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二十一

 次の日、つまり今日は学校へ行ったが、午後は早退してまた稽古へ行った。

 昨日は長いこと稽古をしたが、今日は、稽古を少しの時間つけてもらった後、二人で自主練習という形になった。昨日のことがあって気を遣ったのか、今日はおじいさんも薺も最初から別室にいて、今日もまた完全に佐々芽と二人きりになる。

 佐々芽とはお互い一人で練習し、ある程度練習したら二人で合わせてみようということになった。たまに話しながらも一人で練習し、二人で少しずつ合わせ始めたところで、部屋の扉が開いた。


「こんにちはー」


 明るく挨拶をしながら入ってきたのは、昴だった。昴が入ってきたので、一旦踊りを中断し、二人で昴の方へ寄る。


「昴さん!もしかして来てくれたん?」


「そうそう!当日見に行けないから、応援だけでもと思ったんだ」


「おおきになぁ」


「ありがとうございます」


「さくらさん!会えてうれしい!随分顔を見れなかったから、心配してたんだ。体調どう?大丈夫?」


「実は、まだ万全ではないんです」


(さくらさんは、具合悪いことをひけらかすタイプじゃないらしいけど、体はまだ完全に回復してないって言うように薺さんから言われてるし、性格とのバランス取るの難しいな……昨日、体調万全じゃないって言っても、佐々芽さんは特に気にする様子なかったから、大丈夫だと思うけど)


「そっか……なんかおれにできることあったら、やるから頼ってな!でも、まだ回復したってわけじゃないのに出るのは、さくらさんらしいな」


 昴は、快活にニカッと笑った。


「そうでしょうか?」


「らしいよ。毎年、祭り楽しみにしてたもんな」


(それ聞いたことないけど)


「そうですね」


(下手なこと言わないで無難に返そう)


「あ、そういえば、これ持ってきたんだ。おれの実家の団子」


「ほんま?やったぁ」


「わぁ、嬉しいです」


 奈々世は、テンションを無理矢理あげて、明るく振る舞うが、普段しない喜びを言葉で表したりはしゃいだりする演技に少し気恥ずかしくなった。


「休憩にして、一緒に食べへん?」


 気恥ずかしくなっているのに困る話だが、さくらはここで断るような人ではないので、佐々芽の提案に二つ返事を返す。

 そして、その場で、三人で団子を食べることになった。佐々芽と奈々世が団子を食べ、美味しいということを昴に伝えた後、昴も団子を頬張る。そして、団子を飲み込み、口を開いた。


「舞の稽古はどんな調子?」


「始まったばっかりやで」


「えっ、あと2週間くらいで仕上げるってこと!?」


「そうですね」


「はーー、すごいな。毎年毎年」


「そんなに動きが多いわけやないし、さくらさんもおるからなんとかなってるわ」


「二人で合わせて踊るところとか、めっちゃきれいだもんな!」


(二階堂さんは、去年のとか見たことあるのかな)


「二人の舞、じいちゃんもうちの商店街の人たちも、もちろんおれも楽しみにしてるから、頼むよ。期待してるな!」


「頑張るなぁ。せやけど、来れられへんて言うてへんかった……?」


「あ、そうだった……!!悔しいけど、応援してるな!!」


 昴は、その後も世間話などをし、ずっと話していた。奈々世は、下手なことを言わないよう、団子を咀嚼していて話せないふりを時折した。物を口に含みながら喋ることは、さくらはなかったらしい。幸いにもこの特性に救われた。

 そして、昴は、三人で団子を食べ終えると、邪魔になると悪いからと早々に帰って行った。


「昴さんはいつ会うてもすごいなぁ」


(すごい?すごいってどういう意味だろう……明るいとか?暑苦しい、いや、元気って言った方がいいか。その方がさくらさんっぽい気がする)


「いつ会っても元気ですね」


「元気やし、目指してることちゃんとやってる」


 佐々芽は、そんな昴を褒め称えるように微笑んだ後、「ええなぁ」とぽつりとこぼした。その瞳には、憧憬の念が滲んでいるように見えた。佐々芽は、こぼした言葉を誤魔化すように、


「練習再開せんとやな」


 と、なんてことないように昴が来る前にいた立ち位置に移動した。そして、「頑張らな」と呟いて踊り始めた。

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