05 メイドさんが変態だった件
あの後俺は張り切ったミューに魔力が枯渇する寸前まで、特訓させられた。
魔力で身体強化をしつつ、属性魔法を同時に発動する練習だ。俺は魔法を放出することはできなかったが、魔力の細かいコントロールに関してはかなりのものらしい。
「もう……だめ、一歩も動きたくない。」
すでに時刻は夕刻、俺は川原に大の字になって寝転がっていた。貴族の令嬢にあるまじき姿だが、今はミュー以外誰の目もないしかまわないだろう。
「ふむ、初日にしては頑張ったほうかの、ではそろそろ屋敷に帰るぞ、さっさと立つのじゃ。」
「う~まだ動きたくない。」
「さっさと戻らんと屋敷の者に気づかれるぞ。」
「ぐっ……そうだった。」
俺はミューに言われて、なんとか立ち上がる。疲労感からか少しふらふらする。
「ではいくぞ、捕まるのじゃ。」
そうして、俺はミューの転移魔法で再びキャンベル家の屋敷に戻ってきた。
改めて自分の姿を鏡で見ると所々汚れてしまっている。
「んーけっこう汚れちゃったな、やっぱり修行用に洋服も揃えないとな、剣も早く手に入れたいし。」
「そうじゃの、ドレス姿ではろくに剣も振れんだろうしの。」
「そう言えば剣の修行もミューが見てくれるのか?」
今日は身体強化の魔法や基礎練習に手一杯で、剣の修行は行っていないし、そもそも剣なんて持っていない。
「お主はわしが剣を振れるように見えるのか?」
「ですよね~、となると剣は他に教えてくれる人を探さなきゃだな。」
「まあこれだけ大きな都市じゃ、そういうものも探せば見つかるじゃろう。」
このキャンベル家にも兵士や騎士はいるが、公爵家次女である俺が魔法ならともかく、剣を習うなんて許してもらえるとは思えない。
「そうだな、そう言えばアイリーン・キャンベルが魔法の素質があったといのは、家族に知られてないのか?」
「うむ、アイリーン・キャンベルが大量の魔力を持っているのが分かったのは、女神であるイリス様だからじゃ、属性判断の水晶は魔力を込めんと判別できんし、まあ普通であれば学園や教会でも幼少の頃にみな訓練を受けるので、自分の属性や魔力量は把握してるもんなんじゃがのう。」
「ということは?」
「お主の魔力回路は初め完全に閉じておったじゃろう?まあめんどくさがって訓練をサボっておったのじゃろう。なのでお主が大きな魔力を持っていることは、わし以外誰も知らんことになるの。」
どうやらアイリーン・キャンベルは興味のない事に関してはとことん無関心であったようだ、まあどのみち魔力はあっても魔法使いにはなれなかったのだし、この世界の貴族の娘が騎士なんて目指すこともないらしい、平民には少なからず冒険者や兵士になる女性がいるらしいが。
「それじゃあ面倒だし、ミューに転移で連れていってもらって、バレないように修行だな。」
「まあ、そうじゃの。」
「明日剣とその先生探しに町に行ってみるか。」
まだこの世界に来てからこの屋敷と森にしか行ってないので非常に楽しみである。そんなかんじで期待に胸を膨らませワクワクしていると、ミューに注意されてしまう。
「お主明日の目的を本当にわかっておるのか?」
「もっもちろん。途中ちょっと町を見て回るだけたって!」
「まあ、本来の目的を忘れなければ問題ないじゃろ。」
そんな話をしていると、扉をノックする音がする、誰か来たようなのでミューが、俺の中に戻る。
「お嬢様、お入りしても宜しいでしょうか。」
「ええ、入っていいわよ。」
失礼します、と言ってメイドさんが入ってくる。銀髪の特に可愛かった娘だ、すると俺を見た銀髪メイドさんは、汚れたドレスを見て驚いた顔をする。
「お嬢様、失礼ですがそのお召し物は……。」
「え!?いやー部屋で運動していたら汚れてしまったのよ。」
「左様でございますか……。」
咄嗟に聞かれてかなり怪しい言い訳をしてしまったが、深く突っ込まれなくてよかった。うん、次回から気を付けよう。
「それでは、夕食の前にお風呂にお入りなったほうが宜しいかと。」
「そうね、そうさせてもらうわ。」
「ではこちらに」
そう言ってお風呂に向かうメイドさんについて俺も部屋を出る。公爵家の風呂だし、もと日本人の俺としては楽しみだ。
風呂場につくとそこはやはりというべきか、広く豪華な造りとなっている、
こんな風呂に一人で入るなんて贅沢な話だ、そんな事を考えていると銀髪メイドさんが「失礼します」と言って俺のドレスを脱がせはじめる。
やはり人に服を脱がしてもらうというのは緊張する。相手がこんな可愛いメイドさんなら尚更だ。そうして一糸纏わぬ姿にになった俺は風呂に向かおうとすると、後ろからごそごそと服を脱ぐ音がするのでふりかえる。
「ちょっなんで貴女まで!?」
「あの…さすがに洋服を着たままでは、お風呂に入れませんので。」
俺は銀髪メイドさんの裸を直視してしまい、思わず目を背ける。顔も真っ赤になってしまっていただろう。胸は可愛らしいサイズだったが、すらりと伸びた綺麗な手足に、白くてスベスベの肌………だめだ思い出したら余計顔が熱くなってきた気がする。
「そっそうねお風呂に入るのに服を来たままなんてありえないわよね。」
「はい。」
「でっでも今日は一人で入りたい気分というか。」
「いえ!なりません、これもお仕事ですので!」
「そっそう。じゃあお願いしようかな。」
一人で入りたいから、と暗に断ったのだが急に豹変した銀髪メイドさんの迫力に圧倒されて、つい了承してしまった。
「はい、かしこまりました。」
そしてお風呂に入る前に体を洗うのだが、もちろん自分でではなく銀髪メイドさんに洗ってもらう事になった。ここでまた抵抗を試みたのだが、銀髪メイドさんの迫力にまたもコクコクと頷いてしまった。
「ではお嬢様、失礼します。」
「ひゃっ!」
そして彼女が俺の体を石鹸を泡立たせて洗いはじめたのだか、他人に体を洗われる事なんて初めての俺は、くすぐったくてつい声を上げてしまった。
「どこか痛かったですか?」
「いっいえ、少しくすぐったかっただけだから。」
「そうですか?では再開いたしますね。」
ニッコリそう言った、銀髪メイドさんはまた俺の体を洗いはじめるのだが、
俺の弱いところを正確に攻めてくるのだ。この娘わざとやってないか!?
