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「あれ……ここ……どこだ?」



辺りを見渡しても景色は真っ暗。なのになぜか少し明るい。どういう原理だろうか?



そんな場所に1人ぽつんと1人の人間が迷い込んできた。というより迷い込むようにしてもらった



「どもどもー」

「あ、どうもこんにちはーー」



さすがに一瞬で初芽ではなく、私だと分かったみたいだ



「り、李華?」

「そだよー。久しぶりだね。湊」



ナトちゃんに私と湊の対面を許してもらえた



といってもこれは湊の夢の中であり、湊にちゃんと夢であることを伝えないといけない。万が一にも生きていると勘違いされては困るからだ

そして話せる時間も10分程度だけ。それでも嬉しいけど



「……これ夢だな」

「そうそう夢だよ。現実なわけないんだから」

「そうだよな……うん」



湊は自分の顔をペシペシと叩き始めた



「な、何してるの?」

「目を覚まそうと思って」

「なんで⁉︎」

「なんでって……今日朝早いし」

「アラーム鳴ってないってことはまだその時間じゃないってことだから‼︎とりあえずわざわざ起きようとするなー‼︎」



湊は顔を叩くのをやめた



「ったく……夢とはいえ、私との久々の再会だよ?冷たくない?」

「……別に久しぶりじゃない」

「えっ?」

「李華は何回も俺の夢に出るよ。で、その度にこうやって夢の中で現実の自分を起こしてる」

「……なんで?私と話したくない?」

「そうだな……出来れば話したくないな」



あ、あれ?私のこと嫌い?え?うそ?そんなことある?

なんか望ましいような……悲しいような……



「話したらまた李華のことが忘れられなくなるから」



よ、良かったぁ〜!嫌われてたわけじゃなくて良かったぁ〜。でも夢に登場したせいでマイナス方面に動きそうなことだけは全然良くねぇ〜



正直言ってナトちゃんからこの提案をされた時にこの可能性が頭をよぎっていた。でもそれでも……伝えないといけない。夢であっても私の口から言い出して、尚且つ湊の考えも聞きたい



「……またそんなこと言って〜。私との約束を忘れてる?」

「……覚えてる」

「その内容は?」

「私が死んだら……ちゃんと次の可愛いお嫁さんを貰うこと」



一字一句間違いなく正解だ



「だよね?でも今の湊は?」

「……独身です」

「そうだよね?おかしな話だよね?」

「あ、相手がいなくて」

「……それ、3人の前で言える?」



私が3人の存在を知らないと思っての発言。さすがにこれは咎めないといけない



「い、言えません……」

「そうだよね?そりゃそうだ。あんなに湊のことを想ってくれてるんだから」

「というかやたら詳しくないか?」

「そ、そりゃあ湊の夢の中のわ、私だもん‼︎詳しいに決まってるじゃん‼︎」

「そっか。それもそうだな」



あぶなぁ……咄嗟の言い訳にしては上手くいった方だと思う



「相変わらず変に勘がいいんだから……」

「なんか言ったか?」

「なんでもない‼︎……とりあえず色々話聞かせてよ。ただし彼女候補の3人の話だけね‼︎」

「彼女候補って……」

「実際そうじゃん。あ、あとこれ絶対に言いたかったんだけど‼︎湊が早く誰かに決めないから、選ばれなかった人達は時間を無駄にするんだよ?」



私は常々思っていたことを口に出した



「……確かにな」

「でしょ?女性の20代って大事な時間だし、湊が変に可能性残してるせいで、誰も新しい恋を始められない。探し始められないの。時間は有限!湊がその時間を返してくれるってなら別だけどね」



蘭さんは数ヶ月。由布子さんは出会って5.6年だけど、ちゃんと接点を持ち始めたのは1年程前から。比較的被害の少ない2人(被害って言い方はアレだけど)に対して初芽はもう7年も湊に時間を費やしてる



湊が初芽のことを選ばなくたって文句はないけど、せめてそれだけの時間を一筋に使ってくれたことだけは覚えていて欲しかったのだ



「今日すごい説教モードじゃん」

「ちんたらしてる元旦那に喝を入れるためだよ!何がなんでも私の約束は守ってもらわないと困るからね‼︎」



そのために私は幽霊やってるんだから



「……なんか懐かしいな。この感じ」

「この感じってどの感じよ?」

「ガミガミ怒る所」

「そんなキレ症みたいに言うな‼︎」

「違うのか?」

「違います〜!私ほど優しい人間そうそういません〜」

「……まあそういうことにしとくか」

「それ同意してない時の反応だよね⁉︎ねぇ⁉︎」

「ははっ。相変わらずうるせ〜。夢の中の李華がうるさすぎて目覚ましそうだわ」



あ……やばい。時間も限られてるからこんな話をしてる場合なんてないのに……

湊と久しぶりに会話出来たことが嬉しい。楽しい



こんななんの情報も集められないようなこと話してても仕方ないのに……それに



なんで私は隣に居れないんだろうってバカなことを考えてしまう



「……とにかく‼︎湊はちゃんと3人に向き合うこと!分かった⁉︎」

「……ああ。分かってる。というか最近は結構向き合ってるつもりだよ」



……確かにそうだけどもうちょっと急いで欲しいんだよなぁ



「今年中に彼女を作りなさい‼︎」

「こ、今年中⁉︎」

「ええそうよ‼︎」



いずれではダメ。今年中じゃないと、誰が湊と結ばれたか分からないから



「が、頑張るわ」

「是非頑張って‼︎応援してるから‼︎」



……さて、もう時間は残されてないみたいだ



「……湊」

「なんだよ?」

「彼女出来たら、お墓の方に彼女連れて挨拶しに来てね」

「……おう」



♢ ♢ ♢



「……眩しっ」



アラームの鳴る前に目が覚めた湊。湊が寝ていた時間は大体6時間だけど、私と夢で話した時間は10分もないぐらいだ



「……なんか妙にリアルな夢だったな」



夢の内容は忘れやすいと言われるが、今回私と話したことはしっかりと覚えてられるようにしてあるとナトちゃんから聞いている。明晰夢と呼ばれるものよりもはっきりと記憶に残っているらしい



「どうでした?」

「あ、おはよー樹里。まあ色々聞けたよ。10分程度にしては」



もっと話したかった反面、このぐらいの時間で済ませて良かったかもしれない

じゃないと私が止まらなくなるところだったから



それをも見越して、ナトちゃんは10分という時間制限を付けたのかもしれない



「いい方向に進むといいですね」

「そだねー」



今回のことはもちろんタダでしてもらえたわけじゃない。樹里と同様に条件を付けることで出来たものだ



条件の内容は聞かされていない。本来なら断った方が良かったかもしれない



でも私からの言葉が湊に必要だと感じたから受けた。後悔なんてない

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