44話 ギルドにて
イデリアは、淡々と言った。
「それってどういうこと?」
「あの子たちはまだ若かった。牢屋にぶち込んで無理矢理でも反省させようとしただけよ」
確かイデリアは、フェクトを殺そうとした時用事があると言っていたのを思い出す。
それが、このことなのだろう。
イデリアは、ほっとした顔で私を見つめている。
「多分私が行ってもダメだったわ、討伐の方ご苦労さま」
「そうなの、一緒にギルドの方行かないか?」
「話したいこともあるし行くわ」
そうして、王都の中に入ったのだ。王都は、今まで訪れた国とはまるで違った。それは、圧倒的に美しかった。ゴミは一つも落ちていないし、道も整備されている。
そして、住んでいる人たちの民度がいいという印象を、入った直後から受けた。
「驚いた顔してるね?」
「まぁね、今まで行った国より民度も高くていいなって思っただけだよ」
イデリアは、納得したのか歩き始める。ギルドに着くまでの間、色々な話をした。
四年間のことや、旅に出てからのこととか、いろいろだ。
それを、楽しげに聞くイデリア。
そんなことをしているうちに、ギルドが見てくる。
「大きいな」
思わず声を出してしまうほどだ。
それほどに立派で、質の高い冒険者の気配もするほどだ。
「ギルドマスターいる?」
イデリアは、いつものように、その場にいた職員に話しかけている。
それは、いつものことなんだろう。冒険者なんかも、驚いた様子がなかった。普通にエールを飲んでいる者、クエストを眺めている者、談笑を楽しむ者様々だ。
奥から、日焼けした男が顔を出した。おそらく彼が、ギルマスで間違いないだろう。
そして私と目が合い、お互い顔を見るなり、両者が嫌な顔で睨みつける始末。
「どうしたんだアリア?」
フェクトは、とても不思議そうに私を見つめてくる。
「いや昔ね、両親のお店に何度も来てた人なんだよ、私の師匠を解放しろってね」
「へぇー、なんでなんだ?」
彼は、ため息をついている。そして、一呼吸入れて口を開く。
「誤解を招く発言はお控えいただきたい、剣聖様」
「なにが誤解を招くよ、いつも安い商品買って、何時間も両親に迷惑かけてたくせに」
彼のこめかみがピクッと動く。笑っているが、怒っているのは誰が見てもわかるほどだ。
「いつも同じように、師匠のことで揉めてたじゃない。あれは師匠も合意してたはずよ」
「君の両親が、この世界に必要な存在を店員にしてた娘には言われたくないね」
「何言ってるの? 師匠は、月収金貨五十枚、ボーナス三ヶ月分を二回、私を教えることと、お店の手伝い、緊急時には、冒険者としての活動は自由だったはずだけど」
両者一歩も引かないのが、続く。
「それに関しては、私も聞いたわよ。あの人、めっちゃ楽しそうだったし、教えるのも店員として働くのも楽しいって言ってたわよ」
ここで、イデリアの一撃がギルマスに突き刺さる。
ギルマスは、何も言えなくなっていた。イデリアと私を相手にするのは、立場的にもまずいと考えたのだろう。
「それより本題入っていいかしら? 賞金首の死体、二人分を処理してほいんだけど」
「賞金首の死体? わかった、ここでは出さないほうがいい。ついてこい」
ギルマスは、瞬時に仕事モードに切り替え対応する。そして案内されるまま通されたのは、別の建物である。
周りを見る感じ、魔物の解体なんかもここでしているのであろう。
それに使われる道具、立てかけてある。
「賞金首の名は?」
「イークス兄弟だよ」
一度、イデリアの顔を見てから私の顔を見て理解した様子だった。
「なんで殺すことになった?」
「攻撃してきたから、攻撃して来なかったら見逃そうと思ってたよ」
私は、端的に答える。
「そうか、死体の方はこちらでやっておく。すぐに賞金出すから手間ではあるが、あっちで渡す」
「はーい。まぁ、今ぶっちゃけ困ってることある?」
イデリアとギルマスが、一瞬顔つきが強張った感じになる。それを感じさせないかのように、すぐに戻るがバレバレだ。
「クエストなら張り紙見てくれ」
「答えないつもりならそれもいいけど、なんで師匠がここにいるわけ?」
壁の向こうから、ガタッと音が聞こえる。それと同時にフェクトは、飛び出していった。
それから数十秒後、師匠を連れてフェクトが戻ってきた。……
「やぁ久しぶり!」
師匠は、元気そうに答えるが気まずくなったのか、すぐに顔を逸らす。
「これでも、何があったか教えてくれないわけ?」
三人とも黙ったままだが、観念したのか師匠が諭すように、ギルマスに話しかけた。
「もう隠し事はやめとけ、アリアは王都正門前からずっと俺の存在に二人して気付いてた」
「それは、ギルド受付の所で話すから」
そう言って、逃げるように足早にギルマスは離れていった。
「師匠も元気そうでなによりだよ」
そう言って、聞き耳を立てる冒険者たちを痛めつける準備をして、戻っていく。
扉を、蹴り飛ばし入っていく。
「壁に聞き耳立ててるなんて、信じられない」
聞いていたであろう冒険者たちは、真っ青である。
基本的、冒険者のプライベートにおける干渉は、冒険者同士でもそこまでいいとはされていない。
ギルマスが、お金を用意して戻ってくる頃には、冒険者たちが何名か、壁にめり込んでいた。
「それで話なんだけど、なんで師匠がいるわけ?」
「それは……えーと」
この期に及んでまだ、口を破ろうとしない。
「仕方ない、俺が話す。王都で辻斬り騒動が相次いで起こってるんだよ」
辻斬り騒動? 試し斬りや、単なる憂さ晴らし、金品目的など様々な要因が考えられる。
「どうなってんだよ、無差別? それとも高位の人?」
「無差別だ、一般人も高位も狙われてる」
犯行は夜。それも恐ろしく遅い時間。
「相当強いね、そいつ。フェクト、夜までお金あげるからパンでも買って遊んでていいよ」
「え、いいのか? まぁ、師匠さんとも話したいだろうしな」
フェクトは、聞き分けよく金貨を五枚ほど持って出ていった。
そうして、王都辻斬り騒動解決に向けて最高戦力が揃ったのであった。
この世界において破格すぎる給料となります。それでもなお、お店の方はバッチリ黒字経営であり創業以来、赤字になったことがない。
師匠よりかは少ないですが、ここのスタッフは相当な額を支給されている。
若者が就職できるのなら、ここで働きたいと申し出るのが毎年の恒例行事だという。




