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「尚久くん、待って!」
尚久くんは、私の言葉も聞かずに私を引っ張っていく。
「尚久くん!」
私は尚久くんの腕を振り払った。
「花菜、なんであんなのといるんだい?」
尚久くんの冷たい声と視線で、私の身体は凍りついたように冷たい。
「⋯尚久くんには、関係⋯ない⋯」
絞り出すように私は言った。
「関係あるよ。花菜は僕のフィアンセになるんだから」
「⋯え?」
まさかの言葉に尚久くんを見る。
「お父さんとお母さんにはすでに話している。2人とも賛成してるよ」
「そんなの聞いてない!」
「僕が頼んだんだ。僕たちは愛し合ってる、だから結婚させて欲しいって」
「何を言ってるの?」
「花菜だって僕を愛してるだろう?」
怖い⋯。ただ立ちすくんだ。
「ああそうだ。余計なものは排除しなくちゃね」
愛したことなんか無い、そう言おうとした瞬間、尚久くんは空を見ながらボソリと呟いた。
花菜があの男に連れ去られるのを、俺は見ていることしかできなかった。花菜は、連れて行かれる時、俺を一度振り返った。今にも泣き出しそうな、不安な顔をしていた。さっきまで、あんなに笑顔だったのに。
いずれ医者になる男女と、ただの夜学の学生⋯。
⋯花菜に、俺は釣り合わない。




