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代役



蘭さんと立原の熱愛報道。あれからさらに4日経った今でも報道がなされていた



ただ報道される番組も減ってきたし、なにより蘭さんが頑なに交際を否定しているので、世間の風向きも少し追い風気味になってきていた



「このまま放置してたら、噂も収まるんじゃないですか?」

「うーん……」



収束傾向にはあるけど、私が身体を乗っ取って発言したことは、事務所側がもみ消して一切世間の耳に届くことはなかった



それぐらいしてくるってことはこのまま事態を収束させずに、また新たな火種を撒いても全然おかしくない



「今は蘭さんの仕事に影響はほとんどないみたいだし、もう少し様子見かな」



蘭さんのメンタルに影響が出そうなら放置したりはしないけど、そうじゃないから様子見放置することにした



ただ、この悠長さが裏目に出てしまった



2日後、立原と蘭さんが手を繋いで街中を歩いている写真が週刊誌によって出された



「事実無根なんだって」

「……分かってる」



初芽から蘭さんに直接聞いてもらったけど、やっぱりこんな事実はないらしい



ということは合成写真を週刊誌に流したということ……立原は本気で蘭さんを手に入れたいらしい



「蘭さんの様子は?」

「まあ……少しだけ憔悴してるかな。毎回同じ質問受けては否定しての繰り返しだからって」

「ネットの声とかは?」

「それは全然気にしてないっぽい。そもそもSNS系やってないらしいし」

「そ、そうなんだ」



芸能人は全員SNSやってるものだと思ってた……



「だからメンタル面での心配はないんだけど……」

「……?逆に他に何かあるの?」

「1人しつこい奴がいるらしいの」

「しつこい奴?それは週刊誌の人間でってこと?」

「そうそう。ほぼストーカー紛いなんだって」



今この話題が世間を騒がせているのは間違いない。数字が取れるからと執着しているのだろう



「で、家バレしそうで困ってるって話」

「家バレかぁ……確かに困るかも」

「私達も困るけどそれ以上に困ることがあるでしょうが」

「蘭さん見たさに家にファンとかアンチが押しかけてくること?」

「バカ‼︎そんなの全員ビンタして追い返せば済む話でしょ⁉︎」



そんな簡単にいくわけないが、私の妹は逞しい



「蘭の家族に蘭の居場所がバレちゃうでしょうが‼︎」



私の頭上に雷が落ちた。そうだ完全に忘れてた。もし見つかればそのまま連れ戻されて、望まないお見合い をさせられることになるはずだ



「ど、どどどどうしよう‼︎」

「それこそバカ姉の出番じゃん」

「え?」

「そのしつこい週刊誌の人間に、バカ姉が策を講じればいいって話よ」

「な、なるほど‼︎」



私が立原にしたようなことをその人にすればいい。立原と違って圧とかなんて考えなくていいし



「さすが初芽!賢い!」

「バカ姉は高校までは賢かったはずなのになぁ……年で脳みそ溶けた?」

「生きてても29だからまだ余裕だわ‼︎」

「……まあなんにせよ、頼んだよバカ姉」



♢ ♢ ♢



憎いけど可愛い妹からの頼み事は、姉としてしっかりと遂行しないとね。というわけで私は朝から蘭さんについて行くことになった



今日は樹里はいないから会話相手はなし……まあ前の苦行に比べて蘭さんの仕事っぷりとか、色々見れるから退屈はしなさそうだ



と、現場に向かって歩く蘭さんに対向からニヤニヤしながらチャラそうな男が歩いてきた



……アレ絶対ナンパだな



「そこのおねえはぐっ⁉︎……さん?向かいの信号に気をつけてね」

「……?は、はぁ……」



すれ違ったあと、私はこの男がまた絡みにこれないようにダッシュで蘭さんから距離を取った



「はぁ……はぁ……あの男筋肉硬すぎて走りづらかったぁ……」



急いで蘭さんの方に戻ると、2人のイケメンに絡まれていた



「ねえ君、環凪蘭ちゃんだよね?今話題の」

「……さあ」

「誤魔化さなくていいって!それより俺達2人とーー」

「……あの」

「「ん?」」

「財布……落ちてます」



2人の足元には財布が落ちていた



「ああ……俺のだわ。わざわざありがとーー」



ひょい



「……ん?え?」

「何してんだよ」

「いや今……財布が勝手に……」

「縦に落ちてるから傾いたんだろ」

「そんなことあるか?しかもこんなに綺麗に縦で……」



落ちていた財布は蘭さんのいる方とは逆側に転がっていった



「はぁ⁉︎な、なんで財布が坂でもないのに転がってんだ⁉︎」

「お、おい!どんどん離れてくぞ‼︎」

「ってあれ⁉︎あの女居なくなってるぞ⁉︎」



私が財布を触る能力で転ばしている間に、蘭さんは上手く姿を消したようだ



「……美人って大変だわ」



ボディーガードが必要なぐらいナンパされる蘭さん。私や初芽もそれなりにされてきた方だけど、目に見えて数が多い



