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食事の片付けを終えて、2階にある自分の部屋に戻るため階段を登る。2階に着くと奥の部屋の扉が開いた。
「⋯尚久くん」
私は尚久くんには分からないように、制服の裾をギュッと握りしめた。
「花菜、おかえり」
尚久くんは笑顔で私に声をかけるけど、眼鏡の奥の目は笑っていない。私を見る冷めた目はなんとなく、尚久くんの母親のあかりさんに似ている気がする。
「今学校から帰ったのかい?」
「うん、さっき帰って、久おじさんとうどんを食べたの。尚久くんもいたなら一緒に食べたらよかったね」
「僕は良いよ、あのうどん、嫌いだし」
口元だけの笑った顔で、尚久くんは話す。
「⋯そっか、今からどこかに行くの?」
部屋から出てきた尚久くんに聞いてみる。答えは分かっている。
「ううん、花菜が帰ってきたからお出迎え」
表情は変わらず、淡々と尚久くんは話す。
「そうなんだ、ありがとう。私、今から勉強するから、またね」
急いで自分の部屋に入る。尚久くんが扉の向こうに立っているのが分かる。私は物音を立てずに、扉に背を向けて後手で押さえる。しばらくすると、扉が閉まる音が聞こえ、尚久くんも自分の部屋に入るのがわかった。それを確認すると、私はそっと扉の鍵を閉めた。




