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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第2章不死殺し編
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第44.5幕 風咲アリサ

お兄ちゃんが必死に戦っている。なのにうちは何も出来ない・・・

なんでこんなうちを雪さんはここへ連れてきたんだろう


「アリサは僕がここに連れてきた理由を考えてるのかな?」


雪さんは薬師寺さんのカバンの中身を漁りながら言う


「はい」


短く答えた。さっきも虎姉が守ってくれなかったら無傷で居られなかっただろうし死んでいた。明らかにうちが戦場に立っているのは場違いにも程がある


「そうだねー。理由としては将鷹から護ってあげて欲しいってお願いされてるのも有るんだけど、1番は僕の補佐として適任だったからかな」

「雪さんの補佐?」


訳が分からないうちはただ雪さんに連れられここに立っているだけなのに。そんなのが補佐になっているはずがない


「そう。僕って結構こういう場で緊張しちゃうんだ。安心できる人が居てくれるだけでもかなり変わるから僕はアリサを連れてきた。それにアリサは特別な力が有るからね。僕や将鷹、虎織、月奈でさえない様な特別な力がね」

「それって・・・」

「おっと僕とした事が少しおしゃべりが過ぎたかな。やっぱり将鷹に似てるからついつい喋っちゃうのかな?」


雪さんはそう言いながら薬師寺さんのカバンから瓶に入った薬品を取り出していた


「ちょっと待て東雲、それ俺に飲ませようとしてないか?今あんまり身体動かないから一気飲み無理だって!」

「あー確かに寝っ転がったまんまだと飲みにくいよね」

「アリサ、薬師寺の身体起こしてあげて。あと胸当たらない様に気をつけて」

「いやそう言うのじゃなくて!覚悟できるまで待てっての!」


薬師寺さんの悲痛な叫びがこだまする中、お兄ちゃんの方へと視線を向けるとお兄ちゃんが首を掴まれ宙に浮いている状態だった


「お兄ちゃん!」

「アリサ、平常心平常心。あの程度じゃ将鷹はどうこうならないよ」


雪さんは袖から白木の鞘を2本取り出しながら言った。何故こんなに余裕があるのか分からない・・・お兄ちゃんを信頼しているのは言葉から分かるけど、でも・・・


「僕はね、将鷹を信じてるだけだよ。この程度で死ぬような奴じゃないし土壇場こそ真価を発揮する、そういうのが風咲将鷹だと思ってる」


2本の鞘を紐で結び魔術式を刻んでいた。言うか言わないか迷ったけど雪さんに質問をする


「正直な事言っても・・・?」

「僕が不気味って?」


言おうとする事が直ぐにバレた。そういう所も含めて不気味、というのは語弊があるから不思議という方が正しいのかもしれない。でもうちは首を縦に振る


「はい・・・」

「それ昔会ったばっかりの将鷹にも言われたよ」


雪さんは笑いながら言う。まるで思考が読まれているみたいで怖いとも言える


「ごめんね。僕昔から先読みっていうかそういうのできちゃってついこういう会話になっちゃうんだ」

「ただの先読み?」

「そう。ただの先読み。魔術でもなければそういう特殊技能でもない。アリサは将鷹や虎織みたいに接してくれなくても良いよ。この場から離れるも良し、僕に黙ってって言うも良し、これは僕には読めない選択だから好きにしてくれていいよ」


破裂音が響く。お兄ちゃんが何かしたらしい


「雪さんの事もっと知りたいかも・・・」


うちの口から出たのは自分でも意外な一言だった


「寸分違わない回答だね。流石兄妹って所かな?いや、従妹か。じゃあまずはひと仕事、アリサにしか出来ないお手伝いしてもらおうかな。話は仕事が終わってからね」

「うちにできることなら・・・」

「まずは将鷹から預かってる風切を貸してもらえるかな」


雪さんの指示通り背負っていたお兄ちゃんから預かった刀を下ろして雪さんに渡すと鞘から刀を引き抜いて白木の鞘へと納めた。抜刀して納刀する姿は見蕩れるほど美しかった


「それじゃあ次は視力というか感覚を貸してくれるかな?」


うちは眼鏡を外しお兄ちゃんの方を見る。視界はぼやけているけどハッキリと分かる


「左側に五歩」

「はいはい」

「前に2歩」

「OK」

「そこから投げればお兄ちゃんの目の前に刺さると思います」

「よーし!行ってこい!」


刀と鞘は放物線を画き、お兄ちゃんの元へと飛んでいく。刀と鞘は予想通りお兄ちゃんの目の前へと届いた


「うん。やっぱりアリサはそういう直感とか感覚が優れてるね。僕の見込み通りだよ。連れてきて良かった」

「ありがとうございます」

「さて、これからは将鷹の戦いだから僕達はおしゃべりしながらここで見物しようか」

「じゃあまずは雪さんの好きな物教えて貰えますか?」

「えへへ、やっぱり将鷹そっくりだね」


雪さんは無邪気に笑いながら好きな物を語る。これは長くなりそうだ

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