25話 魔剣使いのシューミン
街に戻ると、痛い視線を向けられているのを感じ取る。
そんなものなんかに、全く気にも留めず堂々と歩いていく。結局、オーガ戦は三十分も立たずして勝敗が決まったため、少しゆっくりと歩いていく。
そんなことをしていると、前方から男の人に声を掛けられた。
「剣聖少女様、こちらにおられたのですな」
「どちら様なのでしょうか?」
男は、ハッとしているのが窺える。
見た目は、どこにでもおりそうなおじさんって感じがするけど、ギルド職員の服を着用しているからして、おそらくギルド職員であろう。
「大変失礼いたしました、剣聖様。私はこの国のギルドマスターをしているルングというものだ、よろしくお願いします」
手を差し出してくるので、握手を交わす。
「私は、剣聖の称号を持つアリアというものよ、何かようかしら?」
オーガとの戦いの前に、あのギルド職員が何か話があると言っていたような。
なんだっただろうと思っていると、ルングが口を開いたのだ。
「あなたに、正式に金の冒険者として名乗っていただきたいと考えています」
こんな街のど真ん中で言われるものなのかと、思いながらも了承した。
「確か試験があったはずでは?」
「それにつきましては、リングベルト様、イタマイ様からの推薦用紙を頂いております」
あー免除ってやつか。確かにあの二人ならやりそうではあった。
「またそれは、ギルドの方に伺った際に聞きますわ、今からどうしても外せない用事があって」
ルングは、慌てた様子で謝ってきた。
いや、悪いこと何もしてないのにそんなに謝られたらこっちが対応に困るわよ。
「じゃあそういうことなので」
私は、箒を取り出し逃げるように去って行くのでした。
そうして、ミニシアの待つ場所に向かっていく。
着くと、結界を張って素振りの稽古しているのが目に入る。
暑さを凌いでいるのか、さすが魔法は便利だなと思っていると少し疑問が湧いてくる。
誰が、結界を張ったかである。
わざわざ人を呼び寄せた? とも考えたが私用で呼べるほど暇ではないのだ。
そんなことを考えていたら。ミニシアの声が聞こえてくる。
「お待たせしてしまって申し訳ございませんでした」
私が疑問の顔で気がついたのか、シューミンがその疑問を解消してくれたのだ。
「私、魔剣使いの魔法使いなのです」
魔剣使いの魔法使い?? え、あれって確か剣聖の大会にも出てたやつだよね。
未だかつて、なれた人はいないけど。
「私が素振り見る必要なかったんじゃ」
思わず声にだしてしまう。
魔剣使いは、魔法の才能も凄まじいものだと聞く。ただ、シューミンからはマメシアみたいな強さは感じなかった。
「そんなことないです! よろしくお願いします」
ミニシアは、深々と頭を下けまた素振りに戻っていった。
素振りの基本は、まだまだ基礎が足りていないといった状況なのが見てわかる。
それを何度も繰り返し教えて行くこと数時間が経った。その頃には、基本的な素振りができるようになっており、それを続けるように指示を出した。
「シューミンさん、手合わせってお願いできませんか?」
正直に言おう。教えている間もずっと、剣が疼いて仕方なかった。
それだけ、気になるのだ。
どれほどの実力があって、どんな戦い方をするのか知りたかったのだ。
そして、超えたいと思ってしまった。
そう思ってしまえば、興奮で体の昂りを感じる。それほどまで、私は魔剣というのを味わってみたいと思ってしまったのだ。
「お嬢様、よろしいでしょうか?」
シューミンは、私とは違ってだいぶ落ち着いた様子でミニシアに、確認を取っていた。
「ちゃんと結界、張ってからしてくださいね」
指を鳴らすと同時に、結界を生成させる。
「めっちゃかっこいいじゃないですか!」
「ありがとうございます、勝負内容は組み手で宜しかったでしょうか?」
「もちろん」
そして、次の瞬間シューミンの剣に魔力が込められる。
あれは、闇か? 禍々しい魔力が刃を覆い隠す。
シューミンの剣閃が迫ってくる。それを軽く受け流すが、やは通常とは違うのを感じ取る。
「剣の刀身が伸びた!」
シューミンは、それを下から上に斬り上げてきたのだ。
この状況で、避けるのは面白くない。守れるか、体感してみたいと思ってしまう。
これも私の悪い癖だ。
剣と魔剣がぶつかり、禍々しい火花を散らす。
「止められた!?」
シューミンは、この状況についていけていない様子なのが窺える。
それは、長年のメイド生活によるものだろうか。少し鈍っているのかと考えた。
「こんなので私を満足させることはできない」
シューミンの顔が強張りを見せる。
シューミンは、機転を利かせ剣を受け流し、後に大きく下がった。
「これが剣聖の力なのですね」
「まだまだ序の口だけどね、次は私から行くね」
次の瞬間、シューミンは空中に舞う。その光景は、誰にも予想にもしていなかったのだ。
なぜなら、シューミンは結界及び剣で防御の構えをしていたからだ。
それを遥に上回る、圧倒的な力量で押し潰されたのだ。
「飛んだね」
「――ググッ! 魔剣抜刀・黒雷閃」
マジか……バリバリ殺しにきてるじゃん、おもろ。
シューミンの技が決まることはない。
それよりも強い力で、上書きすれば良いだけなのだから。
その一撃は、あの戦いを思い出させるような一撃がシューミンを襲ったのだ。
師匠との初対決した時のような、一撃が結界ごと破壊しシューミンを気絶させたのであった。
高く打ち上げられたシューミンを、上空でお姫様を抱く王子のように抱き、下にゆっくりに着地した。
ミニシアも、先ほどの光景には尻餅をついていたが、すぐに立ち上がり駆け寄ってきたのだ。
「シューミン大丈夫ですか」
マメシアは、心配そうに抱き抱えられたシューミンを覗き込むようにみている。
「大丈夫ですよ、すぐによくなりますから」
私は、ミニシアを安心させつつポーションを掛けた。
だいぶ顔色も良くなって行くのが、目に見えてわかる。
そうして、目覚めたシューミンはこの状況にミーテルのように真っ赤になっていたのは言うまでもなかった。




