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剣聖少女 〜あてもない旅がしたいと願った少女の冒険譚、剣聖にもなれたので箒に乗って路銀稼ぎや旅を楽しみたいと思います〜  作者: 両天海道
第1部-2章 王都で再開! 13歳の私は、他種族との交流していこう!

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56話 獣人の国にまたいつかと告げて


 それから私は目覚めたのは、知らない天井だった。腕に柔らかい感触が当たっている。

 横を見ると、ナズナが腕を抱き枕にして寝ていた。寝息がとても心地良さそうな音色を醸し出している。

 その寝息は、まだ覚めきってはいない私には効果抜群だった。

 もう一度、夢の中に戻ろうとすると、扉の向こうから音が聞こえる。

 足音で私はすぐに誰かわかる。

 

「アリア、起きてるか?」


 やはりフェクトの声である。私は声を出そうにも、横で寝ているナズナを起こしたくはなかった。だって、めっちゃ気持ちよさそうに寝てる。寝顔、めっちゃ天使!


(起きてるよ、横でナズナは寝てるけど)

(だからこれなのか。入るぞ)


 扉が開き、フェクトが中に入ってくる。


「おーい起きろナズナ」

 

 フェクトは、ナズナの体を揺さぶりながら優しく起こそうとする。

 だんだんと目が開いていく、そうして私の顔を見るなり抱きついてきた。


「アリア! 起きたんだね、全然起きないから心配したよ」


 朝っぱらから、熱烈なラブコールと受け取って良いのだろうか。

 そんなことを考えていると、フェクトは引き剥がした。

 ナズナは、まだ抱きつき足りないようだ。


「二人とも着替えてくれ、獅子王が会いたがっているそうだ」

「わかった、外で待ってて」


 そう言うと、早めになと言い残して部屋から出ていった。ナズナは、まだ眠いのか目を擦って大きなあくびをしている。

 私は、ベッドから降りて体を軽くストレッチする。かれこれ、十時間は遥かに超えるほど寝ていたため、体をほぐしていく。


 顔を洗って、清潔感を整える。眠たい顔から、シャッキとした顔に切り替え、そそくさと準備をしていく。

 適当にボックスから取り出した服を、ベッドの上に置いていく。


「どれを着ようかな?」


 春にぴったりな上下を出して悩んでいると、ナズナもこちらに興味があるようだ。


「えっとね、これとこれ」


 ナズナのが指を指したのは、白のブラウスとピンクのスカートである。

 ナズナの顔は、自信たっぷり乃表情に満ちている。それに私は乗っかり、服を着替えて部屋を出た。

 廊下で、外を眺めて待っているフェクトがいた。


「フェクト、どう似合ってる?」


 私は、特に返答なんかは気にせず聴いていみた。


「いいじゃねぇか、ナズナが選んだのか?」


 私の後ろから出てきたナズナは、うんと答えた。流石はフェクトである。

 私のだらしない格好を知っているためか、これは私が選んだ服ではないことを簡単に見抜いていた。


「当たり!」

「だってそれ、イデリアに散々連れ回されて選んで貰った服じゃねぇか」


 私は、すっかり頭から抜け落ちていた。そういえば、冬の間、休みの日なんかは、大体イデリアに拘束されていたのを思い出した。


「その日のうちにボックスに放り込んでたしな」

「あ、……そういえばそうだった気がする」


 そう言って苦笑いで誤魔化しつつ、獅子王に会いにいった。


「よくきてくれた剣聖様、昨日は何とお礼をいえば良いか」

「私は、特別なことはしてませんよ。体調が戻られた様でなによりです」


 獅子王には、包帯すら巻かれていない。流石は、獣人族だと感心した。


「それでお話というのは? これだけじゃないですよね」

「はい、新しい王についてです」


 やはりそれか。今現在、ナズナと獅子王のどちらかである。それ以外考えなくてもいいだろう。

 だが、ここでナズナに王として居らせるのは酷な話であろう。


「獅子王、それはあなたが続投すべきだと考えます」


 私は、思ったことを言った。口の言い方は悪いが、ナズナでは国を任せるのは無理であろう。

 それに関することが、全然向いていないと言える。

 それに比べて、獅子王は十五年で培った物は計り知れないだろう。


「やはりそう思いますか、ですが今回の不祥事は紛れもない事実です」


 ラギアの件は、私が寝ている間に広まっていないわけがない。それにより、側近の一人としてやってきた者の裏切りは、監督責任が取らされるであろう。

 それを危惧しているのが丸わかりだ。


「だったら、今回は私が決めます。剣聖権限として」

「剣聖権限ですか……。それも一つの手かもしれませんね」


 悩んでいるのが、顔にでている。伝統を重んじていた獅子王だ、悩むのも当然だ。


「ねぇ、わたしはそれでいいと思うよ。獅子王じゃなきゃ、みんなはついていかないよ」


 獅子王にその言葉が届いたのか、決心がついた顔つきである。

 そして覚悟を決めたかのような面持ちで、口を開く。


「お願いできますか、剣聖様」

「わかりました、次の獣人族の長は引き続き獅子王にお願いしたいと思います」

「ありがとうございます、これからも日々精進していきますので、今後ともよろしくお願いします」

「こちらこそ」


 そう言って、力強く握手したのだ。

 そしてその後、民の前で獅子王はこのことを説明した。みんな、当たり前だよなと言わんばかりで、拍手喝采である。

 

「ねぇ、獅子王。わたし、アリアたちと旅がしたい!」

「そうかわかった、剣聖様、ナズナは家族を戦で無くしてからは、私が育ててきたような者なんですよ、これからよろしくお願いします!」


 獅子王は、大粒の涙を地面に落とした。


「もちろんです! これからよろしくねナズナ!」


 ナズナは、私に飛びついてきた。とても嬉しそうな笑顔を周りにも見せていた。

 周りからは、祝福の声で溢れかえっていた。そうして、その日は一日、祭りのような騒ぎで国が盛り上がったのであった。


「獣人の国、またいつか!」


 翌日、別れを告げつい先日、ウイッチと戦った場所に戻ってきた。


「まさか、新たな旅仲間ができるなんてな」

「私もそれは思ったよ、じゃあ早速行こうか」


 そうして、箒を取り出す私たちを不思議そうな目で見てくる。


「何それ? それで移動できるの」

「あ、もしかして知らなかったの? 魔力量も少ないから私の後ろに乗りな」


 そうして、ナズナを加えた旅が始まるのであった。

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