58話 剣聖として夢のお手伝いをする
「おい、お前たち何を食べている!」
突然の大声で、体がビクッとなる。振り向くと、木の棒を持った少年が結界の前に立っている。推定、六歳から八歳で、黒髪で目は茶色である。
「シーサーペントだけど、何か文句ある?」
少年は、腹を立てたのか結界の中に入ろうとするが入れず木の棒で叩いている。
「それは、ここの主なんだよ! どうやって倒した、それは並大抵の冒険者じゃ倒せないんだよ!」
やはり主だったのか。でも実際戦った感じ、余裕で倒せるレベルだった。
銀の冒険者でも、パーティを組めば余裕だろう。
「え、そうなの? お姉さん的には首の肉も柔らかくて斬りやすかったけどな」
「何言ってんだ? アイツは魔法も耐え切って冒険者を何人も倒したやつなんだぞ!」
少年は、その後もずっと結界をガンガンと音を立たせている。
その少年の後ろから気配がする。魔物ではないのは、気配を感じれば簡単にわかる。
「シュータ、こんな所に居たの? 本当に申し訳ない、食事中なのにお騒がせしました」
そう言ってシュータと呼ばれた少年を抱き抱え、連れて帰ろうとしていた。
少年は、バタバタしているが降りられそうな気配はない。
「ちょっと待ってください! シュータくん、私たちが食べてるシーサーペントと、シュータくんが見たシーサーペントとは違うかもしれないよ」
少年は、ジタバタするのを辞め少し考えているような表情になる。
そして、何かを思い出したかのように声をかけてきた。
「ねぇ、今日倒したシーサーペント、片目が剣の傷が入ってた?」
「いや、入ってなかったよ? もしかしてそれが、シュータくんが言ってる主?」
少年は頷き、どこかほっとした様子を見せた。
私には、どうしてホッとしているのかわからなかったが、落ち着いてくれて何よりだと思ったのだ。
「少年、もしかして今の時期ってメスの産卵行動とかあるかか?」
フェクトが、何か興味ぶかそうなことを言っている。
「うんそうだよ、今はめちゃくちゃ気性が荒いんだよ! 主もメスだから、三人とも気をつけてね」
そう言って、少し離れた位置にあるコテージに帰っていった。
その頃、私の中で少し疑問に思っていたことが解消されたと確信する。
「今日の襲撃ってさ、自分たちよりも強い者が近くに居るから襲ってきたって可能性もあるよね」
「確かにそうだと思う。獣人族も、気性が荒くなる場合もあるって獅子王言ってた!」
そうすると、少し離れた方が賢明だと思う。なぜなら、ここいらは、奴らのテリトリーとして考えるのは妥当だろう。
奴らは、水を操るのも上手だ。
遠距離攻撃も持ち合わせている。そのため、雷魔法が一番の有効になると、師匠からも教えられていた。
「みんな離れるよ! ここは奴らのテリトリーだ、これ以上無駄な争いを避けたい」
そう言うと、すぐに準備に取り掛かりすぐに森の方に隠れた。
隠れて正解なのかはわからない。ただ、気がかりなこともある。
それは、先ほど少年が来た時、獲物がきたと言わんばかりに、気配があった。
それは、奴らからしてみれば、自分のよりも弱い相手が現れたら、そっちを優先的に狩るのは手段として賢いとも言えるであろう。
「二人とも、湖の警戒もあの子ら家族の安全を守るように心得といてくれ」
「わかってるよ〜」
その日の夜中、誰もが寝静まった頃、湖の中からものすごい殺気とともに目が覚めた。
全員、テントから飛び出してしまうほどだ。
「今のやばくねぇか、あれ只者じゃねぞ」
「わたしもそう思うよ。あれ、真面目に狙いを定めている殺気だよ」
「簡単に倒せるのは間違いじゃないけど、二人はあの家族を守ってくれる?」
そうして、それぞれ準備を整えテントを後にした。私は、湖まで一気に駆け出す。
その気配に勘づいた魔物たちが、こっちに向かってきているのがわかる。
「あなたたちに構ってる暇はないの!」
行手を阻もうとする魔物を剣で斬り裂き、湖に着いた。それと同時に、嫌な気配が押し寄せてくるようなイメージが頭に流れ込んでくる。
そして姿を現す。それは、昼間戦った時とは比べものにならないほどの傷痕がある。
それは、幾度となる挑戦者たちの付けたものだとすぐにわかるほどだ。
そして、左目は斬り傷により塞がっている。間違いなく少年の言っていた主であることを確信した。
「なんだあの水の球体?」
主の周りに浮かぶ、水の球体。貫かんとするような勢いの、水が飛んできた。
地面に小さな穴が開くほどだ。
「あれが、お前の力ってわけね」
無数に飛んでいる球体から、幾度となる水の光線が襲いかかってくる。
それを避けるだけでは、先には進めない。的確に狙ってくるあたり相当な魔法適性が高いということだろう。
「まぁ、めんどくさいだけで苦にはならないかな」
言葉を理解したかのような動きで、翻弄してくる。それを、躱しつつ進む。
その時だった、そこには居たら行けない場所にいる少年が木の棒を持ってアイツを見ている。
「なんでお前っ! ここに居る?」
その答えは、とてもシンプルだった。
「だって僕が倒すから!」
「はぁ!? ったくしょうがないわね」
少年は、とても喜んだ様子である。主もそっちに隙を取られているのがわかる。
私は、魔力を足に集中させ、少年を抱き抱え上空に飛び上がる。
飛行魔法は、魔力の消費が激しい。そんなことは知ったこっちゃねぇ! 聞いてようやく分かったからな、剣聖としてその夢の手伝いをしたくなったからね。
「シュータ! これ持ちな」
シュータに剣を手渡し、重そうにしているのを支える。
「落ちることはないから心配するな、今はアイツの首を見ろ!」
「うん!」
主は、水の光線で攻撃してくるがもう遅い。そんなのでは、この一撃は止まらない!
首に剣を押し当て、サクッと斬り裂いたのであった。
そうして主は、死んだ。
「おめでとう!」
「ありがとうお姉ちゃん!」
少年のとびきりの笑顔、それを見て頬を赤らめて誰にも見られていないことを願った。
そうして、私は二人に思いっきり怒られたのであった。
「お姉ちゃんー! 僕将来、お姉ちゃんみたいなかっこいい剣士になるよ」
「期待してるね。もしなれたら、手合わせするわ」
そうして、湖で起きた剣聖騒動は瞬く間に、新聞に書かれるのであった。
『剣聖少女! 少年の夢を叶えるために尽力する』
この時、魔力写真には少年を抱き抱え落ちてくるシーンが使われたそうです。
その時、二人は見つめあっており、色々の方面に傷跡を残したのは内緒の話。




