ようこそギルドへ
とある元魔王に聞いた話では、この世界はとんでもない数の異世界人が居るらしい。
ある者は勇者を目指し、ある者は魔王を目指す。
もちろんそれ以外にも、王様になったり商人に成ったりする者もいるんだとか。
それは遥か昔から続いているみたいで、この世界には異世界の技術とか言葉が流入しているようだ。
そしてそれを行っているのが女神様だというからビックリする。
この世界を玩具箱にでもしているのだろうか?
でもそんな話を誰も信じる訳がなく、ギルドには平和な日常が続いていく。
『私女神ウェイリ―、家出したの。すぐ勇者を連れてそのギルドに行くから歓迎してね。あ、フデの人に言ってみて。じゃあよろしくー♪』
まあ以外と平和が続くこの町のギルドに、こんな変な手紙が届いたらしい。
軽く詐欺を疑う内容だったが、フデの名前が書き記されていることにスラーさんは違和感を覚えたようだ。
そして念のために僕を呼び出したという。
「ということで確認しに行ってください。一応彼も連れて来てくださいね」
「はい、じゃあちょっと行って来ます!」
給料やボーナスを貰ってウキウキリッチな僕は、仕事に身が入っている。
それを了承し、フデの居る部屋に走った。
扉を叩いてフデが出て来ると。
「という話があったんですけど」
僕は軽く説明を済ませて確認をとった。
「ふむ、それは本物かもしれんな。俺をこの世界に送った女神様の名前だ」
「本当にー?」
僕は信じられ無くて聞き返す。
「本当だよ!」
異世界から来たとかいまだに信じられないけれど、フデは本物だという。
僕はフデを連れてギルドに戻り。
「え~っと、じゃあその辺りに飾り付けでもしましょうか」
ギルド員の皆に指示を出し、ギルド内の飾りつけをしている。
まあ女神様が本物かもしれないという保険だろう。
「任せてくれ我が君、軽く取り付けてやろう」
「クーちゃん、この辺でいいかしら」
グリアさんとアーリアさんは、天井に飾りを取り付けている。
「まあ良いんじゃないですか? 適当ですよ適当」
女神が来るとか信じていない僕は、かなり適当に仕事をしていた。
スラーさんも特に何も言わないし、きっと僕と同じかもしれない。
「ヨメ、ワタシ、デキたー!」
「ミア、こっちもお願いね」
ミアさんとファラさんは飾りを作る係りをしている。
念の為とはいえ、表のギルドまで休ませる必要はないと思うのだけど。
「マスター、お茶を入れましょうか?」
「いえ、要りません」
スラーさんに媚びているのは、女神様の顔を知っているフデである。
もしギルドに来たら確実に分かるだろう。
ギルド部総出で作業を終わらせ、調理部隊が美味そうな料理を作っている。
もし女神が来なければ、僕達で食べられるかもしれない。
そんな考えが頭に過ったのだけど、早速ギルドの扉が開かれた。
「おまたせー!」
そう言った人物がたぶん女神様なのだろう。
フワフワの金色を腰まで垂らし、花のように可愛らしいドレスを着た女神様は、勇者らしき人物の腕に抱えられている。
僕はもう少し違う姿を想像していたのだけど、可愛らしいといった方が似合うお子様だった。
見る限り六歳か七歳か、まあそんなもんだろう。
確認のためにスラーさんがフデに目配せすると、頷いて本人だと知らせていた。
「いらっしゃいませ女神様、私はこのギルドのスラー・ミスト・レインと申します。どうぞよろしくお願いします」
「うん、苦しゅうないわ。こっちはミコトよ、よろしくね!」
女神ウェイリーは、ミコトさんの脇に抱えられたまま手をバタバタさせて喜んでいる。
「勇原命だ、よろしく頼む。俺が来たからにはこの世界を救ってやる」
やる気充分なミコトさんは僕より少し年上だろう。
背も高くて顔もカッコいいんじゃないかな?
動きやすそうな立派な防具を身に着けて、腰には綺麗な剣を差している。
世界を救うと言われても、特にピンチにはなっていないのだけど。
百眼の魔竜でも倒しに来たのだろうか?
それとももしかして。
「魔王ならあちらでーす、倒したいならどうぞー」
僕はフデを指さした。
「おい、生贄にするな。俺はとっくに足を洗ったぞ!」
フデは僕の言葉に怒りだした。
「あ~、フデの人だ~。ひさしぶりー!」
ウェイリーはミコトさんの脇から抜け出してフデの下へ走って行く。
そのまま飛び上がって、二人は手をパチンと合わせた。
フデという呼び名を知っているとなると、こちらの事情も知っているのかもしれない。
しかし、元とはいえ魔王と打ち解け合ってもいいのだろうか?
