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「ただいま帰りました」
浮ついた気持ちを抑え、玄関のドアを開ける。珍しく、リビングに尚久くんがいる。
「おかえり、花菜」
リビングにいるとは思わず、ビクッとしてしまった。
「⋯ただいま」
少し声がうわずる。
「最近帰りが遅いね、どうかしたの?」
尚久くんが聞いてくる。
「う、うん。玲ちゃんと生徒会の作業を少しやってるから遅くなってるの」
尚久くんに疑問を持たれないよう、平常心を装って話す。
「そうなの?まだ夕方は肌寒いし、気をつけてね。今年は受験だし、花菜はうちの医大を受けるんでしょ?花菜と一緒に通いたいからね」
「⋯うん」
尚久くんは地元の私立の医大生だ。私は久おじさんに金銭面などで迷惑をかけたくないし、できれば尚久くんと同じ大学には通いたくない。少し遠い国立医大を目指している。そんな気持ちは押し隠して尚久に伝えた。
「⋯尚久さん、晩ご飯は?」
あかりさんが尚久くんに遠慮がちに声をかける。この親子の間にも何か壁があるように感じてしまう。あかりさんが尚久くんに遠慮しているというか、怯えてるかのようだ。
「今日は良いですよ、今から少し出かけてきます」
尚久くんがあかりさんにそう言うと、あかりさんは少しホッとしたような表情を見せた。




