。
女王の興奮を一気に覚めさせたのは僅かな声だった。
自分を遮った小さい声。その禍々しいオーラを放つ少年の言葉に全てを奪われてしまったからだ。
『あ……?』
「もう1度言おうか?」
赤い目の少年はニヤッと笑った。
「逆に…」
【「人間に食われる恐怖を教えてやるぜ」】
すると、リサードに変化が起きる。体から赤黒いオーラがにじみ、背中の骨剣に手を回す。
リサードの体から強烈な魔獣の香り。
彼は一体…
『やっぱりアナタ…危険だわ♡』
そう言うと恐ろしい勢いでリサードの背後まで回り込む。
『一瞬で食べてあげるッ!!!』
ガバッと口を開く。
『なっ……。』
しかし、リサードの姿が無い。
「どこを見てんだ?」
後ろからそう聞こえる。
バカな!私のスピードに付いてきている?!
『小賢しいワぁ!!!!!』
後ろに腕を振り、その衝撃波が森の木を削ぐ。しかし、その巨大な腕に仕留めた感触はない。
「そんなところにはもういないぜ。」
もう前に移動している…?!
無理やり体を前に戻す女王。
しかし、
「遅いよ。」
光系剣技────────
「クロススペクトル。」
骨剣が点滅のように光だし、そのまま女王の体をクロスに切る。
切り跡から光が溢れる。
それでも、女王の体を貫けてはいなかった。
女王は買い被っていたわ、と笑う。所詮すばしっこくなっただけじゃない!威力は全然大したこと…
呪系繰唱──────
『なぁッッ……??!』
「──────クロススペクトル。」
点滅の光が消え、骨剣の周りに黒いもやが出る。そして、間髪入れず、もう1度クロスに体を切られる。
クロスに刻まれた切り跡の光と闇が重なり大爆発を起こす。
『ゴハッッッ……』
8mの巨躯が恐ろしい勢いで飛ばされる。
そして、威力が地面を抉り止まった。
呪系…魔獣にしか使えないとされている系統の言われている魔法。厳密に言えば魔法ではない。 そもそも魔法はただの人間が付けた固有名詞でしか無い。
魔獣の原動力で有りながら、誰も扱えない力。
魔獣ですら意図して呪系魔法を操れる者はS級でもそう居ない。
まさに、王の才。
この力は魔獣の間でこう呼ばれていた。
『王の才………。』
何故やつに呪系魔法が扱えるぅ…!
『貴様ァ…。しかも、呪系繰唱とか言ったかァ?!…』
わなわなと震える女王。
シロもまた恐怖とリサードの凄さに震えていた。
魔法は唱え方によってパワーが違う。
繰唱…繰り返し唱える。そんな高等技術を呪系でやってしまった。
彼は、…
一体何者…。
女王が驚愕に打ち震えていると、ストっと女王の近くに降りてくるリサード。
そして、気だるそうに立つ。
「うるさいなぁ…わかってるって。」
『アァァァ?!………』
「はいはい。わかったわかった。」
『何なのォッ?!…』
誰かと話しているかのような口ぶりで独り言を呟く少年。女王など意に返さず、耳を掻きながら、まるで母にグチグチ言われている少年を思わせながら、歩いてくる。
この青年の変貌ぶりに何か関係しているというのか…?
何かが違う!コレは私の知ってる人間という生物ではない!!
女王は叫ぶ。
『貴様は一体誰だァァァッッ!呪系ッ?!しかも、それを操ったダァ?!ありえないありえないアリエナイアリエナイアリエナイーーーッ!』
狂ったように叫ぶ魅惑の女王。
無理もないだろう。今まで生まれてきて初めての恐怖と驚愕に挟まれ、女王自身、現実なのかすらわかっていない。
シロはこの違和感を必死に考えた。
理由のわからない違和感。
しかし、それを納得させるには女王の質問が一番近かった。
「当たり前のこと聞くんじゃねぇよ…。」
リサードの赤い目に光が宿る。
『貴様ァッーー!!』
「よく聞けぇ、魔獣''共''!俺の名はリサード・ブルオストォ!!」
森中に響き渡り、近くから見ていた魔獣、クワトロエイプの残党、阿修羅エイプたちが理解できるはずもない。
しかし、彼らは本能で感じ取った。
いや、取らざるを得なかった。
圧倒的なまでの覇気。
その、覇王の気質は大陸をめぐり、全ての強者は感じ取ることとなる。
「そしてぇッ、俺はァ!!」
────────────覇王誕生の瞬間を。
「人の不幸を笑うやつには絶対に負けねぇぇぇッッッーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
『この糞ガキがァッーーーーーーー!!!』
呪系''絶''唱────────
「サモンズゲートッッッ!!!」
青い扉に金の紋様が描かれた扉が出現する。
魔獣召喚────────────
「大魔獣ヒュドラァァァッッッーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
ウゴォォォォォォォォォォッッ!
地の底から、体の芯まで震えるような咆吼が襲い、9体の蛇の龍が大きな扉から現れる。
『ギャアアアアアアアアアアアアァァァッッッーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!』
リサードの手から大きなゲートが開き、顔を出した蛇龍は女王の体にいっせいに牙を立てる!
「…………………………………………。」
女王は跡形もなく喰らい尽くされると、ゲートと共に蛇龍も消えていく。
「……ご馳走様でした。」
リサードの声だけが空に響く。
そして、後にその光景を身を潜め全てを見ていた女性は語った。
《リサードは私の英雄です。》 …と。
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引退を決意し、夢見る青年リサード・ブルオスト。
だが、彼は同時に様々なこんなに巻き込まれていく。
静まり返り、平地となった森の中、彼は改めて思う。
俺はいつになったら剣士を引退できますか?
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最終回のように見えますが、まだまだ続けていこうと思ってます。コレは1章の区切りみたいなものだと思ってもらって結構です。




