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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第2章不死殺し編
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第37幕 辻井禍築

「どんだけ湧いて出てくるんだよ!」


我輩は文句を言いながら人間モドキをRSH-12とグロック迎撃している。片手で撃つのは中々しんどいし命中率も下がる。せめて両方同じ銃ならマシだったのだろうが・・・


「将鷹、オートマチックの方貸してくれ!」


蓮の声だ。多分札か魔力が少なくなって来たんだろう。符術士の欠点は魔術式を刻んだ札が無くなると普通の人間と大差ないという事だ。まぁ大概の符術士はそこら辺を考慮して身体を鍛えたりする訳だが


「いくぞー」


一声かけて蓮のいる方向へとグロックにセーフティを掛けてからポイッと投げる。ついでに予備のマガジンもだ。

投げながらも射撃は続けている。あと1発撃ったら弾切れだな・・・


「サンキュー!」


発破音と共に感謝の言葉が聞こえた。器用なやつだ


「将鷹!鎖お願い!」


今度は虎織の声だ


「あいよ!」


短く応え、鎖を出してから人間モドキを1匹引っ掛けて振り回す。

普通人間モドキなら遠心力があっても引き裂けないがこいつらは骨が無い為容易に引き裂ける。虎織は鎖に引っ掛からないように縄跳びのように鎖を跳んで避ける。屈めば当たらないのだがな・・・にしてもちょっと子供ぽい所あるよな虎織は。そこがいいんだけどさ


「本当に蝋人形って感じだな」

「人が原料なのか疑わしいよね・・・人が原料じゃないなら行方不明の人達ってどこに行ったって話だけど」

「あぁ、食われて魔力に変換されたかどこかで捕まっているのか気になる所だな」

「仲良く話してないで他の奴ら助けに行くぞ!」


蓮の一喝で歩き始めようとした瞬間オレンジ色の何かが目の前を通る


「何だ!?新手か!?」


蓮が慌てふためく中、鈴と下駄の音が響く


「やぁ親友。久方振りだね」


赤、オレンジ、金色のメッシュが入った黒髪に真っ白なワンピースを着た女性というか神様、天照様がスタスタと歩いてくる


「ご無沙汰しています天照様」

「様は付けなくていいといつも言っているし何より愛称で呼んでくれたまえよ。ワタシ達の仲なわけだし」

「かと言って神様とあまり親しくしすぎるのは・・・」


天照様は顔をずいっと近づける。陽だまりのようなふわりとした暖かい匂いが漂う


「ワタシと君は親友ではないのか・・・?」


悲しそうな眼をしながら言う


「親友じゃないとは言いませんけど・・・」

「なら構わないじゃないか!日ノ元のほぼ最高神のワタシが良いと言っているのに」

「うーん・・・分かりました・・・なんとお呼びすれば?」

「テン、ミカ、ヒメ好きな呼び方をしてくれ!」


まともなのがねぇ!でもまぁ日照様を真似るなら天ちゃんか・・・


「なら天ちゃん」


なるべく苦笑いが顔に出ないようにやんわりと笑って名前を呼ぶ


「ん゛ん゛!雪城の御嬢さんいっつもこんな感じなのかい?」

「あーまぁうん。いつも通りと言えばいつも通りですね・・・」

「えっ?なに?なんか不味かった?」

「将鷹、やんわり笑顔で女の子の名前呼ぶのは今日から控えよっか」

「不気味だったか?」

「不気味ってわけじゃないんだけど死人が出ると思う・・・」

「表情が凶器になるのか!?」


思わず突っ込んだ。そんなに怖い顔はしていないはずだ・・・!


「で、天ちゃんが来たって事は御守りの件ですかね?」

「そうそう、それそれ。はいこれ、ワタシ特製の御守りだよ。今回は変な結界で隔離されようが君を守ってくれるさ!それと雪城の御嬢さんにも同じのをと」

「ありがとうございます!」

「では有難く頂戴いたします」

「いいよいいよー。あとアイツの正体教えてあげよう。君たちに死なれてはワタシ達も困るからね」


天照様、もとい天ちゃんはそう言うとどこからか取り出した扇子を広げ口元を隠し言う


「あれはね、この地形に魔力を染み込ませているだけの存在さ。本体も不死だろうけど完全な不死っていうのは概念以外ありえないからどうにかなるはずだよ」

「天ちゃんは本体の居場所は把握出来てるんですか?」

「もちろん。ただそこまで教えちゃうと面白くはないから教えてあげないけどね!」


面白いか面白くないか神様の判断基準はだいたいそこらしい


「それじゃあ健闘を祈るよー。ワタシはこれから日照に頼まれた布の買い出しに行かなきゃだからね。ただ君たちの事はしっかりと千里眼で見ているからね!ヤバそうなら駆けつけてあげよう。まぁ君には沢山の仲間が居るから問題ないだろうけどね!1人で考え込むより誰かに頼るのが吉だよ」


