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「シンファに呼び出されたのってなに?ワタシなんかした?」
山道を二輪機に乗りながら、管理官である友人のアメレットとともに官邸に向かっていた。
要件も聞かされずメールが1通、届いただけ。
「心当たりがあるなら直接、シンファさん本人に言ったほうがいい」
「ありすぎて困ってるんだよ」
ワタシがからかうようにそう言うと、アメレットはギロリと睨んでくる。
おー怖い、とおどけると、アメレットはこっちに幅寄せしてくる。
「全部言え」
「いやだよ。ワタシまだバレてないことも自白しちゃうかもなのに。…まじどれだってよ」
「お前ほんとに何したんだよ」
アメレットがチクチクと言葉を刺しながら、二輪機を加速させる。
追いかけるため、慌ててアタシも加速して役所に駆けた。
門構えは相変わらず荘厳だった。
来たのは40年ほど前だというのに、未だ綺麗なままだ。
書類を抱えた事務員に、建物の守衛など、やけに人口密度が高いのが嫌だ。
落ち着かないな、とか考えながらアメレットの後ろをついていく。
謎の商品販売コーナーを通り過ぎると、一気に公務員だけの空間になる。
背筋がピンと無意識に伸びる。
「過去に何回もきたことあるんだし、そんな緊張する必要ないだろ」
「そんなこと!いうて4回くらいだし、それに何度だって緊張するっつーの。喉渇いてきたわ」
「自販機寄る?」
お言葉に甘えて、自販機の元まで向かった。
適当にマンゴーサイダーを選んで、落ちてきたペットボトルを開栓する。
炭酸の苦みが少し緊張を和らげてくれたので、再び足を進める。
シンファの応接室行きのエレベーターの前まで来て、立ち止まる。
エレベーターは今11階にあるらしいので、待たなければ。
マンゴーサイダーを煽りながらエレベーターを待っていると、アメレットがこちらを凝視している。
「何か?」
「いや、言うか迷ったけど、喉乾いてるなら炭酸じゃなく水だよな??」
「なんだそんなことか。炭酸だって水だよ」
「そんなことかじゃねぇよ。というか、自販機に水ちゃんとあったろ」
キレキレのツッコミを飛ばすアメレットに、要る?と押し付けると顔を歪められた。
そういえば、炭酸は飲まないとか言っていた気がする。
「おい、お前…今思い出したろうがっ。手を引っ込めろ」
「いや、おいしいよ。あげるあげるって」
「炭酸飲めないんだよこっちは。…その顔やめろ」
わちゃわちゃしていると、エレベーターの着いた音がする。
二人して静かに乗り込み、15階、最上階のボタンを押して到着を待つ。
マンゴーサイダーを片手に、時々飲んだりしていると5分も経たずエレベーターが開いた。
バッグになおしてもいいが、それは何故か癪だったので、片手に持って、広い開けた空間を進んでいく。
デスクを慌てて片付けているシンファが目に入った。
ガシャン、という大きな音ともに、シンファがこちらに汗一つを垂らしながらお辞儀した。
「お久しぶりですね。ドロメル様。」
ワタシとアメレットも慌ててお辞儀した。
まったく、この人は相変わらず変わっていない。
と少し、ようやく息をついた。
「お座りください。ちょうど100年ぶりですね。」
シンファは、ニコリと綺麗な均一な笑みを浮かべながら席を指した。
椅子を引いて座ると、アメレットは横でワタワタとしていた。
疑問に思って少し固まった後、気づいた。
アメレットの椅子がない。
「シンファ様!?私の椅子は??」
「すみませんっ。忘れていました。どうぞ」
シンファがあまりにもスムーズに神術で椅子を用意した。
間に合わせで用意したせいか、背のない椅子で、ワタシは笑いを堪える。
「日頃の行いかな…?」
「いえ、わたくしのミスです。申し訳ない。しかし、日頃の行いに自覚があるなら直していただかないと…」
「うそうそ!!シンファ様嘘ですってぇ!早く本題に入ってくれ!」
承知しました、とシンファが頷くと、壁に映像が投影された。
近くにおいてある、コンピューターのモニターの映像だろう。
シンファが小さくほんのりと橙に薄づいた口を開く。
「同じ星系にある星、メヴァースで不穏な動きがあります。ドロメル様とアメレットには調査に行っていただきたい。」
簡潔にまず、そう告げられた。
メヴァースといえば、つい先日まで伝統の祭りがあっていた。
珍しく神でない者が表のトップを務めているという、例外的な星だ。
最近ずっと、反政府組織や民間の保護団体など過激派の動きが活発になりつつあり、背後の人物を探すために動いていたそうだ。
しかし見つからなかったため、そこでワタシたちに白羽の矢が立ったと。
「すみません、ワタシである必要は?」
「ドロメル様は、今は無き星であるディヴァースが故郷でしょう?どうやら今回の件には、ディヴァースに関係がありそうなので、今もやりとりの取れるディヴァース出身者を探していたんです。そこで、ドロメル様にお願いするに至りました。」
「それに、ドロメル様は研究者で元教師でしょう?人や真実を見抜く目を信頼しているのですよ。」
ニコリと、相変わらず何を考えているのかも分からない笑顔を向けてくる。
その二段構えの理由からは2度も言わせるな、という圧を感じてため息をついてしまう。
「そして、マンゴーサイダーを持って入ってきたり、思い切りため息を吐いたりする、その胆力もわたくしはとても信用しているのです。」
「あっ、はい。」
柔らかい声で毒を吐かれて背筋がピンと伸びる。
お願いしてもいいですか?という、その得も言われぬ”お願い”に渋々と頷いた。
そして、アメレットとシンファが何かを黙々と話し合ったあと、アメレットは資料を渡されていた。
入って30分経ったくらい。
それくらいで、呆気なく解放された。
来週からのメヴァース渡航に向けて、準備をしておくように、という課題を出されて。




