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第13話:噂は、静かに広がり始める。

「あの通りの路地裏の屋台に、美味い肴がある」ということが、先代の頃の常連客の間に、広まったらしかった。

あの日から、先代の常連客だったらしき人が、屋台を訪れるようになった。

彼らは決まってこう言った。

「聞いたよ。先代に負けないくらい美味いんだって?試させてもらうよ」

そう言って、客は、椅子に腰を下ろす。

俺は、注文を聞く。大抵は、「おすすめを頼むよ」という言葉が返ってきた。

俺は、その言葉を聞くたびに、気を引き締めた。この人たちは「本当に、先代並の美味い肴が食えるのか?」と、俺の腕を計りに来ている。ここで失敗したら、この客は二度とここには訪れないだろう。

季節ものを中心に、おすすめを調理する。正直、採算は度外視だった。客を引き離すまい、とその気持ちが先行していた。

「美味いね。美味いよ。でも……」とある日、客に言われた。

「これ、ちゃんと利益上がってる?この値段で、この食材。美味いけれども、心配になっちゃうよ?」

俺は、その客の言葉に、驚きを隠せなかった。

「……俺たちはさ、確かに美味しい物を食べたいけどさ、この屋台が無くなるのも嫌なわけ。だから、背伸びしないで、いいんだよ」

「……ありがとうございます。勉強になります」

俺は、その客に向かって、頭を下げた。

しかし、今の俺には、客の足を止めない方法は、これしか思いついていなかった。

――どうしたらいいんだ。俺は屋台商売に向いていないのか?

客の言葉が、俺の胸に棘となって突き刺さっていた。


次回予告:

常連客が戻り始めた。

だが、屋台には屋台の「掟」があった――背伸びをしないことだ。

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