そう言うと共にオレンジ色の炎が目の前を通り過ぎ天ちゃんは最初からそこに居なかったかの様に消えていた


「嵐みたいな神様だな・・・もっと引きこもり系の静かな神様だと思ってたんだが・・・」


蓮が唖然としながらそう言う。まぁそりゃそうだろうな。天照大御神は最近では引きこもりキャラとして書き物には書かれている訳だし


「天ちゃんは最近活発だからな。漫画とかのイメージを払拭してやるって」

「あっ、そう言うやつか」

「少し前までは割とイメージ通りの神様だったんだけどねー」


虎織がそう言いながら御守りを首からかけ着物の中へと仕舞う。胸元がチラリと見えそうだったので視線を逸らしながら我輩も御守りを首にかけながら呟く


「本体を探さないとだな・・・」


魔力とかのソナーを使えば見つかると思ったが土地全体に魔力を張り巡らせていると言うのならそれで探すのは無理だろう。何か手はないか・・・?答えが導けないような物は答えをくれるだろう。


・・・最後に天ちゃんは仲間を頼れと言っていたか


「そうだ、禍築なら・・・」


禍築に連絡を入れる。電話をかけると直ぐに禍築が応える


「おはようございます先輩。要件はなんですか?」

「禍築、この付近に怪しいヤツは居るか?」

「今はそこの無限湧きするゴーレムっぽいやつと人間モドキ以外は怪しいのは居ないですかね。ただ蓮先輩に追ってもらってた女と先輩達を影で呑み込んだ奴らが逢坂付近に居ます。アレらの対処は百合コンビと桜花さん、東雲先輩、ヴァンさん、ローズさんに任せて吉音先輩、雪城先輩、蓮先輩と一緒にその2人を追ってください」


カタカタと凄まじい速度でパソコンのキーボードで何かを打ち込んでいる音が常に聞こえる。華姫全域の監視に状況把握、更には対策の立案等を独りでやっていると考えると禍築の存在の有り難さは異常だ


「そうか。ありがとう。引き続き観測を続けてくれ。たまには休憩入れろよ」

「えぇ、適度にサボりますよ。普通の勤務の時にですけどね」


ハッハッハと禍築は笑うがタイピングの速度は落ちるどころか上がってすらいる気がする。そしてご武運をと禍築が言ってから電話が切れた


「今から月奈連れて逃げた2人組を追うから手伝って欲しい」

「わかった。行くぞ」


我輩と蓮、虎織で走り出し月奈を探す。


「ウザったいなぁ!」


月奈の声が聞こえた。

その方向へと走りこの眼で修羅の如く暴れる雷を纏った月奈を捉えた


「月奈!」


大声で月奈を呼ぶ。普通なら聞こえるはずだがアレを使っている為か全く聞こえていないようだ。

月奈の周りの人間モドキを短刀で斬りながら月奈に鎖を絡めて引っ張り、月奈を抱えて走る。強めの静電気みたいな痛みが手を襲ったが気にしない。


「にゃっ!?」


いきなりの事で驚いたのか猫みたいな声をあげながら我輩の肩の上でじたばたする。肩に鎖を通して微弱な電流が流れてマッサージみたいで気持ちいい


「あっ、将鷹か・・・って乙女をこんな扱いするのは感心しないよ!人攫いかなにかかと思ったよ!」

「ごめんごめん。声掛けても聞こえなかったからちょっと荒っぽくなった」

「あーごめん。アレをあそこまで使うと雷がバチバチいっててあんまり聴こえないんだ・・・」

「そうだろうな。あんまり無茶してくれるなよ」

「はーい」


「で、今からどこに向かうの?」

「逢坂。元凶の2人を討ちに行く」

「了解。逢坂に着いたら教えてねー」


月奈はそう言うとぐてりと糸の切れた人形のように眠ってしまった。

身体に負荷が掛かる魔術式を使っていたのだ当然だろう


月奈を肩に抱えたまま我輩は虎織、蓮と共に逢坂へと向かって走る

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