42話 王都前、今にも剣聖と管理者は喧嘩に発展しそうです
弟が居たのは、私たちがいた場所からそこまで離れた位置ではなかった。
「もうちょっと遠くに逃げていると思ったよ」
「兄貴の無念、俺が晴らす」
まったく話を聞く耳すら、持たないこの状況。話しても無駄だと直感する。
「丘の上でやることが決闘か……アベンジャーとして私に立ち向かうんだろ、意味のないことだ」
冷たい言葉を投げかける。
「いざ尋常に勝負! インフェルノ」
放たれる火の塊。遅い、遅い、遅い。そんなな魔法では私を殺すことはできない。
そう直感させるかのように、斬り伏せていく。
「ゴーレム!」
ゴーレムの一撃なんてたかが知れている。岩のように硬い手を砕き、頭を砕く。こんなのに、剣など必要がない。
「――お前……バインド!」
杖から放たれる魔法を受けるも、意味もなさない。ひきちぎるかのように、何も縛れてなかったかのように目の前に立つ。
君は、目の前の光景から離れるように目を背け、顔を横に向ける。
「どうした。もう終わりか?」
彼は、杖を反対に向け突き刺すが届かない。
「なんなんだよ。お前!! 昨日、お前に会うまで楽しかったのに、お前なんかがなんでなんで!!」
まとまらない言葉を吐き捨てるように言う君。
「なんでかって? 君が攻撃して来なかったら見逃そうとも考えてたよ」
彼は、ぐちょぐちょな顔でこちらを睨みつけている。
それでも、目はまだ死んでいない。
「攻撃するならしろ、私だって忙しいんだ」
彼の精一杯の攻撃は届くことなどない。それでも何度も攻撃をしてくる君。
もうわかっているはずなのに、それを認めたくないように魔法を放つ君には、何も感じない。
「時間の無駄だ、お前はアベンジャーになりきれていない」
「うるさいうるさいうるさい! うるさいんだよー」
何もうまく行かず、キレる君。
君はそうやって、両親を殺したんだね。そして、その後も兄はそれを止めようとしていたはずだ。
止められないとわかった時には、君たちの手は血まみれで、手配書が出回るぐらいの、犯罪者になっていた。
「あなたのお兄さんから言われたわ、先で待ってるってね」
君の手が止まる。もう何もできないことが、わかっているからだ。
アベンジャーとして、君は何も成せない。
「もう、無理なんだな……だったら、お前に消えない傷を作って死んでやる」
「それができるの?」
「できるさ、誓約……」
その言葉を聞いたフェクトの顔が歪む。聞いたことがあるからだろうか、とても嫌そうな顔だ。
「我の命を引き換えに、我に力を!!」
「それ使うか、でも私に当てられるかな?」
膨大の魔力を、赴くままに使う感じだ。だが、それではダメだと知っている。
君にとっても初めてのことなのだろう、そんな魔力を初めて感じたんだ、暴走するのは仕方ないことなのだ。
言葉にもならない声で叫ぶ君に、剣聖として引導を渡そう。
「君の攻撃はいいものだ、ただ相手が悪かったね」
その剣は、魔弾を貫き結界を一瞬にして粉々にし、心臓を貫いたんだ。
「――ぅぅ……なんでだよ」
「君に強さが足りなかったからだ、罪を兄弟揃って償いたまえ」
そうして、君は死んだ。ただ君の最期の顔はどこか嬉しそうだった……そう思ったのであった。
「お疲れ様」
そうして、兄弟の賞金首を王都に連れていく。
村から王都まで、まだ距離がある。
それを、一気に駆け抜ける。雨が降ろうが風が吹こうが関係ない。
ただ、早く彼らを埋葬したいと思ったのだ。
「王都は、あとどれぐらいだ?」
「まだ、数日はかかりそう」
落胆した姿を見せるフェクト。ここ最近、最低限のことしかしていなかったためか、動きが遅くなっていた。
「今日は、ゆっくり行こうっか?」
「それはいいな、そうしてくれ」
一気に気分が良くなったのか、鼻歌を挟むくらい元気になっている。
そうして、普段のような速さで箒を飛ばしていると女性の悲鳴が聞こえてきた。
お互いに顔を見合わせ、悲鳴の方に箒を飛ばす。
辺りは、森林地帯だ。
「フェクト、気配お願い!」
「もうやってる!」
緊迫とした声が、上空に響き渡る。まるで、今の天気を表しているようだ。
「雨が強くなりそうだから、できるだけ早く見つけないと」
フェクトは、焦りながらそんなことを言う。確かに、先ほどから、雨が降っている。そして、ゴロゴロと音を鳴らしている。
「反応あった! こっち」
フェクトに案内されるがまま、箒の高度を一気に落とし、躱しながら進んでいく。
「居た! 大丈夫か!」
フェクトは、精一杯の大声で叫ぶ。
辺りには、マンイーターが冒険者を取り囲むようにいる。
こちらの存在に気がついているのか、ツルをこちらに伸ばして威嚇行動をとってくる。
「お前らの相手はこの私だ、そいつらには手出しはさせない!」
箒から飛び降りる。
冒険者たちは、驚いた表情でこちらを見ている。マンイーターは、一斉にツルを伸ばし攻撃態勢に移行している。
「もっと強度のあるもので、くるんだな!」
一瞬にして、チリと化す。
驚いている暇すら与えず、一体を着地台とし、目にも止まらない速さで、斬り伏せたのだった。
「お怪我はありませんか?」
「い、いえ大丈夫です」
話を聞くに、王都からの冒険者で駆け出しの銅の冒険者らしい。
魔物討伐するために来たそうだが、初遭遇がマンイーターだったみたいだ。
「危ないから、できるだけ近場でやるんだよ」
その後、転移でその場を去った。
「まさか、マンイーターとはな」
「初心者としては、無理だよ」
それには、同意見なのか頷くフェクト。
そうして、その後は目立ったこともなく王都が見えてきた。
「大きな門だな」
立派すぎる門を眺めていると、どこからか声が聞こえてくる。
「剣聖アリア、あなたが来るのを待ってたわよ! これが終わったらやることあるから今は手短になるけど、あとでゆっくり話そう」
声の主を探していると、目の前から女の子が上から落ちてくる。
私は、その姿を見るなり嫌な顔になる。魔法界のローブを身に纏った少女。
それだけでアイツかと、確信する。
彼女は、私に抱きついてきた。
「会いたかったわアリア!」
「えーと、イデリア久しぶり」
フェクトは横で、ポンと手を叩くとともに体を一気に後退させる。
「フェクト?」
「アリア、悪く思わないでね。あの子との旅はここまでだよ」
イデリアの声は、嘘偽りなかった。それで理解した、イデリアは、フェクトを殺そうとしていることを。
「イデリア、シャイで聞かなかった? 次は容赦しないって」




