処刑前夜
「お前達を国家反逆罪の容疑で拘束する」
傭兵団の詰め所が包囲され、王国軍が踏み込んできた時、ユーニスは仲間たちに抵抗しないよう指示した。
「俺たちは反乱を企んでいたわけではない。誤解が解ければ解放されるはずだ。傭兵団の運営そのものに後ろ暗いところはないしな」
特に初期メンバーは全員捕縛され牢に入れられることになった。皆、平民か精々男爵家や子爵家の跡継ぎにはならない子だったので一緒くたに一般牢…かと思ったらジークだけ一緒じゃなかった。ユーニスは、まあ彼は庶子とはいえ伯爵家の人間だしな…とあまり驚かなかった。
「ユーニスさんも僕たちも世の為人の為に頑張ってたのに、この扱いはおかしくないですか?軽犯罪者扱い?」
「はは…まあ、重犯罪者扱いされるよりはマシだと思っておこう。そう長くかからないだろうし」
彼らの入れられた牢は長期の拘留を想定した場所ではない。あくまで、裁きを受ける前の容疑者を一時的に拘禁しておく場所だ。詰所内の家宅捜索を邪魔されないための措置だろう。
「王国軍って本当、見る目ない人ばっかりしかいないんですかね。ユニさんが反逆だなんて。今時こんな、本気で騎士道物語に憧れてるロマンチスト、そうそういないでしょうに」
「え゛。そんなことないだろ。…ないだろ?」
「すんませんが俺もソカリスに同意っすね」
「いや…まあ、お話しの騎士はかっこいいですけど、実際の貴婦人とか騎士とか見ちゃうと幻滅するというか…」
「俺はユーニスさんについて行こうって決めただけなんで」
ユーニスはちょっとショックを受けた。初期メンはほぼ友人の延長だったので、同じように騎士に憧れている者もいると思っていたので。マ、正確には採用試験やらなんやらで現実の汚さを知って幼き日の憧れを持ち続けられたのはユーニスしか残っていないというだけなんだが。
「…俺は、捕縛されたことよりも今の方がショックかもしれない」
「そんなに?」
「ジークさんにも失笑されますよ」
その時は皆、ユーニス一人が処刑されるなんてことになるとは思っていなかった。よしんば処刑されるとしても、主要メンバー数人がまとめて処刑されることになるだろうと思っている者はいたが。
数日の拘留から解放されて後、ユーニスだけが再び捕縛されるまで、誰も彼一人が処刑されるとは思っていなかった。
「なんで、何でユニさんが死ななきゃいけないんですか、傭兵団で一番強いのは僕だし、採用権限を一番扱ってたのなら」
「ソカリス」
ジークが色々工作してねじ込んだという面会にやってきたソカリスに、抑えた声でユーニスは告げる。
「俺が団長だ。傭兵団に罪があるというなら、俺が責任を取るのも道理だろう。それに、俺の首一つでお前たちが助かるなら、かける意味はある」
「っ…ユニさんが言ってくれたら、こんな牢くらい…!国を出てしまえば、処刑だって」
「それはできない」
「何でですか」
「家族に迷惑が掛かってしまう。…まあ、養父母には俺が反逆者として処刑される時点でとてつもなく迷惑をかけてしまうが…」
彼一人、いや旅慣れしている傭兵団の者たちだけなら身軽に逃げることも不可能ではない。だが、彼の実家は土地に根付いた農家であるから、気軽に夜逃げもできない。他国に出たところで、簡単には次の生業を見つけられないだろうし。
それに、牢破りをしてしまえば、それは明白な反逆行為だ。冤罪ではなく、本当に傭兵団は犯罪者になってしまう。
「俺の頼みを聞いてくれるというのであれば、俺の代わりにこれからも戦う力のない人たちを守ってくれ、ソカリス」
「…。…本当に、ユニさんは…どうしようもない、ロマンチストなんですから…」
ユーニスが本心からそう頼んでいるのだとわかって、ソカリスは泣き笑いのような表情を浮かべた。




