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放課後、私は先生に呼ばれてるからと玲ちゃんに嘘をつき、1人緊張しつつ再び中庭に向かった。また昨日の彼に会えるのではないかと思ったからだ。
父が亡くなって、私はうまく笑えているか疑問だった。これまで、誰からも指摘されたことが無いのに、初めて会ったばかりの彼に、笑うのが下手だと言われた。なぜ、私が本当に笑えていないのが分かったんだろう。真実を知る怖さはある、でも彼の話を聞いてみたかった。
中庭からは校庭や校門まで見える場所があり、そこに好きなコーヒーが売っている自販機が置いてある。昨日と同じく、にぎやかな声が聞こえてくる。
⋯いた!彼だ。
昨日の彼は、自販機の前でコーヒーを飲んでいた。心臓がドクンと大きく脈打つのが分かった。戸惑いながら、1つ深呼吸をして彼に話しかける。
「あ、あのっ」
彼がこちらに振り向いた。随分背が高く、私は少し見上げる。
「?」
誰?とでも言いたげな彼の表情。
「昨日、ここで会って⋯あの⋯私が、笑うのがヘタって⋯」
うまく言葉が出ない。こんなのは初めてだ。頬がカチカチになったみたいに笑顔も作れない。
「⋯ああ」
彼はやっと思い出したように頷く。
「なんで⋯そう思ったんですか?」
「んー、勘?」
⋯勘?コーヒーを飲みながら、彼は少し上を向く。
「別に他意はないよ、気分悪くしたんならごめんな」
彼はコーヒーを飲み干し、空き缶をゴミ箱に捨てた。
「⋯でも、そう思う理由があるんでしょ?」
私は思い切って聞いてみる。
「⋯昔、色んな奴に会ったけど⋯学校に行ってないとか、親とうまくいかなくて、街でたむろしてる奴とか⋯。なんとなく、そいつらに感じが似てるなって思っただけ⋯」
私は彼に、私自身を見抜かれたようなそんな気分になった。でも、言葉を選ぶように呟いた彼の言葉に嫌味はなく、それどころか不思議と誠実さを感じた。
「⋯ありがとう」
肩の力がふと抜けて、思わず彼にお礼を言ってしまう。
「?」
またもや彼に疑問符が付くような顔をさせた。
「夜学の人ですよね?」
「そう」
「ここのコーヒー美味しいでしょ?」
「ちょっと苦味がきついけどね」
とりとめのない会話をしてしまう。彼はどう思ってるだろう。校舎から、夜学の始業のチャイムが鳴った。
「じゃあ」
彼は軽く会釈をして私の前を通り過ぎていく。もう少し、彼と話したい。
「⋯明日もコーヒー飲みに来ますか?」
私は思い切って尋ねた。




