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牢屋住まいのプリンセス  作者: 浦 かすみ
王太子妃編
15/15

パーテ住まいのプリンセス

ちょっと短め最終話です

今日は仕切り直しでフォーデ様の薄毛外来の診察に付き合っていた。


私について来て欲しいと言う割には、診察している状態は見られたくないというエベレスト級のプライドを見せてくる反射神経亀並みのフォーデ様。


今はエイシュリットと待合室のソファに座ってフォーデ様の帰りを待っている。


待合室の奥の扉から小柄な女性が出て来た。出で立ちから察するに医院の先生のようだ。私と目が合うと


「診察待ち?おかしいな~今はごにょごにょ…の外来の方の診察中よね?かち合わないように予約を…」


と言ってきたので、慌てて否定する。


「いえいえ、私は付き添いで~」


医院の先生は笑顔になると


「ここ冷えない?ひざ掛け持って来てあげようか?妊婦さんには辛いでしょ?」


と言ってきた。


え?


エイシュリットと2人で固まってしまった。先生は私を見て、エイシュリットも見ると


「ご主人に似た魔力の子ね!元気一杯ね」


と、更に追い打ちをかけてきた。


え?


思わず自分のお腹を診る。確かに最近お腹の調子が悪いような、変な感じがしていた。


「妊娠ですか?」


私がそう尋ねると、医院の先生はそこで気が付いたみたい。


「あらっ?!ご存じなかったの?どうしましょう…言って良かったのかしら…」


と、オロオロし始めた。


私の横でエイシュリットはワナワナ震えていた。


「アイリエッタァァアアア!」


「静かにしろ!」


診察室から飛び出して来たフォーデ様が怒鳴り込んできた。すみません…頭に魔術印の紙を乗せたままの、銀のアイドルの間抜け面をバッチリはっきり見てしまいました。そんなに睨まなくてもいいじゃないですか?不可抗力なのにね?


そんなこんなで、いきなりの妊娠発覚だ。つわりなにそれ?状態だったのだが…体はおかしなもので、妊娠だと分かると、何やら食欲減退してきたようですな。ああ、プリン食いてえ。


そして毎朝飲んでいたバナナっぽい果物のスムージも…飲みにくくなってます…うぷっ。


最近の私は、部屋の中にパーテをたてかけてラグの敷物の上に裸足&ごろ寝、そして時々昼寝の繰り返しだ。


またIT(ソレ)がパーテの隙間から覗いてるな…


「イシュ…心配しなくてもただ眠いだけだから…」


パーテを横にずらして中に入って来ると、イシュはラグの上にブーツを脱いであがってきた。そして寝転がる私の枕元に座った。立ち上がろうとする私を制しながら、背中にクッションを挟み込んでくれる。


「ありがとう」


エイシュリットは蕩けるような微笑みで私を見ている。


「イシュ…ヤタガラス様に変身してみせて~」


そう…あれから人目がある所では絶対にペンライトを取り出してくれないけど、二人きりの時は渋々だけどヤタガラス様になってくれる。


光に包まれて…そこには黒い羽と金の羽を持つ私だけのヤタガラス様。


金と黒のオッドアイに変化しているエイシュリットの瞳を見ながらにんまりと微笑んでしまう。


結局の所、エイシュリットが勇者の剣の所持者になったものの、魔を祓う大規模な討伐も無いので、クラバッハによる『うちぃ勇者の剣持ってますけどぉ?いいでしょ?』なマウンティングのみに勇者の存在は使われるだけになっている。


「そのほうがいいと思うよ。使われずに終われるのが一番いい」


エイシュリットはその話題が出る度にそう言う。うちの旦那様は考え方まで格好いい。


パサパサ…エイシュリットの背中の羽が私の体に掛けられている。あったかい~


「気持ちいいな。羽の中温かいね」


エイシュリットは嬉しそうに私の横に寝転んだ。あ、これ昼間からごろ寝だね。


私のお腹の中の子供もごろ寝が気持ちいいのか、魔力がクルンクルンと跳ねている。


「お腹の子、元気だよ」


「そうか…早く会いたいな」


羽の中が気持ちいいから瞼が下がってくる。


「……」


■   □   ■   □   ■   □


よく眠っている。


起こさないようにソッとアイリエッタの体にブランケットをかける。変身を解いてパーテの外に出ると、カリアとルイナーデが笑顔で立っていた。


「眠っているから時々様子を見てやってくれ」


「畏まりました」


そして、執務室に戻るとすっかり髪が元通りに生えたフォーデが、キリッとした目を向けてきた。


「またさぼってたな?」


「パーテの中にお住まいの我が妻の容態を見てきたんだ」


「悪阻はどうだ?」


アリウムが聞いてきた。クリフカも心配そうな目を向けてくる。


「うん、辛そうではあるがヘンシンを見せたらご機嫌だった」


フォーデはフンッと息を吐いた。


「折角の勇者の剣なのに、妃殿下に見せる為だけの代物になっているじゃないか?」


「贅沢な使い方だな」


フォーデもアリウムも実はまだ一度もあの姿を見せてない。あの小さいペンライトという勇者の剣を呼び出す魔道具?を2人に見せたら薄気味悪がられたので、それきりだ。


本当に勇者の剣は摩訶不思議だ。あの姿になっている時は五感も冴えて別の生き物になっている気もする。そりゃ気味悪いのは当然だろう。アリウムはかなりの剣の使い手だから直感で、あのペンライトが恐ろしい物だと気づいていると思う。


フォーデの場合はただの怖がりだけど…


しかしさっきのごろ寝は気持ち良かったな…。俺もアイリと生まれてくる子供と一緒にパーテの中で生活してみようかな…

そして親子でパーテの中にお住まいの王族達になっていきます^^

ご読了ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言]  自分あんまり頭が良くないので、人が多いと誰が誰やらこんがらがっちゃうんですよね。兄弟も多いから似たような名前も多いですし。  こう、エンドロール的に最後に、国別簡易登場人物一覧とかあったら…
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