拾八章─村娘の恋④─
瞳「あれっ、毅…」
毅「よ、よ~う、瞳。大丈夫か?」
瞳「う、うん…」
毅「大変だったんだぜ、あの後長田が暴れてよ、押さえつけるのにはちと体力を…」
瞳「毅じゃないでしょ。」
毅「は、はぁ?何言ってんだよ。俺以外に誰が─」
瞳「あたしが気絶したのは、長田が彼にナイフを刺そうとしたときよ。そこまで見れば、大体わかる。」
毅「ったくあの野郎、かっこつけやがって。」
瞳「何言ってんのよ。助けてくれた恩人でしょ。」
毅「ンンまぁあいつはいいとして、お前、長田に告られたってのはホントか?」
瞳「う、うん…」
毅「まぁ振りたくなる気持ちもわかるが、あいつが俺を引き合いに出してきたのには驚いたなぁ。」
瞳「どうせ幼馴染みで仲良くしてるから、勘違いしたんでしょ。」
毅「…そうなのか?」
瞳「?」
毅「てっきりお前が俺の事を好きで、それを理由に断ったもんだと」
瞳「ばっかじゃないの。何自惚れてんのよ。」
毅「即答ッ!?」
瞳「あたし、まだ好きな人いないし。」
毅「じゃあさっきの野郎とか?」
瞳「何であたしが、名前も知らないような人を好きになんなきゃいけないのよ。」
毅「知らないのか?」
瞳「下の名前が『健』だってことぐらいしか。」
毅「へ~え、健かぁ。」
瞳「何よ。」
毅「今度会ったら、お礼言わないとな!」
瞳「もちろん!」
優「ったく、何でそんな面倒なこと、したんだよ。」
健「あん?」
優「何で名前言わず、瞳のところから去っちまったんだ?」
健「一つ、思ったことがあってな。」
聡「何を?」
健「言っちまったら、どっちかが消えることになるだろう、って。」
明「はぁ?」
健「まっ、それも、後で話すさ。」
流「なんだか、桜さんがいなくなってから、多くを語らなくなりましたね、彼。」
宰「彼女だけが、真の意味での、心のオアシスだったのでしょう。僕らがどれだけ足掻いても、所詮彼女の立ち位置には、到底辿り着けないということです。」
調「いえ。もしかしたら…
─それだけでは、ないかもしれません。」
凖「えぇっ!?事情聴取、もう終わっちゃったんですか?」
東「いやぁ、まさかこんなに簡単な事件だとは思わなくてな。」
鈴木「あとは物証を待つだけになっちゃって。」
東「一応、今から現場に行くのだが、君も行くかい?」
凖「誰なんです?」
鈴木「はい?」
凖「あなた方は、誰を犯人だと、思ってるんですか?」
東「そりゃあもちろん、野村幸久だろう。目撃証言も出たしな。」
凖「!?誰の証言ですか?」
東「水野さんだよ。彼女が外から、ベランダ伝いにトイレを行き来する男を見たと─」
凖「捜査は続けますが、物証の調査を止めて、令状も取り下げてください。」
鈴木「何故?彼はもう犯人だと決めてかかっても─」
東「他の容疑者である牛島さん、白縫さん、西京極さん、緒河さん、長羽くんは、それぞれ犯行時刻、牛島さんと白縫さんの二人、西京極さんと緒河さんと長羽くんの三人で一緒にいたと言うのは、もう裏が取れているんだ!一応、目撃者である水野さんのアリバイも確認したが、親友の戸張 唯さんと一緒にいて、彼女に犯行は─」
凖「戸張さんに話を聞いてみましょう。」
東「ええっ!?」
凖「早く連れてきて!水野さんと二人で!でないと証拠を消されてしまいますよ!」