「それで女神様、このギルドに一体なにをしにいらっしゃったのでしょうか?」
フデはしゃがみ込み女神様と喋っている。
「あのね、こっちの世界にいっぱい人を送ったんだけどね、ちっとも魔王を退治してくれないからお姉ちゃんに怒られちゃったの。だからね、このミコトを立派な勇者にするために家出してきたの!」
ウェイリーは説明を続けている。
子供の活舌だから細かいところは分からないが、お姉さんに怒られて家出をしてきたらしい。
で、この男の人をこっちに転生させて勇者に仕立て上げたいという。
「ふむ、このギルドにいらしたということは、この町で職業登録するということですね?」
スラーさんはミコトさんに話しかけている。
「ああ頼む」
頷いたミコトさんを受付に案内すると、看板娘のリセルさんから、それぞれの職業を説明されている。
あとは提示された職業の場所に触れるだけだ。
「そうだな、俺が選ぶのはこのソード……」
ミコトさんが職業を選ぼうとしていると。
「ミコト―! だっこしてー!」
突然ウェイリーがミコトの背中に飛び乗った。
「おい、今大事な……」
その衝撃で指がずれ、ミコトさんは剣を全く使えないランスダンサーを選択してしまう。
どんな職業かといえば、名の通り槍を扱う職業だ。
「はい登録完了しました。ではこちらが冒険者カードです、大切にしてくださいね」
リセルさんは冒険者カードを手渡そうとするが。
「すまないがやり直してもらえないだろうか。選ぶのを間違えたんだけど……」
ミコトさんは気に入らないようだ。
たぶん本当はソードマスターでも選ぼうとしたのだろう。
リセルさんにやり直しを要求している。
「ごめんなさい、規定で変えることは出来ないんですよ。どうしても変えたいというなら三年後の更新の年になります」
「そ、そうなのか……じゃあこの剣はもう使えないのか?」
「安心してください、剣を使っても一切有利にならないというだけですから、使えないことはないですよ」
リセルさんから残酷な真実が告げられた。
「……ウェイリー、俺もうダメかもしれない、だって剣が使えないし」
ミコトさんは三年という時間に絶望感を覚えたようだ。
「大丈夫、だって大丈夫だもん!」
こうしてミコトさんはギルド所属の冒険者として登録されたのだが、この人が勇者に成れるのかは疑問が残る。
「え~っと、で、どうしましょうか?」
僕はうなだれるミコトさんを見てポツリと呟いた。
「ギルドの縛りを破る訳にはいきませんから。まあ三年ぐらい我慢してもらいましょう」
女神が連れて来た勇者だからといって、スラーさんは容赦がないようだ。
「さてお二人共、これ以上ギルドの歓迎は出来ませんから、この先は女神様といえどお金が必須です。宿も手配してもいいですが、当然家賃は頂きますよ。いいですね?」
「いや俺達転生して来たばかりでお金を持っていなくって……」
「私もってないよ!」
やっぱり二人共無一文のようだ。
「ではその剣を質に入れてしまいましょうか。どうせその職業では暫く使えないんですから、お金に変えた方がいいでしょう。安心してください、流れたりはしませんので、後々買い戻してくだされば大丈夫ですよ」
「それはありがたいけれど、ウェイリー、良いんだろうか?」
ミコトがウェイリーに尋ねるが。
「う~ん、わかんない!」
やっぱりお子様の頭では理解できないようだ。
「では決まりでいいでしょう。リセル君、お二人に充分な額のお金を渡してあげてください。そうですねぇ……一億ほどで手を打ちましょう」
『一億ぅ!?』
スラーさんの提示した額に、僕だけでなく全員が驚いた。
だけど剣は異世界の武器で、なおかつ女神が連れて来た勇者の物となれば、それでも安いのかも知れない。
きっと三年の内に色々調べて研究したりするんだろう。
というかこのギルドにそんなお金があったとはビックリだ。
「ぜ、是非お願いします!」
「う~ん、いいよ」
と、二人共納得したようだ。
そしてキッチリ一億が手渡され、二人は喜んでいる。
しかし本当に得をしたのはギルドなのかもしれない。
キラッと光るスラーさんの目に、僕は恐ろしさを覚えたのだった。
クー・ライズ・ライト (僕)
ミア・ミスト・レイン(元賞金首)
アリーア・クロフォード・ストラバス(管理お姉さん)
グリア・ノート・クリステル(お姉さんの相棒)
ランズ・ライズ・ライト (父)
ファラ・ステラ・ラビス(護衛の人)
フェイ・ステラ・ラビス(ファラの父親)
スラー・ミスト・レイン(僕の上司)
ディザリア・エルス・プリースト(破壊教)
シャイリーン・ブラック・ダイヤモンド(防御職の人)
デッドロック・ブラッドバイド(冒険者)
ミカグラ・ツキコ(デッドロックさんの相棒)
リセル・ラヴ・キリュウ (ローザリアのギルド受付)
フデ = インフェニティ―・ダーク・ロード・ウミノメ・キング・ジョージ四世ファイナルモード・ディスティニー(没落魔王)