声を必死にころしながらふと振り替えると、そこにはこうおつとした表情で息を荒げながら主人の体を洗うメイドがいた。
「ちょっ、貴女なにしてるの!?」
この時俺はもうすでにアイリーン・キャンベルを演じることも忘れ叫んでいた。
「え?私はお嬢様の体を洗わせていただいていただけですが。」
俺が問うとしれっとそんな事を銀髪メイドさんはいい放つ。
「いやいや!あんなエロい手つきで、しかも鼻息荒くしながらとかあり得ないから!!」
もう後は自分でするからいいと言うと、一転して彼女は絶望の表情でこちらを見つめてくる。
「そんな!私はもう要らないと仰るのですか!?」
「いや、そこまでは言ってないけど……。」
「では!………。」
そう言って涙目で懇願してくる彼女に俺はキッパリ拒絶することができなかった。これも男の性であろうか、いや女なんだけどさ。
「わかったから!そんな目で私を見るな!」
「お嬢様!!」
そう言ってガバッと彼女が俺に抱きついてくる。
(なっ!?女の子の柔らかい肌が。………)
突然の事態に狼狽えてしまう俺だったのだが……こいつはどさくさに紛れて俺のお尻を撫で回していた。
「何をしている?」
「ハッ!すみませんお嬢様のお尻があまりに可愛くてつい………。」
そこには先ほどまで涙ぐんでいた少女の姿にはなく、テヘッという効果音が付きそうな顔をしていた。
「つい……じゃない!」
そんな彼女の頭につい俺はチョップをしてしまった。あまりの豹変ぶりツッコミを入れてしまった俺を誰が責められようか。
「うぐっ………お嬢様の愛が痛いです。」
そんなこんなで、そこからも激しい彼女との攻防が風呂場にて繰り広げられたが、なんとか俺は風呂から出ることができた。美少女メイドとの初の混浴がいったい何故こんなに疲れなければいけないのだろうか………。
風呂から上がった俺たちは、部屋に戻ってきていた。
「まったく、あなたがあんな変態メイドだとは思わなかった。もっと真面目な娘かと……。」
「お嬢様、変態とは心外です。」
「あれを変態と呼ばずになんと呼ぶ!」
もうすでに言葉使いもだいぶに素に戻ってしまっていた。
「お嬢様も、今のお嬢様が素なのですね。少し驚きました。」
「まあ…ね、そんなことより、今まではこんなこと無かったのにどうして急にあんな暴走を?」
以前のおれ、アイリーン・キャンベル本人にこんな暴走をするようであれば、とっくに首になっていたであろうからだ。
「いえその………お嬢様の反応が可愛くてつい。」
「ハァー。」
俺は大きくため息をつく。俺の反応に我慢しきれずに彼女の本性が現れてしまったようだ。思い出すとまた顔が赤くなってきてしまった。
「あの、お嬢様………私はクビでしょうか?」
まあ普通メイドが、主人にあんな事をしてしまえばクビだろう。だがまあ今回は俺にも少なからず原因があったみたいだし、多目にみてやろう。
「そんなことはしない。でも今後は気をつけるように。」
「お嬢様!私…リーニャはお嬢様に一生ついて行きます!」
そう言いながらまたも抱きついてくる、というか初めて名前を知った。
まああなた名前なんでしたっけ?とは聞きづらいので、この屋敷に居るなかで名前を覚えたのは家族くらいだ。
「ああ、これからもよろしく、リー………ニャ?」
全く懲りもせず抱きつきながらリーニャは俺の太ももを撫で回していた。
そして俺は当然彼女にチョップをくれてやる。
「うぐっ………暴力反対ですお嬢様。」
「なら、その変態行為をやめることだ。」
「………善処いたします。」
今の間わなんだと問い詰めたかったが今日はこれくらいにしておいてやろう、これから夕食もあるしな。
「よし、そろそろ夕食に行こうか。」
「はい、お嬢様。」
今日はいろんな意味で疲れたので早く寝ようと思った俺だった。




