拾六章─南東─
光「おい、何が分かったんだ?いい加減─」
準「しっ、静かに!」
翼「『行方不明』が好都合なんだ。あまり目立つな。」
皆適当に変装して、大急ぎで南東の海岸へと向かっていた。
迷「ですが情報は共有した方が─」
準「クローンは目立つ上に二人!」
翼「しかも我々ほど鍛えられていないため、そこまで早くはないはず!」
純「でもあの津田 健の対細胞クローンなんでしょ?それだったら─」
香「おそらくそこまで精巧ではないのでしょう。」
準「何でだよ?」
香「いくら人間の技術が高くても、彼の存在はそれを越えて難解であり、対細胞も通常の人間には見られない構成となっていると思われます。」
準「それだけ強いってことか?」
翼「どこまで強くても、人間という種の中で対細胞の構成が変わることはあり得ない。」
光「でも奴は…」
迷「元々、人間を超越した存在ですから。」
準「…は?」
香「オフレコですから、驚くのも無理ありません。」
翼「つまり彼は、人間の形をしていて、人間として生活できるが、元は神だ。」
迷「細かい説明はしませんが、そうとだけ言っておきましょう。」
─着いた。
準心の声『どこだ…どこにいる!?』
翼「焦るな。じきに来る筈。」
香「でもなんで、最初からあの連中のあとを尾けなかったんですか?そうしていれば─」
翼「馬鹿言え。彼らに撒かれない足や持久力を持つのは我々で、発見されてもたいして大事にならないのは黒瀬達だ。どちらも無理だったよ。」
準「奴等の基地が、この島の中じゃなきゃな!」
光「基地ぃ?」
迷「基地というと、軍の前線基地のような─」
準「ちがうちがう。それじゃ造った兵隊を駐在させておくだけになってしまうが、」
翼「工場も含め、一連のメンテナンス施設としてここに置いておけば、帰ってきた兵隊を随時チェック、メンテナンスできる。だろ?」
準「あぁ。そうでもなきゃ、わざわざ海をわたってこんなところでテストをする意味はないし、あの凄まじい光の理由も、そこにあるんだろうからな。」
光「はぁ?それって受講資格試験のときのでしょう?それがどう関係してんのよ?」
翼「多分そのとき、大きな取引か搬入か、とにかく口外できないようなことをしていたんだろう。」
迷「ですが、それではわざわざ南東にした理由がありません。そんな面倒な手を使わずとも、戦島の方角を偽れば、簡単に遠ざけることができます。」
準「それでも、ただの通行人はいるかもしれない。」
翼「立入禁止なんかにすると怪しまれるから、閃光を使ってただの通行人の目も眩まそうと考えた、というわけさ。」
準「しっかし来ないなー。」
純「途中でどこかでご飯でも食べてんじゃなぁい?」
準「見つかるリスクが増えるだろ。」
翼「同じ顔、さらに有名人の顔が二つも並んでたら目立ってしょうがないしね。」
準「どうする?張り込みでもするか?」
翼「そうだな。ちょうど人数もいるし、当番制でいいんじゃないかな。」
スピーカー『ソノヒツヨウハアリマセン。』
皆「!?」
スピーカー『もうクローンは到着していますから。』
翼「誰だ!」
準心の声『機械で声を変えてやがる…』
スピーカー『ソコカラテッタイセネバ、ワレワレノセイエイガヨウシャナクアナタガタヲコロスデショウ。タトエバ─
シロヤマザイバツノ、ゴレイジョウトカ?』
光「くっ、聞き取りにくい…」
そのとき、翼は理解した。
翼「…逃げるぞ。」
準「何言ってんだ。ここまで来て─」
翼「いいから逃げるぞ!でないと危険だ!」
皆、翼に気圧されてしまった。




