第1話 空っぽの旅立ち
初めまして。初めて小説を書きます。
最初のこの作品は頑張って短めに終わらせるつもりなのでめっちゃ下手ですが読んでくれると嬉しいです。
ペタ ペタ ペタ ペタ
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水を垂らし、何故自分は歩いているのか、何故自分は濡れているのか、何故自分は何も覚えていないのか、何もわからないまま男は歩いた。
「止まれ。」
喉がヒュッと音を立てて縮まった。何も覚えていない?いや、一つだけ覚えていることがある。
この目の前にいるお方に逆らってはいけない。
そして男は考えることをやめ、その場に跪いた。
「よく来たなスード、私の息子よ。お前には使命を与える。やれるな?」
「はい。よろこんでお受け致します。」
目の前のお方の問いかけに逆らえる訳もなく、スードはただ真っ直ぐに何の疑問もなくそう答えたのだった。
◇
5年後
「スード様、失礼します。」
そう言って部屋に入ってきた額にちょこんと小さなツノを1つ生やし、切れ長な目をしているスーザンは、淡い紫紺の長髪を背中に垂らしながら呆れた、といった表情でため息をついた。
「またこんなに部屋を散らかして、こんなので人間界でやっていけるのですか?」
教室一つ分の大きさの部屋に朝日が差し込み、天然の光で照らされた部屋には薄汚れた古い本が床に散らばっている。
もっとも、内容には興味がないので真面目に読んだことは無いが。
他にこの部屋にあるものと言えば、所々隙間の空いた本棚と硬いベッドだけだ。
スーザンが言うには人間というのはものすごく綺麗好きで几帳面な性格らしい。そんな窮屈な所へこれから行かないといけない。
「ずっと魔界で食っちゃ寝してたかったなぁ。人間界行きたくねぇ。」
「しっかりしてくださいよ!スード様がしっかりしてくれないと私が魔王様に怒られるんですからね!」
そう言ってガミガミスーザンが怒るのはいつものことだ。
魔王様が生まれてから500年、一度も発見された事がなかったらしい能力、【再現】が俺にはあるみたいで、その能力を買われ、魔王軍幹部となったスードは今から1人で人間界の騎士団にスパイに行かされるのだ。
「こんな能力を持ってしまったばっかりに。
スーザン。今から俺と2人で遠くに逃げない?」
一応人間とはどう言うものなのか勉強をさせられているので人間らしい演技は出来た。
そんな軽口を言いながらも、魔王様に逆らう気は絶対に起きないので従うしかないのだが。
そう言っているうちに、スーザンは散らかった部屋を瞬く間に片付け終えていた。
スードの軽口を軽く流しながら、
「グチグチ言ってても仕方ないですよ。あなたにしかできないことがあるから魔王様も期待していらっしゃるのです。しっかりと役目を全うしてください。勉強も頑張ったんですから。」
まるで母親のような嗜め方をする。まぁ母親のことは覚えていないので分からないのだが。
「どうせまだ人間界に行く準備も出来てないのでしょう?早く済ませてください。いっつも準備が遅いノロマなんですから。」
「もう出来てるよ!俺仮にも魔王軍幹部だよ?ちょっと辛辣すぎない?処すよ?」
前言撤回。母親はこんな酷いことは言わないはずだ。
スードは不満げに当面の服とお金が入った袋を見せた。
「言っておきますが、人を襲ってお金や物を盗むのは絶対ダメですからね! 絶対に犯罪を犯さないこと!あと目立たないこと!」
これも耳にタコが出来るほど聞いた話だ。人間というのは法というものに縛られているらしく、いかにも窮屈そうだ。何もかもが自由な魔界とは根本から違うみたいだ。
「っても、魔王様を法に置き換えたらおんなじような物なのか。」
そう言いながらスードは扉の前に立つ。
「まぁ、生まれて初めての仕事だ。パパッと片付けてすぐに戻ってくるよ。」
「スード様はスパイとして行くのですから、少なくとも数年はこっちで暮らすことは出来ませんよ?」
「うえぇ!?」
驚いて絶望感に見舞われるスードと、何度も説明したのに、という呆れたため息をつくスーザンは、もうしばらく帰ってくることのない部屋の扉を開け、人間界に向かうのだった。




