拾七章─果てるデミリア─
流「津田…?」
健「『跳拳』ッ!!」
健の腕が地に着いたかと思えば、次の瞬間、流と共に、健は姿を消した。
デミリア「何ッ!?」
流「『薙刀落下』。」
次の瞬間、デミリアの足に、薙刀は突き刺さった。
上から流と健が、文字通りデミリアを見下している。
流「教えろ。お前達の基地は何処に─」
デミリア?「クカカカカカカカ…」
「!?」
デミリアはおかしな笑い声を出したかと思うと、次の瞬間には薙刀を力ずくで抜き取り、跳び上がって薙刀で流に切りかかる。
流「しまっ─」
聡「『具現化防壁』ッ!!」
間一髪、具現化防壁が間に合い、流は護られた。
デミリアは落ちていき、下では受け止めようと優が待ち構えている。
勝った、と思った、その時。
ぐさり。
健「しまった!!」
デミリアは反対側の刃で自らを刺し、告げた。
デミリア「お前等は…勝てん。我々の…孤高の闇の…崇高なる…目的にはな…」
デミリアは、果てた。
帰り道。
スマホの着信音が鳴り、電話に出る。
翼「やあ、今日これから、会えないかい?」
凖「?どうして急に?」
翼「やはり僕は、昨日の場所が、怪しいと思うんだ。」
凖「じゃあ何で、姿を見せなかったんだ?」
翼「速いからだ。」
凖「はぁ?」
翼「恐らく、敵の研究は完成していない。」
凖「当たり前だ。だから速さも─って、えぇ!?」
翼「そう。完成こそしないものの、敵の研究は、着々と完成に近付いている、ということだ。」
凖「でも、クローンがそんな─」
翼「もしかしたら、ただのクローンじゃないのかもしれない。よくよく考えてみると、感情は人生経験により得られるもので、つい最近造られた筈のクローンが、あそこまでヒトに近い感情を持ち合わせているわけがない。」
凖「ちょっと待てよ。もしかしたら大分前から作ってたってことも─」
翼「それはない。そんなに前から彼のクローンが存在したのなら、神襲の時も駆り出されていた筈。何しろ昨日は、チンピラ紛いの事までしていたんだ、それをやるくらいなら、人類の危機に対して何か手を打ってもおかしくはない。」
凖「じゃあ敵は、どうやってクローンに感情を…?」
翼「…もしかしたら、普通の手段ではないのかもしれない。」
凖「ああ、そうだな。もしかしたら…一瞬で感情を手に入れる、魔術的な手口かも、しれないな。」
デミリアの死体は、まるで一枚一枚が仮想現実のように消えていった。
そんな消え方だと、誰も何も、感じるものがないのかもしれない。
だが、初めて本物の人の『死』を目撃した健達にとっては、悲惨なものだった。
アレシアでさえ、驚愕している─
優「クソッ!!どうしてこうも、手掛かりが…」
調「自動入力…と言ったところですかね。」
流「襲うだけ襲って、失敗に気付くと自決…」
健「ま、くよくよしてる方が、よっぽどのタイムロスだとは思うけどな。」
宰「そうですね。元々、こんなところで手がかりを得る予定ではなかった。少々残念な気もしますが、致し方無い。先に進みましょう。」
アレシア「いや…それも無理だ。というより、それでは効率が悪い。」
明「は?」
アレシア「今、執事から連絡があった。
セントラルが…集中放火に逢っている。急いで行けば、敵の情報が掴めるやもしれん。急ぐぞ!!」
優「おし!そうと決まればダッシュだ!皆続けぇ!!」
全員、走り出す。
だが健だけ、何か腑に落ちないという顔をしていた─




