45話 会議
ギルドの三階。
大きな部屋で机がいくつかを並べられている。以前、マメシアの所で見たことのあるような作りとなっている。
「ここは、会議室的なやつ?」
「そうだよ、それより聞きたいことがあるんだけどいいか?」
師匠は、聞いていいのか聞いたらいけないのか、悩んでいる顔で聞いてくる。
「どうしたんですか? 難しそうな顔をして」
「フェクトなんだが、あれは本当に魔神か?」
師匠ともあろうものが、判別できないわけがないはずだ。それをわざわざ聞いてくるのだ、何か引っ掛かることがあったのだろうか?
周りを見るに、確かに気になるのか聞き耳を立てている。
「魔神だよ、自分で言ってるし」
「パン好きの魔神なのか? とても喜んでいるようにも見えたが」
あーそこなのか。それで私は理解した。フェクトは確かに魔神だが、私と過ごしていくうちにパンが無類の大好物なのである。
「そうだよ、めっちゃ美味しそうに食べるだよ」
「そ、そうか。それならいいが……」
少し戸惑った師匠。それは、他の二人も同じようだ。
「そんなことより、会議しないの? 行っていいなら私行くけど」
ギルマスは、ハッと思い出したかのように席に案内し始めた。
そして、会議が始まり簡単に事件の概要が説明された。
まとめると、最初の犯行は約一ヶ月ほど前のことらしい。最初は、一般市民ということもあってそこまで大ごとではなかったそうだ。
それが一変したのは、それから二日後のことだ。
狙われたのは、王都で仕事をしているため、住んでいた貴族の男が殺されたそうだ。
そして、護衛にいた者ごと殺されているため大きな事件として、扱われ始めた。
その事件がなぜ辻斬り騒動と言われているのは、同じ手口であることが挙げられる。
特徴的な、斬り傷。そして何かしらの物を持ち去っているのがわかっているからだ。
「それで今、被害は何件あるの?」
「七件よ、そのうち三件は貴族やそれに近しい人が狙われたわ」
「その時、イデリアや師匠は何してたの?」
「「王族の護衛」」
二人同時に言うあたり本当なのだろう。でもそれはおかしい点はある。
王族は基本的に公務以外で、城から出ないのが一般常識である。
そしてなにより犯行は、全て夜である。それも全て遅い時間帯だ。
「王族に護衛についてても意味がないよね?」
「なんて言うことを言う! この世界を治める王だぞ」
ギルマスが大きな声で怒鳴るが、全て言葉は頭に残らず素通りしていく。
「普通に考えて、王族より貴族とかに付くべきなんじゃないの?」
「それはだな、王族は俺たちをギルドと高値で取引してんだよ」
師匠がボソッと言う。
「このままだと、私も同じ目に遭うってことだね」
その瞬間、ギルマスは完全に沈黙する。だが、私と目を合わせないのが決定的な証拠である。
そんな時だ、扉の叩く音が聞こえる。
「ギルドマスター、ここを開けてはいただけないでしょうか?」
野太い男の声だ。歳的には、だいたい四十歳を余裕で超えている声だ。
ギルマスは、声に覚えがあるのか肩をビクッとさせている。それだけでわかる。相当な偉い人が訪ねてきたのだろう。
「ただいま開けます」
近衛騎士に囲まれながら、見覚えしかない二人が入ってくる。
「どうしたの? 二人してこんな所に現れるなんて」
それは、先ほどまで王宮に居た第五王子とミニシアである。
近衛騎士の周りには、シューミン、アルグスもいる。
「アリア様、お願いを聞いてはいただけないでしょうか?」
「そんなにかしこまらなくてもいいのに。私にできることなら、話は聞くよ」
ミニシアは、大きく深呼吸を吸って一歩前に出る。
「あの、私をエサにしてくださいませんか」
ミニシアは唐突にそんなことを言う。私以外の三人は、驚いているのが、見なくてもわかる。
なんなら、ギルマスはあまりにも突然のことだったのだろう。泡を吹いてその場に倒れ込んだ。
「それで事件を解決に導きたいと、いい考えではあるけど友達を危険に巻き込みたくないな」
「アリア様! それなら私も戦います」
確かに、一国の主人である領主の娘とは思えない格好をしている。
「ダメだよ、流石に危険すぎる」
「私からも――」
私は言葉を遮って、彼女たちに言う。
「足手纏いだ。正直言って今、話を聞いてるだけでは私自身、勝てるとは思えないんだよ」
その言葉にはみんな、黙りこむ。そんなはずはないと思っている顔をミニシアはしているが、自信はない。
「一度戦ってから、様子見しようと思う。おそらく奴は今日犯行を起こすだろうしね」
「どうしてそう思う?」
師匠が食い気味に聞いてくる。
「師匠は答えを知ってて、あえて聞いてきてると思って答えるよ。だって私がいるからだよ」
その言葉を聞いたイデリアは、頷いている。
「確かにありえる。剣聖が居る中での犯行、犯人は当然居ることを知っている状態で挑む。剣聖と剣を交えることができるチャンスを逃すとは思えない」
「それに、魔神フェクトがいる」
イデリア、師匠の言葉でより現実味を帯びてくる。そしてなにより、犯人は同様のことを踏まえてもうやっているはずだからである。
「イデリア、魔法界って今回の事件はあなたが出てきてる以上傍観はしてないでしょ?」
「してないわ、今日から警戒をより強固にするわ。こっちとしても、犠牲をあまり出したくないからね」
そのいいぐさ、何人かは殺されてたのだろう。それがあったから、イデリアもこれに参加してることがわかる。
「イデリア、今日の護衛は無しで頼む。おそらく、犯人にはどのみち逃げられるからな」
「見回りってことね。確かに、逃げられそうだわ」
なぜ逃げられるのか、イデリアは理解しているようだ。おそらく、師匠も気がついているであろう。
「師匠は、引き続き護衛の方をよろしく」
「わかってる、じゃあ夜まで解散ってことで」
そうして会議は、終わったのだ。




