拾七章─不審な影と不穏な空気─
市長「おい白山。お前、『完了した』とか言ってなかったか?」
白山「はい。そうですが?」
市長「『そうですが?』じゃない!終わってないじゃないか!」
白山「え?そっそんな、そんなはずは…」
市長「いいか?我々をスポンサーとした以上は、それ相応の結果を見せてくれないと、困るんだよねぇ。」
白山「はっ、はいぃ!以後、気を付け─」
市長「『以後』じゃねぇ、今すぐにだ。今すぐに、回収を実行しろ!!!」
滝田「いいえ、駄目です、市長。」
市長「何だと?」
滝田「今はそのときではありません。それをやるのは、私の研究が終了してからです。」
市長「ほう、じゃあもうそろそろ終わるんだろうなぁ?」
滝田「そのはずです。指針を変更しましたので。」
市長「指針だぁ?それは、我々の計画に支障をきたすことは─」
滝田「ありません。そして終了後に回収を行えば、我々が滅びることはありません。」
市長「何故だ?」
滝田「津田 健が…
彼等の中で、限りなく黒に近いグレーだからです。」
優「お前、ホントにそんなんでよかったのか?」
健「ああ。軽くていいだろ?」
調「まぁ確かに、すばしっこくてパワーのある津田くんには、ナイフを除けば一番向いた武器かもしれませんね。」
アレシア「皆、武器は選び終わったか。」
健「おし!んじゃあ行くとしますか!」
健達は、王宮のある首都『セントラル』を出た。
準「しっかし、昨日は凄かったなー。」
純「…何が?」
準「元パワーウエポン科、行方不明とされていた内の4人が、いきなり俺達の前に現れたんだぜ?そりゃ驚きもするだろ。」
純「…そうだね。」
準「どうした?今日は元気ないな。」
純「…パパの会社がね、危ないの。」
準「えぇ!?あれほどの大会社がか?」
純「うん。何でも、新しい事業のスポンサーが、ちょっと厳しい人で、『今度失敗したら潰す』とか言われたらしくて。」
準「新しい事業って?」
純「さぁ…そこまでは聞いたことないんだけど…ほら、家ほどともなると、幾つもの種類の仕事を合わせて一つの事業としてやることがあるでしょ?今回もそうらしいし…私が聞いても、わかんないかなって。」
準「しっかし、そのスポンサーもすげーなー。白山財閥に対して、『ちゃんとやらなきゃ潰すぞ』なんて脅せる力を持ったやつなんか、そうそういないだろ。」
純「でも、案外身近な人らしいよ。私も知ってる人だって、お父さんも言ってたし。」
準「そんだけでかけりゃ、メディアに顔出しとかしてんだろ。」
学校で、靴を履き替えていると─
女生徒「きゃ~~~!健様よ~~~!」
準「へ?」
見ると、何やら思い詰めた表情の津田 健が、そこにいた。
アレシア「いやしかし、武器は持っていなかったものの、これだけポテンシャルが高いと尊敬してしまうな。」
健「そりゃあ皆、パワーウエポンと似た物を─」
もはやお決まりか、こいつの喋りすぎは。
聡「何やってるんだ!怪訝そうな顔してこっちを─」
アレシア「パ…パワーウエポン?」
流「あっいや、それはその…」
アレシア「あの、星魔器の事か?」
優「せ、星魔器?」
アレシア「ふん、そちらで言われても分からんか。まぁ、宛字しか知らない人間の方が多いというしな。星魔器とは、貴様等の言うパワーウエポンの事だ。」
健「あ、あるのか!?パワーウエポン!!!」
アレシア「あるわけがなかろう。貴様等も知っての通り、あれは私の持つ『聖武器』よりも更にランクの高い武器、言わば伝説の武器だ。それゆえ一般市民は勇者でもなければ『星魔器』の存在すら知らぬほどだぞ。」
聡「そ、そうでしたね。アハハ…」
健「その『星魔器』に関して、なんか情報とかは?」
アレシア「それを知ってどうするつもりだ?」
健「そりゃお前、それを使えば、本来の力が出るってもんだ!」
アレシア「当たり前だ、あれは人の潜在能力を高め、引き出す魔力を秘めた魔器。それ以外に魔力は持たんが、それを使う者と戦闘を行って、勝利した者はいないという噂だ。教えたところで、貴様等は『星魔器を賭けて勝負しよう』とでも言うつもりか?敗けは見えているのだぞ?」
健「え、持ってる奴、いるのか?」
アレシア「噂が本物なら、いるであろう。人の欲望は無限大。そんな噂の武器の存在を知っている者が、取りに行かないわけがない。そして一度人が手にしたが最後、その武器が人の元から離れることはない。何しろ『持っている限り最強』なのだからな。」
宰「持ち主が死んでもまた別の持ち主が現れ、また別の持ち主が現れ…というわけか。」
人間の果てしない欲望に、皆静まり返っていた。
明「あぁ、こんなとき、桜がいれば…」
優「わっ、馬鹿っ、よせ!!」
健「いいんだよ、優。」
優「健…」
健「今心配してたってしょうがないし、顔だけなら、似た奴がいるしな。」
聡「テメェ…」
聡が健の胸ぐらを掴む。
聡「『似ている』から何だ?お前にとって桜さんの存在は、それだけのものだったと─」
優「分かってねぇのはテメェの方だ!聡!!!」
優が叫んだ。
それが逆に、皆を凍り付かせる。
優「ちょっと面貸せや。」
聡と優は離れていった。




