拾七章─健─
凖「んで?何もないじゃないか。」
翼「何か、ある筈なんだ。彼の人格からして、ここにヒントがないと、人類は、彼の人格を、誤解していたことになる。それに─」
凖「それに、何だ?」
翼「何か、僕等は誰かに、誘導されている、そんな気がする。」
凖「俺はお前に誘導されて、奴の人格を誤解しそうになってるけどな。」
翼「何?」
凖「体細胞クローンなんて、普通、本人の許可なしでは造れない。受精卵を使ったクローンでも一緒だ。つまり奴は、犯罪であるヒトのクローンに携わっている。誤解のしようがないじゃないか。奴は悪だ。体細胞クローンは、少しでも道を踏み外した人間を、容赦なく『存在意義なし』とするシステムだ。家畜を造れば人間は得をするが、ヒトを造れば人権侵害だ。」
翼「…君は、少々思い違いをしているみたいだ。昨日のチンピラ、覚えてるかい?」
凖「覚えてるさ。あの鬼畜、子連れの女の人に怒鳴ったり─」
翼「僕に対する、『畏怖』がなかった。」
凖「お前には悪いが、奴の性能なら、余裕で─」
翼「何人も、斬り殺されていたというのに?」
凖「じゃあもしかしたら、怒り以外の感情が抜き取られて…!?」
翼「そう。君の言う『人権侵害』な型のクローンなら、感情は多彩だ。
故にあれは、完全に体細胞クローン。それに感情を一種類ずつ、付け加えたんだ。」
凖「でもそれが何になるんだよ?奴は結局、クローン造りに関わっていたことになるぞ?」
翼「いや、体細胞は、髪の毛程度でも採取できる。彼に罪はないさ。」
凖「でも奴は、轟桜もこの件に関わってるって言ってたぞ?何でも『闇の底』にいるって。」
翼「『闇の底』─?
どうやら、まだ調べる余地はありそうだ。」
滝田「あと少し…あと少しで!!」
真木野「何が『あと少し』なんだ?」
滝田「…!!!」
真木野「見たぞ?なかなか面白い策を練ったな。だが気付かれては意味がない。君は最期まで、この私が利用し尽くすのだよ!!」」
滝田「そんなこと…!」
真木野「無駄だ。」
パァン!
電気が消え、辺りは暗くなる。
その暗闇の中に、青白い光が一閃。
パリッという音と共に、誰の声もしなくなった─
健達がセントラルへとひた走る、その途中。
空が血のように紅く染まり、次の瞬間─
九人の兵達が、健達の目の前へと、降り立った。




