84話 剣聖として
私の目線の先には、複数の魔法使いが杖を構え立っている。
今にでも攻撃してきそうな勢いだ。魔力を体内に集中させ、一撃を放つ。そんな感じであろうと思考を巡らせる。
だが、誰一人撃とうする様子すら感じられない。まるで全員が、怖気付いているようにも思えたのだ。
「どうしちゃったの? 攻撃するのしないのどっち」
「ごちゃごちゃうるさいわね、あなたには関係ないでしょう」
純粋な光線系統の魔法か。属性の付与はなく、純粋な魔力勝負ってことだろうか。
私はただ、攻撃してくるものを容赦せず倒せばいいだけのことだ。
「そんな攻撃じゃ甘い!」
木剣を構え前に突き出した。威力はどうやら互角なのか、当たった衝撃で爆発した。
砂埃も合間って煙で何も見えなくなる。周りでは、フェクトもナズナも戦い始めている。
できるだけ迷惑を掛けたくないのが本音だけど、上手く行くだろうか。
私の心は、どこか不安もあった。
「排除」
煙をうまく利用した戦法だ。だが、そんな中途半端な魔法は、私には通じない。
私は、宙に飛び上がる。それが相手の罠だろうが関係ない。
「やっぱり出てきたわね、コンプレス」
コンプレス、魔法を当てた相手を圧縮させる魔法である。普通に殺す気満々の魔法だ。心が踊ってくる。
私は、自然と不気味に口角が上がっていた。
「なんでそれを避けられるのよ……あと何その笑い方」
完全にタイミングは、完璧だったであろう魔法を避けられた挙句、そんな笑い方をされた誰だってそうなるであろう。
「私がこの国にいる時点で、そんなことをする貴様らが悪い」
「なんなのよ、私は選ばれし者なのよ!」
その瞬間、フェクトが言っていたであろう様子のおかしさがこれかと実感する。
自分自身が、想定している以上の魔力量が外に漏れ出している。
だが、それはコイツらは狙ってやったことだ。
「我々はまた一段階、人類未到達領域に踏み出すのだ! ザ・インフェルノ」
普通のインフェルノとは比べものにならない魔法が、私を襲う。
それは、まるでイデリアの魔法に近いような存在なのだと脳が自動で変換する。
「コイツら、イデリアを越えようと必死なのか」
そんな奴らに敬意を払う必要ではない。身を犠牲にして、魔法を撃ったところで、そんな魔法意味はないからだ。
「しっかりと、罪を償うんだな」
インフェルノを斬り伏せ、そのまま上空でハイなテンションになっていた女魔法使いを捕まえたのであった。
それは、他のメンツも同じだった。それらは、魔法界が連行することとなった。
「剣聖様、この度は感謝申し上げます」
「そんなのはどうでもいいけど、ちゃんと調べた方がいいわよ、きな臭いことしてるみたいだから」
そう言って、私たちはその場を離れた。そして、適度に動いたためか、お腹の音がなった。
「そういえばご飯途中だったわね」
「俺も、動いたからお腹減ったぜ」
「フェクト、食べ過ぎはよくないんだからね!」
ナズナに、そんなことを言われてしまうフェクト。流石に想定していなかったのか、しばらく黙ったままだった。
……
作戦は失敗に終わった。それは誰が見ても明らかだった。
「デースさん、どうしましょう? 今回の作戦に送り込んだ七名の魔法使いは全員が捕まりました」
「そんなの決まっているであろう。自害以外何があろう?」
……
ご飯を食べ終え、宿を探しているとある場所で爆発が起こったのだ。
それは、相当な被害だと誰が見ても分かるであろう。魔法界支部が、原因不明の爆破で建物は倒壊したのだ。
「今の爆破って、魔法界の支部があるところじゃねか?」
「場所なんて把握してないけど、周りを見るにそうらしいわね」
「もしかしたら、まだ生きてる人がいるかもしれない、早く助けに行こうよ」
ナズナの言葉で飛び出す私たち、大きな建物が爆発する威力、そんな状態で生きている方が奇跡に近いであろう。
何より、魔法界の建物は、結界で内部も守られているはずだ。それが倒壊ということは、望みが少ないと考えるのが妥当だと判断する。
「おーい誰か生きてるか!!」
フェクトが、本気で叫び声が倒壊し火災が発生している支部に響き渡る。
周りでは、必死に人命救助をするために火災を鎮火させようとするもの。
怪我人の手当てをするため、病院に転移していくもの様々である。
「フェクト、水系の魔法って出せたりしない?」
「俺は魔神だぞ! できねぇことなんてねぇよ」
フェクトは、自信たっぷりに言う。ほんと、こんなトラブル対処は、フェクトに任せれば安心だ。
「オーシャンブラスト」
勢いよく水がでる。だが、それはとてつもない調節された力だ。
並大抵の魔法使いでは、一生できない芸当だろう。
「火の鎮火まで一分もかからない。瓦礫をどうにかしてくれ!」
「それは私に任せて!」
フェクトは、ニヤリと笑う。そして、火は鎮火される。
「一人でも多く救うのが私がやるべきことだ」
たった一振り、それで瓦礫は充分だ。次の瞬間、周辺の瓦礫は粉末になって、風に乗りどこかに消えた。
「なんだ今の!? アリア、俺と戦った時全くの本気じゃなかったな」
フェクトは、ドン引きしつつ悔しそうな声で叫んでいる。
「そんな話は後! 今は人命優先」
ナズナの声で、フェクトはハッとなる。そして、至るところに倒れている魔法界の職員たちに声を掛けて行ったのだ。
結果的に言えば成功の分類に入る方であろう。だが、それは一般論にすぎない。
私がいながら、救えなかったの命がある。それが現実だ、それを私は受け止めなければならない。
「暗い顔すんな、そこそこ大きい支部だし対応が遅れていたら、全員助からなかったんだ」
「でもフェクト、私は剣聖だ。皆を災厄から守り、導く存在だ。それなのに私……」
暗い宿の一室、私が大粒の涙を流しているのを見て、励ますかのように二人は寄り添ってくれるのだった。




