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04 魔法が使えない!?

現在いるのは、森の中で少しあけた場所だ。そしてすぐ目の前には、川が流れている。魔法の練習で森を燃やしてしまうわけにもいかないので、水が近くにあるところを選んだらしい。


「それでは、訓練に入る前にこの世界の魔法について軽く説明しようかの。」


いきなり実践で覚えろとか言われなくてよかった。まずはちゃんと基本から教えてくれるらしい。


「まず基本の属性魔法じゃが、『火』、『水』、『風』、『地』の4つじゃ。」


「回復魔法とかはないのか?それに転移魔法はどういう扱いなんだ?」


「回復魔法は光魔法にあたる。まずこの属性を持っているものはかなり少ないし、その数少ないもの達も国か教会に囲われておるの。さらに転移魔法は空間魔法にあたり、さらにレアじゃぞ?」


そう説明したミューの顔はどうだと言わんばかりに得意気だ。やはりミューは見た目はともかく、けっこう凄いやつみたいだ。


「さすがは女神の使い魔だな。」


「じゃろう?そんなわしに教えてもらえるんだから感謝するのじゃぞ。」


「はいはい、いつも感謝しております。」


「お主やはりわしを舐めておらんか?まあいい続けるぞ。そして人は生まれながらにして、自分に合った属性が決まっておるのじゃ。他の属性を覚えられん事はないが、魔力消費が激しい上に通常の力の十分の一ほどしか出せんのじゃ。」


なるほど適正以外の属性はまったく使えないと考えてもいいくらいらしい。


「まあ世の中には2つや3つの属性をもつ化け物もいるがの。1つでも属性を操れるものを、はじめて魔法使いとよぶ。この世界の住人は皆少なからず魔力を持っているが、攻撃に使えるほど魔力をもつ者は希なのじゃ。」


「じゃあ魔法使い以外だとモンスターと戦うのも苦労しそうだな。」


「そうでもないぞ?属性魔法を使えるほどの魔力がなくとも、魔力を身体強化に使ったりする事ができるし、熟練の者になると武器や防具に魔力を纏わせて闘ったりするしの。一流の冒険者や王国の騎士などには、そう言うもの達が多いのじゃ。」


やっぱりこの世界にも冒険者がいるようだ。貴族の令嬢なんかやってるより、冒険者として活躍する方が楽しそうだ。この町にも冒険者ギルドってあるのだろうか?異世界に来たからには外せないイベントだろう。


「なるほどね。ちなみに俺はどの属性になるか分かるのか?」


「そうじゃの、説明ばかりしていてもつまらんし、一度やってみた方がはやいじゃろう。」


そういうとミューは俺の足元までくると、しゃがめというので言う通りにする。


「では、手をだすのじゃ。」


俺が手を出すとミューが手?というか前足を重ねてくる。不覚にも一瞬かわいいと思ってしまったが、本人に言うと調子に乗りそうなので口にはしない。


「今のお主はまだ魔力回路が閉じている状態じゃ、魔力は生まれた時より量は決まっておる。だがいくら大きな魔力を持っていても、魔力回路が細ければ強力な魔法は使えんのじゃ。じゃから魔力回路を大きく広げていき、速く効率よく魔力を使えるようにするのが修行じゃ。」


なるほど、水に例えるとタンクにいくら大量の水があっても、そこを通す配管が細ければ一度に少量の水しか流れない。なのでその配管を大きくして一度に大量の水を流れるようにするということか。


