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振り出しに戻る

「どうしたんだい?」女将は、よほど仏頂面をしていたのだろう、宿に戻ってきた私の顔をのぞき込むようにして言った。


「今度、ノード102に行く定期便に乗れってさ」私は、既にタクシーと共に去ってしまった、吸い付き女の事を思い出しながら言った。


「多分、それが正解だな」女将は、そう言うとテーブルに座り、私にも座るようにと目配せをした。


「正解なんか、判らないよ。」私は、一旦席に着いたものの、目が調理場の方に向かって泳いだ。その方向に、酒類を入れた棚があるからだ。

「飲もうか」と女将は、察してくれた。


 テーブルにどんと、一本のボトルと二つの粗末なグラスが置かれた。その両方に、アルコールを薄めて作ったような、ハードリカーが注がれ、一つが私の前に置かれた。


「後は手酌でやりな」

最初の一杯は、一気に飲み干した。行きたい場所に、行かせてもらえない、抗い違い権力に私は尻尾を丸め、股ぐらに挟み込んで、泣いている。


「正解か・・・強いものには、巻かれろだね」


「いや、ここを脱出するには良い時期かもしれない」女将は、ちびちびと飲んでいた。


「ここは、危険だ。」


「危険だって?どこかだ?」私は、2杯目を半分飲んだ。


「あんたも見ただろ、このノードは徐々に中央から離れつつある」

私は頷いた、居酒屋香良守では確かにその兆候があった。そのための準備も整いつつある。多分、私はそれを報告するだろうし、私でなくてもそういう情報は既に嗅ぎつけられているだろう。その2者の違いは、私は政治に無関心だから見たことを伝えるだけであり、そうでない者は、自分なりに危険因子の存在を報告に含ませるという事だ。


「だから何だ?」


「ノードに居る管制官長官は、宇宙の航行を監視する任務以外に、ノードの政治的な長でもある。そういった訓練の必要から、どこの管制官は中央で教育を受けて、各地に赴任する。本来は、中央の傀儡の立場だ。なのに、自立を目指す者が現れだした。」


「なら、交代させるだけだろ?」


「住人が、それに反対したら?自立の道筋が見えているノードで、酸素税から解放される目安があるというのに、それを受け入れる事ができるかな?」


「反乱が起きるかもしれないか・・・」


「しかも、最近はここだけじゃあない。クーパーが率いる。阿呆星の近くのノードでは、独立を宣言したうえ、政府軍を追い払った。」


「流石に2回も辛酸を舐める訳にはいかないだろうね」


「そういう事だ。多分、中央軍は意地でもこのノードを落とすよ。そして正しい教育を受けた管制官長官を置くだろうね。」


「判った判った。あんたの方が情報通だしね。チケットを取ったら、飲みに行くよ。どこか素敵な飲み屋でもないかな?」私は、席を立った。


「おふくって店が良いよ。日本料理の店だが。安くも高くもできる。なにより、此処がステーションである事を忘れさせるような料理がでるよ」女将は、笑みを浮かべた。


「そういう店は、早く紹介して欲しいものだったよ」


 私は、そこで久しぶりの白米を食べた。テーブル席の一つでは、作業服を着ている男が、難しい顔をしてPCを操作していた。そこへ、店員の女性が、大きめの茶碗をひとつだけ持ってきて、男のPCの横に置いて去って行った。


 なかなか、良い店であったので、私はノード103を去るまで、この店に通う事が多くなった。


 そして、私が去ってのちこのステーションは女将の言った通り、ろくでもないことに巻き込まれた。


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