第36話:神授の確認
ムナリス王国に来てから数日。
街の石畳にも、屋台の喧騒にも、ようやく違和感が薄れてきた頃だった。
宿の一室で装備の手入れをしながら、ふと胸の奥に沈んでいた記憶が浮かび上がる。
――そうだ、この世界に降り立った瞬間、オレには「神授」が与えられていた。
設計者であるオレにとって、それは驚きでも新発見でもない。
ただ、この世界がAIによって再構築されている以上、自分の設定した能力がどのように反映され、あるいは微調整されているかを確認する必要があった。
一つ目――膨大な魔法力。
常人を遥かに上回るその総量は、まるで地下水脈のように絶え間なく湧き出し、意識を向けるだけで全身を巡る。
二つ目――その魔力を常時防御に転換し続ける全身魔装アーマードスーツ《ラグナ》。
必要とあれば瞬時に展開し、外敵のあらゆる攻撃から身を守る。
三つ目――必要に応じて呼び出せる思考補助AI。
戦闘判断、戦術設計、交渉の裏取りまで、脳内で同時並行に実行できる相棒だ。
すべて、オレが『ラグナ』の仕様として組み込んだものだ。
だが今、実際にこの身で感じる神授は、設計図の上に描いたものよりも、はるかに滑らかで自然だ。
――AIが裏で補正してやがるな。
そう思うと同時に、軽い苛立ちと、妙な安心感が同居する。
本来なら、この三つの神授を存分に使い、序盤から戦場で名声を高めるのが定石。
しかしオレは、その道を辿る気はない。
AIが提示するマルチシナリオのどれにも属さない、自分だけのルートを切り開く。
そのためには、この力を無闇に振りかざさず、封じておく方がいい。
手のひらを握り、魔力の鼓動を確かめる。
「……使う時は、オレが決める」
そう心に刻み、再び鞘に剣を収めた。