「分かった。それで今からその修行をするのか?」


「違うその前段階じゃ、普通なら魔力を使えるようになるのも、それなりの修行がいるんじゃが、わしがその段階を飛ばしてやろうというのじゃ。」


大変有難い提案なんだが、それをやるのがこのミューだと不安になる。

凄いやつというのは分かるんだが、この見た目では仕方ないだろう。


「あの、疑ってるわけではないんだけど、大丈夫なのか?」


「安心せい!わしを誰だと思っておるのじゃ。では、いくぞ!」


「ちょっまだ心の準備が!」


そんな俺の抵抗も虚しくミューは始めてしまう。ミューからエネルギーのようなものを感じる。そして次の瞬間、何かが俺の体の中を駆け巡っていく。


「なっこれは!?」


「落ちつくのじゃ。ゆっくりと深呼吸せい。」


俺は取り乱しそうになったが、ミューに言われた通り深呼吸をして少し落ち着く。すると自分の中で魔力のような物を感じる。


「どうじゃ?魔力を感じることができたかの?」


「あ、ああ……これが魔力か。」


「だから心配ないと言ったじゃろう。」


「いやまあ……ハハハ」


疑って申し訳ないというのと、その見た目だから仕方ないんじゃ?という気持ちで複雑な俺は笑って誤魔化すことにする。


「よし。それではお主の属性を調べるとするかの。」


「おお!待ってました!」


「まてまて、そう慌てるでない。この水晶に魔力を流してみるのじゃ。」


そう言ってミューはどこからか水晶玉をとりだす。これも空間魔法だろうか。買い物とかに便利そうである。


「分かった。」


俺は両手を水晶玉を持って、目を閉じて集中する。体から魔力が流れているのが分かる。


「ほう!この色は……お主はどうやら『火』と『風』の2つの属性をもつようじゃ。さすがはイリス様の目にとまっただけはあるの。」


まあ凄いのはアイリーン・キャンベルのもともとの才能のお陰ではあるが、ここは素直に喜んでおこう。


「『火』に『風』かあ、よしさっそく魔法を使ってみたいんだけど、どうすればいい?」


「そうじゃの、魔法を使うのに呪文などはいらん、イメージとそれに見合った魔力を流してやれば発動する。」


イメージか…俺は火の魔法から使ってみることにする。バスケットボールくらいの大きさのファイヤーボールをイメージし掌に魔力を送る。するとイメージ通りに炎の塊が掌に出現する。


「これが、魔法…」


この世界に来て初の魔法だ。魔法の無い世界から来た俺としては、たったこれだけでもかなり感動した。


「初めてにしてはかなりの発動スピードじゃな。それではそのファイヤーボールをあちらの岩に向かってぶつけてみるのじゃ。」


「分かった。」


俺は再び集中して、掌のファイヤーボールを勢いよく飛ばすイメージをし、さらに魔力を込め打ち出す。


「ぼうっ!」


成功したかに思えたが、手から離れた瞬間ファイヤーボールは球状から形が崩れそのまま霧散してしまった。


「あれ?失敗か?」


「ふむ、おかしいのうファイヤーボールの形成は完璧じゃった。あとは飛ばすだけなんじゃが。」


「とりあえずもう一度だ。」


再び俺は集中し掌にファイヤーボールを作り出す。そしてもう一度飛ばすイメージをして…放つ!


「ぼうっ!」


「なっ!また失敗…」


どうゆうことだろうか、ミューの言う通りファイヤーボールの形成までは順調なのに、手から放たれた直後形崩れて霧散してしまう。それからしばらく練習を続けてみたが結果は変わらなかったし、風の魔法も同じような結果だった。


「どうゆうことだ?これは属性があってないんじゃ…」


「いや、そんなはずは無いのじゃ。そもそも適正のない属性だと、今のお主では発動すらせんじゃろう。」


「じゃあ俺に才能が無いって事なのか?」


あまりに成功しないので、つい弱気になってしまう。


「もしかしてなのじゃが………お主は間違いなく『火』と『風』の属性を有しておるし、魔力量もかなりの物をもっておる。それに魔法発動スピードもかなり速かった。」


「だったらなんでっ!」


「お主は魔法を放つことが出来ない性質なのかもしれぬ、過去に極僅かであるがそのような者がおったと記録に残っておるらしいの。」


「そんな……」


俺は突然魔法が使えないという現実を突きつけられ、あまりのショックに膝をつき座り込んでしまった。それはそうだろういくら属性を2つ持ち、大きな魔力があっても使えなければ意味がない。


「これが事実だとすれば、たしかに魔法使いとしてやっていくことは出来ん。じゃが戦う術なら無いわけではない。さきほど言ったであろう?」


さきほどの、ミューの話を思い出す。たしかにこの世界で戦えることができるのは、魔法使いだけではない。だが俺としてはやはり魔法使いになれないというのは、かなりショックなのだ。


「一流の冒険者や騎士か…」


「それに全く使えないわけではないじゃろう?要は使い方じゃ」


たしかにそうだ。全く発動しないわけではないのだ。なにかしら役に立てる事はできるかもしれない。そんなミューのアドバイスに一つ光明が見えてきた気がした。


「使い方か…確かにな。ミューには気を使わせちゃったな。」


「なに、これもお主の補佐役であるわしの役目じゃからの。」


そう言うとミューは顔を背けてしまう。どうやら珍しく照れているようだ。

そんな様子に俺はクスリと思わず笑ってしまった。


「なっ何を笑っておるのじゃお主!」


「いや悪い、悪い。でも最初の予定とは違うけど、魔剣士か……それも悪くないな。」


「ふむ、お主は一応貴族であるし魔騎士というところかの。」


「魔騎士ね…うん、それ気にいった!」


「それでは気を取り直して修行を再開するぞ!。」


「よし!やりますかー!」


紆余曲折あったが、なんとか進べき方向もハッキリした。この世界いろいろ危険もあるみたいだし、強くなって損はないだろう。それに中身が男の俺としては、やっぱりそういうのに少なからず憧れてしまうのだ。とりあえず学園に戻る前に出来るだけことはしておこうと思う。








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