大金を置いていくレベル
「死相って……湊から?なんで⁉︎」
「原因までは分からん。あと明確な死期も分からん。でもそうじゃな……来年中じゃな」
あと一月足らずで来年を迎えてしまう。いきなり新年ぽっくり逝ってしまうかもしれない
「……その観測に正確性はあるの?」
「にわかに信じがたい話だと思うが、実はな。この世で洋菓子店を経営する神様がいての」
「リビティーナのこと?」
「コラ!様を付けんさい!……というか知っておるのじゃな」
「なんなら最近はリーナって呼んでますけど」
夜の暇な時間をリーナの店で過ごすことが増えてきた。話が合うし、何より危険物のある部屋から助け出すという仕事もある
「神様をあだ名で呼ぶとは……罰当たりな女よのぉ。まあええ。その神様からお墨付きをもらえるぐらいには信憑性があると思ってええ」
前任の死を司る神からのお墨付き……ないと決めつける方が難しい
「はぁ。また悩みの種が……」
有益も有益。ここに訪れるキッカケを作ってくれた蘭さんには感謝しかない
「でも……教えてもらったところでそもそも防げるの?」
「防げるぞ。死期ってのは確定してるわけじゃない。死の危険が迫るものに見えるもの。例えばじゃが、病死を映す死期なら病院に行かせて早期発見させれば助かるかもしれんし、事故ならばそもそも起こらないように立ち回らせればいい。じゃが原因がわからぬから、それも難しい話じゃがな」
死ぬことが確定したわけじゃないならなんとかなりそうだ。病気の心配は初芽に事情を説明して湊に病院に行かせればいい。事故なら私が全力で阻止するしかない
あと候補があるとすれば、あの男が湊を……全然あり得る話だ
「教えん方が良かったか?」
「まさか。ありがたすぎて私が生きてたら大金置いていくレベルよ」
間違いなくいの1番に解決しなければいけない問題が出来た
「役に立って良かったわい」
「……本当にありがとう」
私はお坊さんに一礼し、湊達の元へと向かった……
♢ ♢ ♢
「……ふぅ。これでよしかの」
「お疲れー」
「うむ。人間の身体に憑くと疲労感が溜まって嫌になるわ」
「でもそうする理由がタナトスにはあったんでしょう?」
「……まぁの。李華にはちゃんとした形で成仏してもらわんと困るでな。それよりリビティーナ。デザートは用意してくれているか?」
「水ようかん作ってあるわよー?」
「水ようか……?水で出来た洋館なんぞ食べたくないが?」
「私だってそんなの食べたくないわ。そういうお菓子があるの」
「ほうほう……甘いのか?」
「あんこだからね」
「あんこで出来ておるのか!そりゃ楽しみじゃ!」
「それより早く身体から出てあげなよ」
「おお。そうじゃったそうじゃった。ありがとの老人よ。謝礼としてお主が長年悩み続けておる膝の痛みを取っ払っておいてやるからの」
スポッ
「……よし。早く案内せい!」
「はいはい。分かった分かった」
♢ ♢ ♢
私が戻った頃には全員合流していた。蘭さんも心なしか先程よりも顔色が良くなった気がする
「次の場所どこにあるの?」
「歩いて20分ぐらいって書いてるぞ」
「え゛っ⁉︎20分も歩ぐの⁉︎……初芽。おんぶ」
「仕方ないなぁ」
初芽は蘭さんの背中に飛び乗った
「どわっ⁉︎逆ですわ‼︎私が上‼︎」
「あーそうだったの?てっきり湊さんに良いところを見せるために上に乗れって命令されたのかと思った」
「とにかく降りて!二日酔いの人間におんぶさせるなんて人間じゃないよ!」
「人間じゃなくていいからこのまま運んで」
「由布子さん‼︎この女のお尻叩いてください‼︎」
「た、叩くのはちょっと……」
「じゃあ湊さん‼︎」
「無茶言うなよ……」
「あー‼︎もう誰でもいいからこの女引っ剥がしてくださいー‼︎」
……楽しそう
みんなライバル同士なはずなのに、仲良く騒いで……そのおかげで湊にも笑顔が増えて……
嬉しい反面。その湊の隣に私の姿がないことに……寂しさを感じた
まっ。そんな想いを抱いたところでどうすることも出来ないのだから、こんな必要のない気持ちはさっさと無くすに限る
見守ることが出来るだけ、私は恵まれているのだから