「……あ、というか私まで見失ってね?」



私は空中を飛び回り、蘭さんの行方を探した



♢ ♢ ♢



危うく危なかった。無事に蘭さんを見つけることができ、今日の撮影場所に到着した



「おはようございます。今日はよろしくお願いします」

「はいよろしくー。着替えとかはあちらでお願いします。髪は……今日も必要ありませんね」



朝イチから湊にセットしてもらったのだから、必要あるわけがない。ちゃんと見る目のあるカメラマンで良かった



「撮影は30分後で。その間はあちらの控室でゆっくりしててください」

「30分後……ですか?」

「お相手の男性モデルが体調を崩したらしくてですね。代わりのモデルを事務所側で手配するから少し待ってほしいと頼まれまして」

「そうですか……わかりました」



なんか……嫌な予感がする



♢ ♢ ♢



「おはようございます。今回代役で来ました 立原 菜鳩です。よろしくお願いします」



パチパチパチと拍手が鳴るが、私と蘭さんはブーイングを鳴らしたい



「菜鳩さんと環凪さんのツーショットだって!」

「これ今回の雑誌売れそー!というか並ぶとお似合いよね!」

「ねー!私達一般人とは違う風格っていうかさ……」



小声で2人のカップリングにはしゃぐスタッフ達。まあ世間を賑わせてる2人が揃っているのだから、その気持ちが分からないでもない



ただ……これは好都合かもしれない。IQの高い私は即座にある作戦を思いついた



ちょっと負担かけることになるだろうけど……上手くやってくれると私は信じている



私はその作戦を実行するために、一度この場から離れることにした



♢ ♢ ♢



「……あー疲れた」



今日は移動が多くて疲れる……浮遊して移動するにも体力を使う。……まあ体力の概念がこの幽体にあるかは分からないけど、人間の体が走って疲れるようにこの身体も同じように疲れる



この世界の景色を見る視覚

湊達の会話を聞き取る聴覚

物を触れた時に触れた物の感触を感じる触覚

お供え物を食べる時に感じる味覚

リーナの作る劇物を鼻で感じとる嗅覚



と、意外と人間の身体の頃に近い物を大量に持ち合わせている。相手から視認出来ない。透けたり浮いたり出来ることを除けば人間といっても差し支え……ないことはないか。さすがに



「にしても……さすがだなぁ蘭さんは」



楽屋ではすごいストレスを抱えた様子で、表情もこれから写真を撮られていいようなものではなかった



でも撮影中の今はそんな顔はなく、ただ凛々しくカメラの前でポーズを取ってみせた



「……っと見惚れてる場合じゃなかった。私は私のすべきことをしますかねぇ」



もう既に十分すぎるぐらい立ち回ってはいるが、私の今日の本来の目的を果たさないといけない



「こいつだな。例の記者は」



閉じ切ったスタジオをこっそりと覗く女。カメラも持っているし、蘭さんを介して初芽から聞いた特徴とも一致する

間違いなくコイツが蘭さんを苦しめている人間だ



悪さをする人を懲らしめる時間だ。まずは手始めに……



「あぅ⁉︎」

「……さーてこのカメラを壊……すのはやめとこ」



破損系は後々ナトちゃんから小言が飛びそうだから、バッテリーを外して近くのゴミ箱に投げ捨てた



「はっ‼︎へっ?はっ?わ、私何してた?」

「混乱してる混乱してる」



戸惑いを見せたあと、カメラの違和感に気がついた



「あ、あれ?なんか軽くなった?」



一瞬で気がつくあたり、さすがといったところか



「バッテリーがない⁉︎ウソ⁉︎どこかで落とした……?」



覗くのをやめて女は下を見ながらバッテリーを探し始めた



「そこにはないんだよなぁー。残念ながら」



トイレや別の部屋などをくまなく探すが見つかるはずもなく、女は頭を抱えていた



「本当に……どこいったんだろ……」

「どこいったんでしょうねぇ?」

「ひぃひゃぁあぁああ⁈」



情けない雄叫びをあげる女。まあこれもみんな大体同じような反応だ



「あ、あれ?へっ?えっ?」



周りをキョロキョロと見渡すが誰も見当たらない



「……気のせい?」

「ストーカーは良くないなぁ?」

「はへっ⁈はっ?へっ?」



……面白い反応を見せてくれる。いいね。顔はいいしもう少しだけからかってあげよう



私は触る能力でうなじ辺りをサッと撫でた



「ひっ⁈な、何何何何⁉︎な、なんなの⁉︎」

「蘭に迷惑かけるってなら……もっと怖いことするよ?」

「ひぃっ‼︎」



怯えてる怯えてる!可愛い女の子の怖がる姿が1番そそられる!



私の歪んだ欲求が満たされて心底満足した



と、ここで能力の有効時間が過ぎた



「や、やんだ?な、なんだったの今の……」



ふぅ……と一息吐く女。ここで追い討ちをかけられたらいいんだけど、酔わせる能力は意味ないし……ここは動向を見守るしかない

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