↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
3/3

第3話 ただいま! 私の大好きな世界

「いやあぁぁぁぁぁ!! 私の肉汁あふれる肉まん! トキメキ☆イルミネーションデートがあぁぁぁぁ!!!!」


 視界を埋め尽くす白い光の中で、私は必死に叫んでいた。


 ついさっきまで、私はスクールカーストの頂点にいたはずだ。

 暖房代わりに『プチ・ファイア』で温もりを供給すれば神と崇められ、冷えたお弁当を保温すれば大歓声を浴び、学校一のイケメンからおデートに誘われていた絶頂期!


 それがどうして! なんで、このタイミングで強制送還なのよーっ!


(嫌だ嫌だ嫌だ!! 戻りたくない! 元の世界に戻ったら、また劣等生の落ちこぼれに逆戻りじゃないのよぉぉぉ!!!!)


 バタバタとエア水泳のように暴れまわる私。

 だが、容赦のない逆召喚の魔力が、私の魂を強力に引き戻していく。


 吸い込まれる。ぐるぐると世界が回転する。

 次第に意識が遠ざかり――


 ◇


「――う、……ん」


 まぶたが、重い。

 全身が、まるで鉄の重りをつけられたみたいにだるい。


 ゆっくりと目を開けると、そこに見えたのは見慣れた木造の天井だった。

 現代日本のLED灯でも、四角い教室でもない。

 ここは……私の家、私の部屋だ。


「……アリア……? アリア……!?」


 かすれた声が聞こえて横を向くと、そこには酷いクマをつくり、目も鼻も真っ赤にしたママの顔があった。


「ま、ママ……?」

「あなた……! アリアが、アリアが目を覚ましたわ!!」


 ママの叫び声を聞いて、バタバタと激しい足音が階段を駆け上がってくる。


「アリア! アリアぁぁぁぁ!!」


 ドアが勢いよく開くと、ボロボロと大粒の涙を流したパパが飛び込んできた。

 さらにその背後から、息を切らせて駆け込んできたのは――


「アリア……っ! 本当……本当に目覚めたのか……!?」


 髪はボサボサ、制服はシワだらけで、いつものクールな面影が欠片もないカイだった。


「カイ……? なんでそんなボロボロなの……?」

「なんでって……お前、あの爆発から二週間も意識不明だったんだぞ!? 心臓だって一度止まって……高位治癒魔法の先生たちが集まって、ずっと治療して……っ!」


 カイはそう叫ぶと、私に駆け寄り、ガシッと強く抱きしめてきた。


「よかった……! よかったよアリア……! お前が死んじゃうかと……もう二度と口をきいてくれないかと……っ!」


 普段は絶対に見せない、子どものような泣き顔。

 私の肩にポロポロと温かい涙がこぼれ落ちていく。


「アリアぁぁ! よく戻ってくれた! パパとママは生きていてくれるだけでいいんだよぉぉ!」

「本当によかった……! 神様、ありがとうございます……!」


 パパもママも、私に抱きついて涙と鼻水でぐしゃぐしゃになりながら、何度も何度も私の無事を神様に感謝していた。


「……っ」


 胸の奥が、ぎゅっと熱くなった。


(……あぁ、そうだよね……)


 あっちの世界は、確かに最高だった。

 ザコ魔法でチヤホヤされて、暖房の神様扱いされて、毎日が夢みたいに楽しかった。


 でも――


 私のために、こんなにボロボロになるまで泣いてくれる人は、あっちにはいなかった。

 二週間も付きっきりで私の手を握りしめ、無事を祈り続けてくれるのは、この人たちだけだ。


(モテ期とか、スクールカースト頂点とか……そんなの、どうでもいいや)


 私は震える腕を伸ばし、カイと、パパとママの背中をギュッと抱き返した。


「みんな……ごめんなさい。心配かけて……。私、戻ってきたよ」


 ◇


 それから数日後。


 すっかり体力の戻った私は、久しぶりに王立セント・ルミナス魔法学園の門をくぐった。


「あ! アリア先輩! 無事復学されたのですね!」


 登校早々、後輩のルチアが話しかけてきた。


「ルチア。心配かけてごめんね」

「べ、別に心配なんてしてませんわ! ――ただ、先輩が死んじゃったら、誰をイジればいいか分からなくなっちゃうじゃないですか……」


 そっぽを向きながらも、ルチアの目には少しだけ涙が浮かんでいた。なんだ、生意気な後輩だと思ってたけど、案外可愛いところあるじゃない。


「ふふ、残念でした! 私はしぶといからね。これからも、細く長く生き残ってみせるわ! 『食卓のローソク』だけに!!」

「そっ、それ自分で言っちゃいますの!?」


 呆れるルチアと笑い合いながら、私は自分の教室へと向かう。


 もちろん、復活しても私の魔力レベルはスプーン一杯分だ。

 相変わらず基礎魔法しか使えないし、落ちこぼれの劣等生だし、授業では先生に怒られてばかり。


 だけど、何かが少しだけ変わった。


「ほらアリア、シャキッと歩け。病み上がりだからって甘えるなよ」

「えー! カイ冷たい! 二週間前はあんなに泣いて抱きついてくれたのに〜」

「な、なに言ってるんだ、バカ! あれは……えーい、もう忘れろっ!」


 真っ赤になってプイッと顔をそむけるカイの横顔を見ながら、私はクスッと笑う。


 現代日本の無双生活も楽しかったけれど。

 やっぱり、私の本当の居場所はここだ。


「ねえカイ!」

「……なんだよ」

「今日の朝ごはんのトースト、私が『プチ・ファイア』で最高の焼き加減にしてあげたんだからね! 感謝してよね!」

「あぁ、はいはい。サンキューな。……実際、お前の火で焼いたパンが一番美味いよ」

「ふふん、でしょー!」


 自分の指先を見る。

 相変わらず、シュコッとしか点かない小さな、小さな火種。


 でも、このちっぽけな魔法と、大好きな人たちがいるこの世界が、私はたまらなく愛おしい。


「よーし! 今日も元気に、魔法の練習だー!」


 青空に向かって拳を突き上げる私の声を、爽やかな風が優しく吹き抜けていった。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!


三話完結の短編ではありますが、筆者にとって、初の女性主人公&ローファンタジー? ものでした。

逆異世界転生的なものでも書いてみるか――てな発想で、割と安直に作ってみたものですが、少しでもお楽しみいただけましたら幸いです。


次作も、こんな感じのサク読み短編を投稿する予定ですので、お楽しみに!


もし「面白かった!」「アリアのキャラがいいね!」と思っていただけましたら、画面下の**【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】**にして応援していただけると、今後の執筆の励みになります!

ブックマークもぜひよろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。