23話 お茶会
どうしてこうなった……その言葉に尽きる。
自分の好奇心を呪ってやりたいぐらいだ。
あの父親は、おそらく娘を使って私との接点ががほしかったのは、見え見えすぎる。
貴族社会において、より強い権力者にコネを持つことは、どれだけ価値のあることかわかっているからの行動だろう。
そして何より、他の貴族たちはすぐさま退散しているところを見るに、この伯爵家は領主様の次に権力でも持っているのであろう。
「剣聖少女様は、今どういった旅をなされていらっしゃるのでしょうか?」
「あてもない旅でしょうか、うまく言葉にはできませんが」
そう言うと、ミニシアは目をキラキラ輝かせとても興味のありそうな顔をしていた。
「お話中、失礼いたします。お茶の準備がもうすぐ整いますので、お屋敷に戻りましょう」
ミニシアは、私の手を引いてお屋敷の方に案内してくれた。その光景に、驚かない使用人は一人以外いなかった。
そしてそれは、点在していた貴族のお屋敷からの視線からも感じ取れていた。
「着きましたわ! ここが我が屋敷ですわ!」
自信満々の笑みでいうミニシア。
屋敷の門が開き、屋敷の中に入る。大きな正面玄関を通り抜け、奥の部屋へと案内される。
そこは、とても涼しく快適に過ごせるよう管理された部屋である。
使用人のメイドさんたちも壁際に立っており、いつでも始められる準備が整っていた。
とても豪勢な家で、緊張してうまく対応できないじゃないかと不安になる。
「剣聖少女様、先程のお話の続き聞いてもよろしいでしょうか?」
不安になっていた私自身がバカらしくなってくる。それほどまでに、ミニシアの方がとてつもなく緊張しているのが声の感じでわかる。
先ほどまで、天真爛漫の笑顔はどこに消えたのだか心配になる程だ。
「はい、どこから話しましょうかね、何か聞いてみたいことはありますでしょうか?」
「え、えっと、頭真っ白になっちゃった……え、」
とても慌ている。
「どうぞお落ち着きください。ゆっくりとお菓子とお茶でも召し上がりながら、お話をしましょう」
「お嬢様、ゆっくり一度深呼吸をなさってください」
この使用人メイド、さっきから思ってたけどだいぶ冷静だな。
他のメイドは、くすくすと笑っていたりしているのにミニシアに尽くしている感じがする。
先ほど、ミニシアに怒鳴れていた時も申し訳なさそうにしていたが、どこか怖かった。
なんか興奮しているかのような勢いに近かったような気がする。
相当罵倒されていたのにもかかわらず、この尽くしようそこだけは評価できる。
「ありがとうシューミン、皆さんも先ほどは申し訳ございませんでした、私が感情を抑え切れないばっかりに本当に申し訳ないございませんでした」
なんと突然謝ったのだ。それには流石に私を含め驚いていた。使用人も笑っていたのを後悔しているようだ。
(剣聖少女様、私は殺されるかもしれません)
飲んでいたお茶を吹き出した。
もちろん、即座に誰もいない床の方に噴いたため誰にもかかっていない。
「剣聖少女様、大丈夫でしょうか?」
「あー大丈夫です、大丈夫ですから」
あーびっくりした、突然何を言い出すのやら。確かにこの子は、今後恨みを買いまくっている。
(その話は、また後で詳しく聞きます)
そうしてその後お茶会は続いていく。
そして、信頼できる一人を残して三人でお茶会はあらためて始まったのであった。
「このクッキー美味しいですね」
「お口にあってなによりですわ、それよりそろそろお話を」
先ほどまでのお茶会では、終始ミニシアの方は緊張していた様子だった。
今では、だいぶ話せるようになっているがまだぎこちなさが残っている。
「何があっても転移は寝る時まで使わないようにしてください」
転移は、一日に使えるのは一回だけだ。それを使わずにいるだけで、残機があると同じなのだ。
「他にも何かありませんか?」
「使用人の信頼を回復してください、それだけでだいぶ生存率は上がりますから」
おそらくミニシアに対する信頼は、シューミン以外ほぼ皆無といって問題ないであろう。
それだけミニシアは、横暴な態度をとっていたのであろう。
「まぁ、あとは体力作りとか剣の素振りでもされてみたらよろしいのでは?」
「それはシューミンと一緒っていうのは大丈夫ですか?」
「二人で行動してください、いつ狙われるかはわからないですから」
そうして、話は続いていく。ミニシアは、また少し緊張した感じで重たい口を開く。
「あ、あの……剣聖少女様は、恋愛の経験はありますでしょうか?」
ミニシアではないが、頭が真っ白になる。
「え、ありませんけど。もしかして誰か殿方がいらっしゃられるのですか?」
あまりこういった話は、興味がなく師匠から教えてもらっていても完全に頭から抜け落ちているのだ。
「お嬢様には、婚約相手がおられるのです、王都ダイナールの第五王子なのです」
地方貴族が王都王族と結婚、これは一般的にあり得るのか私は全くわからなかったが、精一杯のお祝いの言葉を述べたのであった。
「それで私、ダンスが不器用すぎて苦手で教えてもらうことって出来ますでしょうか?」
「あ、ダンスの方ね、それは任せて!!」
「え、本当ですか!」
そうして、シューミンはすぐさま机などを片付け、いつでも踊れるようにしてくれている。
なんと早い動き、これが貴族のお屋敷に使える使用人なのかとかんしんしたのであった。
「ダンスは、師匠に全部習っていますからリラックスしてお楽しみにください」
ミニシアの手を取り、音楽に合わせて踊り出す。最初はぎこちなさがあったが、身を委ねてくれるから安心して踊れる。
「基本はできていらっしゃいますよ、緊張せず楽しんでいきましょう」
「はい!」
その間シューミンは、ミニシアの踊る姿を見て感涙の涙を流しているのであった。
「じゃあ今日はこれまでね」
「今日は色々とありがとうございました、またいらっしゃってくれますか?」
「もちろんだよ、とりあえず体力作りで街中を走ってみるといいよ」
そうして、夕暮れのなか宿探しへと赴くのであった。




