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第9話:屋台?――今さら、そんな場所で?。

「……ご馳走様でした」

俺は店主に頭を下げた。温かい料理が、腹に沁みた。

と同時に、「このあら汁は、もっとこうしたらいいのでは」という改良点を考えていた。しかし、それを口にすることはなかった。それは、店主にとても失礼なことだと感じたからだった。

「……お会計は……」俺は懐を探る。正直、金はないが、屋台の料理代まで払えないことはない。

「1000万円」

店主はニッコリして、そう言った。

「……はい?」

俺は、おそらく、かなり間抜けな顔をしていただろう。大阪風の冗談かとも思ったが、店主は関西人ではない。いったいその金額は――

「払えんかね?」

「え、1000万円は、本気なのですか?」

「本気じゃよ?」

「……内訳を教えてください」

店主は笑った。

「この屋台一式と、ここでの営業権。合わせて1000万円。出世払いでも結構じゃよ」

――いったい、何を言っているのだ。

理解が追いついていない俺の顔を見ながら、店主は言葉を続けた。

「あんたなら、この屋台を引き継いでくれる。そう思ってね」

「……なんで、俺に?」俺は、混乱した頭のまま、素直に疑問をぶつけた。

「あんた、俺の料理を食べて、いろんな改良点が思い浮かんだろ?それは、まだ、料理を諦めてない証拠さ。俺ももう歳だ。この屋台の後継者がいてくれたら……と思ってたところで、あんたが現れた。運命みたいなもんだと思うんだがね」

「……」

俺は返す言葉がなかった。「料理人」であることを捨てられないのは、誰よりも俺自身が一番知っていた。でなければ、師匠の包丁を後生大事に持ち歩くわけがなかった。

この屋台の料理も、どう改良すれば良くなるかもすぐに気がついていた。だが、それを行うとコストが跳ね上がる。その高コストをどう抑えればいいか……そんなことまで、俺は食べながら考えていた。

この屋台の店主に、俺の心は全て見透かされていたのだ。

「……店主、ここで、修行させてもらえませんか?」

俺は、店主に向かって頭を下げた。

――まずは、売り上げ1000万円。それをここで修行して得るんだ。

俺の思いを知ってか知らずか、屋台の店主は、ホッホッホと笑うのだった。


次回予告:

屋台を任された俺。しかし、客は、俺の顔を見ると、去っていった。

「なんだ、いつものオヤジさんはどうした?」

信頼を一から構築する必要がある。俺の「味」を信頼されるにはどうしたら――

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