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よくある失望


名目上、優れた実力を持つ者であれば、平民であっても騎士になることはできるとされている。しかし実際の所、今の王国軍には不正が横行し何の伝手もない人間が騎士になるのはまず不可能だった。

何故そんなことになっているかといえば、王の長患いにより政情が不安定になっているからである。早ければ数年内に代替わりすることになるだろうと言われている。ただし、まだ王太子は指名されていない。王子は腹違いで複数名いる。第二王子だけは自分は王とか向いてないからと神殿に行くことを希望しているが、王がそれを認めないことから、王は第二王子を王太子に指名したいのではないかと十年以上前から噂されている。

それぞれの王子がどのような人物か、詳しいところまでは下層まで伝わってこないものの、誰もが認める立派な王子というのはいないようだった。なにしろ王太子は彼が最有力だ、という話がない。指名されるのではないかと言われていた第二王子すら、目立った功績はないのだ。何もしてないというわけではないだろうが。

まあそんなこんなでユーニスは騎士見習いの採用試験を受けたが落ちた。ジークは、落ちたのはユーニスが平民で賄賂とか出せないからだ、とうんざりしたような顔で言った。実際、へなちょこな剣術を披露していた者が貴族だからか採用されている。

「いっそ傭兵団をやろうぜ」

ジークの提案にユーニスはすぐには頷けなかった。彼は別に戦いや強さを求めて騎士を目指したわけではないのだ。極端な話、それは手段に過ぎない。なんなら、戦わずに済むならその方がいい。

だが、ジークは他の友人にも声をかけていたらしく…そして、声をかけられた者たちも乗り気だったらしく。気が付けば、新しく立ち上げる傭兵団の団長にユーニスが就任するということになっていた。提案したジークは副団長である。単純な戦闘の実力でいえば、二人より強い者もいるのだが、そのド天才であるソカリスは

「え、僕は上に立つのとか全く向いてないんで。ユニさんのがいいですよ。てか僕は言われた通りに剣だけ振るってる方が性に合うんで」

と拒否した。そんな感じでユーニスは傭兵団の団長になった。


団長および副団長の仕事は戦い以外にもある。資材の管理だの、余所との交渉だの、資金の調達だの。ユーニスはひいひい言いながらやっていたが、ジークはある程度心得がありそうだった。不思議になって聞いてみたところ、もう長い付き合いだしということでジークは彼の素性をユーニスに話してくれた。

ジークはとある伯爵がメイドに手を付けて産ませた庶子なのだと。母は既に亡く、頼れる親類はいない。家を継ぐのは当然、腹違いの兄であることが生まれる前からわかっていて、いずれ家を追い出されることもわかっていたから、一人で生きる手段を身に着けるために訓練所に通っていた。伯爵家で最低限の教育は受けたものの、そこに居場所はなかったし、父がジークに関心を持っているわけでもなかった。王国法で決まっているから最低限の手はかけてくれただけなのだと。

「驚いたか?」

「いや。多分下級貴族の出あたりなんだろうなとは思っていたから。伯爵だとは思ってなかったけど」

「…そうかよ」

ジークは平民であることがはっきりしている者たちより所作にも気品があった。上位貴族ほど明らかな貴族感はないが、礼儀作法を特別に学んでいる者の振舞いではあった。言葉遣いは態と粗野にしているようですらあったが。

「伯爵家はお目通りが適うんだろう?王族の方々とお会いしたことがあるのか?」

「政略に使える娘ならまだしも、放逐される予定の庶子にデビューなんてさせるわけないだろ。俺は社交界に出たことはないよ」

「そういうものか」

「そういうものだ」

あくまで平民の生まれ育ちであるユーニスにはピンとこない。が、本人がそう言うならそうなんだろう。


人里近くに現れることは滅多にないが、この世界には魔獣と呼ばれる、普通の獣より厄介な獣がいる。その討伐も軍や傭兵の重要な役目の一つだ。王都の周辺は数十年単位で見られていないが、他の領地だと数年に一回くらいは食害など出てくる。竜なんかは流石に伝説の扱いだが、魔獣化した狼や熊なんかは毎年各地で報告がある。

傭兵団に入ってくる依頼はそういう魔獣や盗賊なんかを相手にするものが中心だった。正確に言えば、被害があっての討伐依頼と、街を移動する商人の護衛依頼があるんだが。本来であれば、軍や騎士のすべき仕事だと依頼者も仲間たちも口にする。やらないから彼らに仕事が回ってくる。難儀な話である。

ともあれ、依頼を堅実にこなしていけば、傭兵団の評判は上がっていったし、加わりたい、後援したいと申し出てくる者が出てきた。ユーニスはあまり分け隔てなく受け入れようとしたが、ジークがそれにストップをかけた。悪意をもって彼らを貶めようと企んでいる者も紛れ込んでるかもしれないからと。

「貶めるって言ったって、俺たちはただの傭兵だぞ?」

「ああ。だが、軍だの騎士だのの連中は面白くないだろ?騎士に"なれなかった"俺たちが、あいつらより評判がいいのは」



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