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ホームパーティ

 靖子さんはぱたぱたとお茶などの用意をしている様子。

 ああ。私なんかがお邪魔しちゃってよい空間なのかしら?

「……素敵なご主人、ですよね」

 自分が発した言葉に対し、なんともいえない孤独感が心の内側こびりついているのを感じる。私の肩も私の気持ち以上に恐縮しているみたい。

 なんでこんなに気持ちが落ち着かないのか分からない……けれど。失礼がないように応対はしなくっちゃ。

 

「ありがとうございます……実は……主人は以前、東京のホテルで修行していた事があるんですのよ」

「えー! すごいじゃないですか!」

 東京。どうりで……!

「いえ、まだ、先があるんですのよ」

「ホテル……の先……?」

「あの人ね、東京のホテルで修行していたのがお寿司屋さんなんですのよ」

「……お寿司……やさん?」

 確かにいなせなご主人だ。申し訳ないけれど、パン屋って言われるより百倍はしっくりくる。

「そうなんですよ! 実家は三代続いた江戸前のお寿司屋さんで!」

「三代! ……どうりでいなせな方だと思いましたわ……」

 ご主人の実家が江戸ってことは、入り婿さんなのかしら?

「いなせだなんて喜びますわ。照れてるだけで本当は褒められるの嬉しいんですから」

「でもいいですねぇ。美味しいパンに、お寿司までおうちで食べられて……」

 

 私の彼……というか今は「うちの主人」の幸一さんは、いろいろ器用にこなす人だけれど料理はほとんどやらない人。美味しいもの好きで、いい店はたくさん知っているんだけれどね。

 でも、それがよかったのかもしれない。

 もし彼が自分で作る人だったら……私みたいなそれほどとりえのない女の家によく来てくれなかったのかもなぁとも思ったり。

 あ、私、料理上手ってわけじゃないのよ。無難で、よくある味を作れるってだけ……って、なんかマイナス側に……違うの。だから、こういう職人さんのような料理をできる人に会うと、すごく尊敬しちゃうって思っただけ。

 ぐるぐると頭の中で言い訳している自分が恥ずかしい。

 

「そうなんですよ……だから、私自身はなかなか料理が上達しなくって……」

 靖子さんが照れ笑いを浮かべる。

「靖子さん、料理は慣れですよ。続けているとどんどん上達しますよ! ……あとで裏技レシピをいくつかお教えいたしますよ……たいしたものではありませんが」

 靖子さんの笑顔がさらに華やかになる。

 私、靖子さんたちに「返せる」ものをようやく見つけられたのかしら?

「わぁ嬉しいです! さっそく今日からでもお願いしたいくらいですわ。あ、どうですか? 今度、ご主人連れて遊びにいらっしゃるってのは……私、ホームパーティとかしてみたくって!」

「ぱーてぃ!ぱーてぃ!」

 えりちゃんが急に身を乗り出してくる。いままで見た中で一番高いテンション。

「そうね。えり、パーティ好きだもんね!」

「すきー!」

「小学校にあがるまでは毎年、クリスマスパーティしていたんですのよ」

「くりすますっ! くりすますっ!」

 えりちゃんが嬉しそうにはしゃぎだす。クリスマスは過ぎたばっかりだったけれど、そういや私たちもこの冬は引っ越し準備や結婚式なんかのドタバタで、それどころじゃなかったっけ。

 いいかも。

 私と靖子さんが料理をつくって、ご主人のパンとお寿司。幸一さんには美味しいケーキを探してきてもらって……


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